これまで一眼レフ用のマクロレンズをアダプターを介して使用していたニコンZユーザーに向け、Zシステム専用設計のマクロレンズ2本が発売された。待ちに待った「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」をフィールドに持ち出し、その実力を検証した。
ニコンZユーザー待望の高画質マクロレンズがついに誕生
ミラーレスカメラZシリーズが発売になって以来、Zシリーズ用のマクロレンズを待ち望む声は多かった。この6月に50mmと105mmというタイプの異なるマクロレンズが登場。フィールドはもちろん、自宅の花や小物の撮影にも活用できそうだ。
【MC 105mm】ローポジションからドラマチックな光で描く
朝露をまとったスギナを地面すれすれのローポジションから手ブレ補正をきかせて撮影した。絞り開放で撮影することで、水滴が大きな丸ボケとなって華やかだ。逆光の光効果が生きたメリハリのある仕上がりである。
【MC 50mm】軽量コンパクトだから自由なアングルで撮影できる
咲き始めたアジサイを最短撮影距離から撮影した。見上げるようなアングルにして背景に青空を写し込み、カラフルな初夏のイメージに仕上げた。軽量コンパクトなレンズだから、多少無理なアングルでも軽快に撮影できた。
本格派の「MC 105mm」と軽快な「MC 50mm」
「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」は一眼レフ用の「AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED」と比べ、手ブレ補正機能が強化され、質量も630gに抑えられている。「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」は手ブレ補正機能非搭載ではあるが、質量260g、全長はMC105mmの約半分と、気軽に持ち運べるサイズに仕上がっている。
「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」は被写界深度が深いため、ピント合わせがしやすく、また適度な距離を取れば群生する花々の広がりも表現しやすい。ちょっとした散歩にも気軽に持ち出せて、小さな被写体をスナップするのにぴったりだ。
ただし、最短撮影距離でのワーキングディスタンス (レンズ先端から被写体までの距離) が約5cmと短く、目いっぱい花に近付こうとすると手前の葉に触れてしまうことがあった。フィールドでは自由に近づけない被写体も多く、ワーキングディスタンスが約14cmある「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」のほうが使いやすいだろう。
どちらも防塵・防滴に配慮した設計となっているのでフィールドでの撮影も安心だ。これまでマクロレンズは105mm派であったが、近所で撮る機会が増えたゆえ、軽量コンパクトな「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」にも大きな魅力を感じた。
手持ち撮影もこなせる中望遠マクロ「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」
キレイな丸ボケと逆光の輝きが印象的
早朝の光が森に差し込み新緑が輝いていた。絞り開放で背景がキレイな丸ボケとなり、カエデの葉脈の模様もくっきりと捉えられた。後方から強い光が差し込んでいるにもかかわらず、ゴーストやフレアのないクリアな仕上がりである。
ブレを排除し精緻な描写で等倍撮影
白い清楚な花を咲かせるアナベルを最短撮影距離まで近づいて撮影した。被写界深度を確保するためF11まで絞り込み、三脚を使ってブレを防ぐことで、花弁の模様や柱頭の質感までくっきりと捉えた。
フィールドで使いやすい
レンズ先端から約14cm先にあるアナベルを、三脚を使って等倍撮影。フードを付けても余裕がある。風が止んだ瞬間にピントを合わせ、素早くシャッターを切ることで細部までシャープに仕上げた。
色収差を抑え画面周辺まで高画質を実現
EDレンズ3枚、非球面レンズ1枚を採用している。色収差が抑えられていて色にじみが少なく、Zマウントの恩恵もあって、S-Lineの名に恥じない周辺まで高い解像感が得られる。
撮影情報を確認できるレンズ情報パネル
DISPボタンを押すと表示が切り替わり、F値、撮影距離、撮影倍率などを確認できる。近接撮影では、おおよその距離にピントを合わせてからAFを動作させるとスムーズだ。
軽快に撮影できる軽量コンパクトサイズ「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」
小型化と画質性能を追求した光学設計
EDレンズ1枚、非球面レンズ1枚を採用している。レンズ配置を密にすることで全長を短くし、軽量コンパクトを実現した。フォーカシング時には前群が繰り出される。
フォーカス制限を切り替え、AFでマクロ撮影
近接撮影ではAFが無限遠と近距離を行ったり来たりして迷いやすい。撮影距離にリミッターをかけてやると、むだなAF動作が少なくなり、ピント合わせがスムーズになる。
繰り出した鏡筒に撮影倍率を表示
フォーカシングにより繰り出された鏡筒には、撮影倍率と撮影距離が表示されている。あらかじめ撮影倍率を決めて、撮影距離を調節してピントを合わせることもできる。
※この記事は『CAPA』2021年7月号掲載の実写レビューを再構成したものです。作例はベータ機で撮影しています。