機材レポート

解像度重視? バランス重視? シグマ大口径標準ズームレンズの画質を比較チェック!

伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年7月号 Other Shots

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art、28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary

伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年7月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、シグマから発売される2本の大口径標準ズーム、解像度を重視した「24-70mm F2.8 DG DN | Art」とワイド端を28mmとし全体的なバランスの良さを図った「28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」の違いを「ソニー FE 24-70mm F2.8 GM」も加え検証した。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art
スペック
[大きさ] Lマウント 最大径87.8×全長122.9mm、Eマウント 最大径87.8×全長124.9mm [重さ] Lマウント 835g、Eマウント 830g [レンズ構成] 15群19枚 [最短撮影距離] 18cm [最大撮影倍率] 0.34倍 [絞り羽根枚数] 11枚 [フィルター径] 82mm
参考価格 約132,000円 (税込)

周辺部まで崩れのないシャープな描写

ワイド端24mmでF8まで絞って撮影。ピント位置は建物で、後方の樹木はしっかりピントは来ていてシャープな描写。空との境界部分に色収差に起因するフリンジも生じていない。手前の幹や石灯篭はわずかに被写界深度外。パンフォーカスで撮影するなら、もう少しだけピント位置は手前がベストだ。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
ソニー α7R IV シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 絞り優先オート F8 1/30秒 -1補正 ISO320 WB : 太陽光 (24mm域)
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
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中途半端なボケにしないことが撮影のコツ

府中市の交通遊園に展示されている都電。このレンズは、微ボケにクセがあるので、中途半端なボケを出さないよう、絞りを開けるときは開ける、絞るときはしっかり絞るのが鉄則。このカットは背景の樹木がぼけすぎないよう、F7.1まで絞って撮影しているが、背景の微ボケもそれほどうるさくならずに済んだ。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
ソニー α7R IV シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 絞り優先オート F7.1 1/200秒 +0.3補正 ISO100 WB : 太陽光 (24mm域)
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
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絞り開放から眉毛までクッキリ解像する

開放F2.8の明るさは、光量が少ない室内撮影で威力を発揮する。補助光としてスティックタイプのLED照明を弱めに当てているが、ISO800でF2.8 1/20秒がやっと。ベストなピント位置よりもわずかに後方にズレてはいるが、それでも被写界深度内ではあり、睫毛までクッキリと解像している。窓の開閉金具に反射した光が、少し二線ボケ傾向だ。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
ソニー α7R IV シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 絞り優先オート F2.8 1/20秒 +0.3補正 ISO800 WB : オート (24mm域)

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
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コントラストの高い後方微ボケは二線ボケになりやすい

ズームテレ側で切り取ったように見えるが、実はこれもワイド端。幹にピントを合わせ、木漏れ日がどうぼけるかをチェックするために撮影したカットだ。ピントが合っている葉は非常にシャープだが、後方の幹の白っぽい点や木漏れ日など、微ボケが二線ボケになりやすい。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
ソニー α7R IV シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 絞り優先オート F2.8 1/20秒 +0.3補正 ISO400 WB : オート (24mm域)
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
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離れすぎない程度で大きくぼかすとスッキリしたボケに

これは発売前にシグマ本社まで行って、2時間くらい周辺で試写させてもらったカットだ。この描写を見る限りはキレイな後ボケで、個体によってボケの傾向は多少異なる可能性はある。ただ、もう少し被写体との距離が離れ、枯れ枝などコントラストが高い背景を微ボケにしてしまうと、結構うるさいボケになる。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
パナソニック LUMIX S1R シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 絞り優先オート F2.8 1/160秒 +0.7補正 ISO100 WB : 晴天 (53mm域)
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
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近接撮影時はにじみを伴う優しいボケに

ズームテレ端開放で近所のアジサイを撮影。近接撮影では、エッジのコントラストが下がり軟らかな描写になるが、軸上色収差によるボケの色づきはほとんどなく、背景や前景のコントラストが低めなこともあり、非常にきれいなボケになっている。特に近接撮影時の後ボケはにじみを伴う優しいボケ味だ。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
ソニー α7R IV シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 絞り優先オート F2.8 1/320秒 +0.3補正 ISO320 WB : 太陽光 (70mm域)
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
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動体撮影においてもきちんと解像

