伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2021年10月号 Other Shots
伊達淳一カメラマンがさまざまなレンズを使い倒しレビューする『CAPA』本誌人気連載の「レンズパラダイス」。2021年10月号の「レンズパラダイス」Other Shotsは、ワイド端が150㎜スタートで、手持ち撮影も可能な重さの超望遠ズーム「タムロン 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD」と「シグマ 150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports」の2本をピックアップ。いずれも純正の「ソニー FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS」よりワイド端がやや広めで、収納時の全長が短いのが特徴だ。
タムロン 150-500mm F/5-6.7 Di III VC VXD
細かい羽まで整った解像性能
多摩動物公園のオオワシ。テレ端500mmの絞り開放でネット越しでの撮影だ。高感度NRの影響もあり、カリカリにエッジ立つほどではなく、ハイライト部分は少しにじみも感じられるが、細かい羽の模様まで整った解像が得られている。
動物瞳AFでトラの目にしっかりとピント
多摩動物公園のアムールトラ。目や頭にきちんとピントが来ているが、胴体は被写界深度外。400mm F6.3でも意外と深度は浅く、動物瞳AFさまさまだ。陽の当たったヒゲは露出オーバーということもあり線が太めだが、軸上色収差の色にじみはなく、ボケの色づきも感じられない。
ISO1600に抑え、毛並みをくっきりと表現
多摩動物公園のレッサーパンダ。レッサーパンダの放牧場は陽が当たりにくい場所にあり、明るいレンズでないとすぐに超高感度になってしまう。そこで、被写体ブレ覚悟でシャッタースピードをできるだけ落とし、動きが止まった瞬間を狙ってみた。感度を抑えたことで毛並みがくっきりシャープに写っている。
クセのない自然なボケが得られる
前ボケ、後ボケの描写傾向をチェックするには、生い茂った芝を撮影するのがイチバンわかりやすい。前ボケのほうが少し二線ボケが出やすい印象だが、後ボケも縁取り感が目立つ領域はある。ただ、全体としてはボケと解像のバランスは良く、クセのない自然なボケが得られていると思う。
揺らぎの影響を受けやすいがデッキチェアはしっかり解像
日射しが強く、地表は陽炎でかなり揺らいでいて、砂浜のボケにかなり歪みが出ているが、パラソルやデッキチェアはしっかりとした解像が得られている。超望遠ズームは空気の揺らぎの影響を受けやすいので、少しワイド側に引いて使うことも考えよう。
トラックのフロントは非常にクリア
前後の距離が詰まって見える「圧縮効果」が得られるのが、望遠レンズの描写特性。これはテレ端の500mmで撮影しているので、トラックの入場待機列が実際よりもかなり密に見える。ピントを合わせたトラックのメタリックなフロント部分は非常にクリアな描写だ。
色収差もほとんどなく、周辺光量低下も少なめ
空気の揺らぎと湿度の影響でレンズ本来の解像は得られていないが、晴れた夏の日の昼間に、これだけクッキリ撮れれば上出来。色収差もほとんどなく、白い船体やワイヤーもスッキリ描写されている。周辺光量低下も少なめだ。
500mm絞り開放でも非常にクッキリとした描写
羽田空港に着陸する旅客機を城南島海浜公園から狙う。地表からある程度離れていて、撮影距離がそれほど遠くないので、テレ端500mm開放でも非常にクッキリとした描写だ。青空バックで周辺減光は多少感じるが、この程度なら十分許容範囲だろう。
シグマ 150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports
ピントが合った部分は高い解像性能
多摩動物公園のチーター。チーターの放牧場は広いので、チーターが手前に来たときがシャッターチャンス。フルサイズ400mm前後の画角でここまでアップで撮影できる。胴体はわずかに被写界深度外で毛並みは潰れがちだが、ピントを合わせた顔は細い毛までしっかり解像している。
逆光気味でもコントラストの低下は少なめ
多摩動物公園のチーターの子ども。トップライト気味のド逆光なので、思い切ったプラスの露出補正で撮影しているが、逆光気味でもコントラストの低下は少なく、600mmで撮影倍率も高く撮影距離も短めなので、想像以上にチーターの顔がクッキリ再現されている。
総合的には自然で柔らかなボケ味
後方の芝の反射にわずかに二線ボケが出ている領域があるが、ボケの輪郭は必要以上に強調されていないため、総合的には自然で柔らかなボケ味だ。テレ端では少しにじみを感じるケースもあるが、撮影距離がそれほど離れていなければ超望遠ズームの600mm絞り開放としてはシャープな描写だ。
しっかりピントが合わせられれば高い解像が得られる
野鳥撮影には600mmでもまだまだ望遠不足に感じるケースは多いが、空気の揺らぎの影響が少なく、ピントのピークでしっかりピントを合わせられれば、大トリミングしても解像感は高い。「α7R IV」など高画素機ならAPS-Cクロップで撮影するのも手だ。
約10mの好条件なら高感度時の再現力も高い
近くの川でカワセミを撮影。日没まであと1時間くらいで日が陰る状況で、あまり明るくはなかったが、撮影距離は10mちょっとと割と好条件だったので、ISO3200の高感度でも羽根の細部までしっかり再現できている。
直進ズーム的な操作が可能
このズームはレンズ先端の窪みを左手で掴み、前玉を前後に動かす直進ズーム的操作が行なえるのが特徴だ。このように向かってくる被写体もレンズ先端を支えながらズームできるので、安定したホールディングで撮影でき、ズームリングの回転方向で迷う心配もない。手すりの反射にパープルフリンジも認められない。
陽炎を生かして夏らしい演出で飛行機を狙う
期待していたよりも積乱雲が発達しなかったので、積乱雲と飛行機が絡む場所を探して撮影。ただ、高度が低く、撮影距離も長くなり、おまけに、熱せられた道路から立ち上る陽炎など、空気の揺らぎの影響が大きく、飛行機もメラメラな描写だが、逆にそれが夏の暑さを演出している。
機体番号もしっかり読める
パラリンピック2020開催を記念するブルーインパルスの展示飛行を、ステイホームを守って自宅 (調布) から撮影。時間調整と最終確認で5回くらい旋回してくれたが、スモークを出したのは1回目と3回目で、これは3回目。デルタ隊形で1番機だけスモークを出すというある意味レアな写真に。あいにくの曇り空だが機体の番号もしっかり読める。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。