ニコンFM/FEシリーズと見まごうばかりのデザインで、ZシリーズのAPS-Cニューモデル「Z fc」が登場した。「Z fc」の“f”はフィルム、そして融合 (fusion)、“c”はカジュアル。2021年7月の発売以来、人気を集めている軽快な“一眼レフテイスト”のミラーレスカメラを、あらためておさらいしてみよう。
ニコン Z fc おさらい
- デザイン・ダイヤル操作
- コンパクトさ・使い勝手
- レンズ&カラバリ
名機「FM2」のスタイリングを受け継ぐ外観デザイン
カメラファンの心をくすぐる新製品がニコンから登場。これはフィルム一眼レフか!? と思ってしまうような新型機の名は「Z fc」。ミラーレスZシリーズのDXフォーマット (APS-Cサイズ) 機だ。
かつてのフィルム一眼レフ「FM2」にインスパイアされたデザインだが、同様のコンセプトのデジタル一眼レフ「ニコン Df」以上に「FM2」に近い。手に取ると「あぁ、このサイズ感だよな」と思わず呟いてしまうコンパクトさと手応えのある仕上がりだ。
前面
インスパイアされたという「FM2」と並べてみると、シリーズの新機種にさえ見える外観だ。違いはマウントが大きいための軍艦部ラインの高さ。ロゴは「FM2」と比べるとちょっと太めだが「Df」と同様に旧ロゴが使われている。
■ロゴ比較
Z fc |
FM2 |
背面
ファインダー接眼部自体は四角だが、そこはラバーパーツ (DK-32) により丸窓を意識した仕上がり。「FM2」のように周辺がシルバーだと見づらいので、周囲を含めラバーで覆っている。視度補正ダイヤルは右側に装備。
■「丸窓」アイピース比較
Z fc |
FM2 |
上面
シャッターダイヤルは同じ位置に配置。デザインはより精緻な仕上がりだ。「FM2」では二重構造ダイヤルになっていて、持ち上げて回すとISO感度 (透明窓の部分・ASAは昔の感度表示) が設定できるようになっていた。
■シャッターダイヤル比較
Z fc |
FM2 |
「FM2」とは?
「New FM2」と併せて17年ものロングセラーを記録した名作MF一眼レフだ
1982年3月に発売されたメカシャッター&マニュアル専用機。初の1/4000秒の高速シャッターを達成、初代はハニカムパターンで肉抜きされたチタン幕シャッターが採用され話題になった。1984年には後期型ともいえる「New FM2」が登場している。
※「Z fc」との比較に用いたのは「New FM2」です。
メカニカル感満載でダイヤルでのマニュアル操作が楽しめる
操作系は見てのとおり懐かしさを覚える単機能ダイヤルを主体としたもの。しかしながら、今のカメラに慣れている人にとっても使いやすい工夫がなされており、1/3段ステップでの設定など、きめ細かな操作もコマンドダイヤルで移行できる。
大きなシャッターダイヤルが目を引くポイント
デザインのキーとなるのがこのダイヤル類だ。左右の軍艦部に搭載されたシャッターダイヤル、露出補正ダイヤル、感度ダイヤルは、ダイヤル上の数値に指標を合わせることでシャッタースピード / 露出補正値 / ISO感度を設定する操作系。各設定をひとつひとつ確実に行なう「操作感」を存分に楽しんで撮影できる。
H2 (ISO204800) まで設定可能な感度ダイヤル
上面左側にはISO感度ダイヤル、そして同軸にモードレバーを装備。感度は1/3段刻みでISO100~51200、拡張感度のH1 (ISO 102400相当)、H2 (ISO 204800相当) まで細かく設定できる。感度オート設定はメニューから行なう。
小さな窓はF値表示用
絞り値の表示は液晶の小窓で確認できる。窓の左に「F」の文字が表記されているのでわかりやすい。
シャッター / 露出補正ダイヤルとコマンドダイヤルの連動性
「Z fc」には「Z 50」などと同様、2つのコマンドダイヤルを装備。絞り値等の設定が可能なほか、シャッタースピードを1/3段刻みで設定したり (シャッターダイヤル「1/3」ポジションで可能)、露出補正をコマンドダイヤルで操作することが可能だ (露出補正ダイヤル「C」ポジションでコマンドダイヤル操作に移行)。
シャッターダイヤルを「1/3」に
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露出補正ダイヤルを「C」に
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■コマンドダイヤル
【前】サブコマンドダイヤル |
【後】メインコマンドダイヤル |
ボディ前面と背面のボタン配置
「拡大 / 縮小ボタン」は、「Z 50」で採用された液晶モニター上のタッチボタンから、ボディ上の物理的なボタンに変更されている。ファインダー左には「再生 / 削除 / モニターモード」の3ボタンが密集する。前面にはファンクションボタンが1つ搭載されている。
■前面
■背面
見た目だけでなく機能や実力も本格派
見た目だけでなく、ボディはマグネシウム合金の本格派。シャッターも10万回クリアの高耐久性で、長く使える実力を備えている。
機能的には「Z 50」がベースで、撮像素子と画像処理エンジンは同等、ボディ内手ブレ補正も非搭載だが、進化している部分も多い。例えばUSB端子はType-Cになり、USB給電に対応。AFでは動画でも瞳AFや動物AFが可能になり、測距輝度もローライトAF設定では−4.5EVまで対応と強力に。撮影コマ数はRAWで最大44コマ (「Z 50」は最大35コマ) とバッファ容量もアップしているなど、じっくり撮影にも、高機能を生かした最先端撮影にも対応できる魅力たっぷりの1台だ。
ニコン Z fc
発売日
ボディ、Z fc 16-50 VR SL レンズキット : 2021年7月23日
Z fc 28mm f/2.8 Special Edition キット : 2021年10月1日
参考価格 (税込)
ボディ : 129,800円
Z fc 16-50 VR SL レンズキット : 149,600円
Z fc 28mm f/2.8 Special Edition キット : 159,500円
マウント ニコンZマウント
撮像素子 2088万画素APS-CサイズCMOSセンサー
AF 209点ハイブリッドAF (像面位相差・コントラスト)
瞳AF 人物・動物
連続撮影性能 最高約11コマ/秒
ファインダー 約236万画素 倍率約1.02倍
動画性能 4K UHD 30P
大きさ (幅×高さ×奥行き) 約134.5×93.5×43.5mm
重さ 約445g
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。
〈製品撮影〉青柳敏史