これも発売前にシグマ本社周辺で試写したカット。動体撮影に強いとはいえない「LUMIX S1R」のテレ端開放カットだが、ちゃんと電車の手前にビシッとピントが決まっている。ただ、解像性能が高い分、ボケはやや硬めで、背景の樹木や架線に反射した光のボケに縁取り感が強い。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
パナソニック LUMIX S1R シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 絞り優先オート F2.8 1/2000秒 +0.3補正 ISO160 WB : 晴天 (70mm域)
シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art 作例
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シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
スペック
[大きさ] Lマウント 最大径72.2×全長101.5mm、Eマウント 最大径72.2×全長103.5mm [重さ] Lマウント 470g、Eマウント 470g [レンズ構成] 12群16枚 [最短撮影距離] 19cm [最大撮影倍率] 0.30倍 [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] 67mm
参考価格 約99,000円 (税込)

絞りF8で後方の都電もクッキリ写った

府中市の交通遊園に展示されているバスと都電。手前から奥までパンフォーカスで撮影しようと、最初はF14~16まで絞って撮影していたが、ピント位置をバスの正面よりもわずかに後方に合わせれば、F8~10で奥の都電までクッキリと写ることがわかった。Artよりも微ボケのクセが少なく、扱いやすいレンズだ。

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
ソニー α7R IV シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary  絞り優先オート F8 1/800秒 -0.7補正 ISO200 WB : オート (31mm域)
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
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周辺部まで安定した解像が得られる

ボディ内の歪曲収差補正を [オート] にすれば、ライブビュー表示も含め、ワイド端からテレ端まで歪曲収差による歪みはほぼ気にならない。木の枝と空の境目など、輝度差の大きな境界部分にパープルフリンジが浮くこともあるが、解像自体は周辺部まで安定している。

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
ソニー α7R IV シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 絞り優先オート F5.6 1/320秒 +0.3補正 ISO200 WB : 太陽光 (28mm域)
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
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1/8秒での撮影でもまつ毛までシャープに描写

縦位置構図で撮影すると、目の位置はかなり画面周辺になるが、絞り開放の周辺部としては解像の乱れは少なめ。ISO1250まで感度アップして、絞り開放で1/8秒という暗さで、手ブレ、被写体ブレ覚悟で撮影しているが、まつ毛までクッキリと写っている。

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
ソニー α7R IV シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 絞り優先オート F2.8 1/8秒 +1補正 ISO1250 WB : オート (28mm域)
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
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緑の縁取り感はあるがズームとして平均的なボケ味

後方の微ボケチェック。ピント位置は画面上部から垂れ下がってきている銀杏の葉っぱ。これくらいの撮影距離になると、ピント面は絞り開放からにじみもなくシャープだが、ボケは少し硬めで、木漏れ日がぼけた輪郭に縁取り感がある。ただ、ズームとしては平均的なボケ味だ。

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
ソニー α7R IV シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 絞り優先オート F2.8 1/100秒 +0.3補正 ISO200 WB : オート (49mm域)
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
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大きくぼかせば縁取りのない美しいボケを堪能できる

これも後ボケのチェックだが、被写体まで近づき背景を大きくぼかすと、ボケの縁取り感はほぼ解消。大口径レンズならではの被写界深度の浅さとボケの美しさを堪能できる。ピントが合った箇所も切れ味抜群の開放描写だ。

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
ソニー α7R IV シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 絞り優先オート F2.8 1/400秒 +0.7補正 ISO200 WB : オート (66mm域)
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
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ワイド時に近づけるのでボケを生かした表現が可能

虫が苦手な方、ゴメンなさい。ArtもContemporaryもワイド端で20cm以上寄れるので、一般的な標準ズームよりも広い画角を生かして近接撮影できるのが特徴だ。近接撮影時、解像とコントラストは多少低下するが、十分な解像が得られる。被写界深度も浅くなるので、フワッと大きなボケ表現が楽しめる。

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
ソニー α7R IV シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 絞り優先オート F5.6 1/320秒 +0.3補正 ISO400 WB : 太陽光 (28mm域)
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
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軽量なのでモニター撮影も苦にならない

お散歩コースの団地の花壇に咲いていたユリ。少し奥に咲いていたので、ファインダーを使わず、両手をグッと伸ばしてモニター撮影。レンズが軽いので、両手を伸ばした状態でも楽に撮影できる。小雨混じりの天気で柔らかい光線状況ということもあり、背景の草木も柔らかくぼけている。

シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
ソニー α7R IV シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 絞り優先オート F2.8 1/640秒 ISO200 WB : 太陽光 (70mm域)
シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary 作例
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大口径標準ズーム3本比較チェック

35mm遠景解像

『CAPA』7月号では「シグマ 24-70mm F2.8 DG DN | Art」「シグマ 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary」「ソニー FE 24-70mm F2.8 GM」の24mmワイド端で画質を比較したので、WEB版では35mm域の比較を掲載する。

ピント位置は、画面下1/3あたりにいる石の上の亀で、拡大ライブビューでピントを合わせている。この部分はまだ画面中央に近く、レンズによる差はそれほど大きくないので、同じピント面にあたる周辺部を切り出し、絞り開放とF5.6に絞ったときの描写を比較してみた。

35mm遠景解像比較

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■35mm F2.8

24-70mm F2.8 DG DN | Art (35mm F2.8で撮影)
24-70mm F2.8 DG DN | Art
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary (35mm F2.8で撮影)
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
FE 24-70mm F2.8 GM (35mm F2.8で撮影)
FE 24-70mm F2.8 GM

■35mm F5.6

24-70mm F2.8 DG DN | Art (35mm F5.6で撮影)
24-70mm F2.8 DG DN | Art
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary (35mm F5.6で撮影)
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
FE 24-70mm F2.8 GM (35mm F5.6で撮影)
FE 24-70mm F2.8 GM

絞り開放で解像が安定しているContemporary

絞り開放の周辺解像がもっとも安定しているのはContemporaryで、僅差でArtが追う。私物のGMは35mm域の周辺解像が不安定で、一応、調整はしてもらっていて、夜景など無限遠の解像テストではそれほど大きな乱れはないが、有限距離の撮影でピント面から少しでも外れると、解像が大きく崩れるケースがある。しかし、F5.6まで絞ると驚くほど解像とコントラストが向上し、3本の中でトップの描写になる。

近接撮影 (70mm F2.8)

近接撮影比較 (70mm F2.8)

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24-70mm F2.8 DG DN | Art (70mm F2.8で撮影)
24-70mm F2.8 DG DN | Art
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary (70mm F2.8で撮影)
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
FE 24-70mm F2.8 GM (70mm F2.8で撮影)
FE 24-70mm F2.8 GM

にじみの少ないContemporary、柔らかさではGM

絞り開放テレ端の近接撮影では、3本ともハイライトににじみを伴う描写だ。ただ、Contemporaryがもっともにじみが少なく、後方のボケもクッキリしている印象。逆に、GMはピント面から後ボケにかけて、ハイライトのにじみが大きく、後ボケに軸上色収差の色づきがあるものの、ソフトフォーカス的なファンタジックな描写だ。Artは、ContemporaryとGMの中間の描写だ。

またGMは、背景のボケも非常に軟らかく、階調もなめらかで、被写体の丸みが感じられる。シグマの2本は、GMよりもボケは硬く、輪郭が干渉し合ってうるさく見える領域がある。

35mm 中近景後方微ボケ

35mm 中近景後方微ボケ比較

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■35mm F2.8

24-70mm F2.8 DG DN | Art (35mm F2.8で撮影)
24-70mm F2.8 DG DN | Art
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary (35mm F2.8で撮影)
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
FE 24-70mm F2.8 GM (35mm F2.8で撮影)
FE 24-70mm F2.8 GM

■35mm F5.6

24-70mm F2.8 DG DN | Art (35mm F5.6で撮影)
24-70mm F2.8 DG DN | Art
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary (35mm F5.6で撮影)
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary
FE 24-70mm F2.8 GM (35mm F5.6で撮影)
FE 24-70mm F2.8 GM

解像とボケとも安定しているContemporaryが一推し

ほぼ無限遠の解像テストでは、残存色収差がもっとも少なかったのがArtで、パープルフリンジが残るのがContemporaryとGM。絞り開放の周辺解像もArtが僅差で優れている印象だ。ただ、中近景の撮影では、解像だけでなく、ボケ味も重要な評価項目で、個人的には、どんなに解像性能が優れていても、微ボケがうるさいレンズは好みではない。

今回、ArtとContemporaryを比較してみて、もっとも気になったのが微ボケの描写だ。この比較を見れば一目瞭然だが、Artの後ボケは、茎が完全な二線ボケになっていて、非常にうるさく感じる。本来はソニーと比較する予定はなかったが、Artのボケを見て、ボケと解像の両立を狙ったGMの描写も見てみたくなり、急遽、私物のGMとも比較してみることにした。GMの絞り開放の周辺解像にはやや不満が残る部分もあるが、もっとも微ボケが自然なのはやはりGMだ。Contemporaryも少し硬さは残るが、それほどナーバスなボケにはなりにくく、周辺部で色収差は残るが、解像も安定している。ワイド端28mmという制約さえガマンできれば、ダテジュンのお薦めはContemporaryだ。

 

※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。