マウントアダプターが今、大きな進化を遂げている。一昔前までは、マウントをただ変換するだけのものだったが、ミラーレスカメラの台頭とともにAFやAEなどの電子制御が可能なものが続々と登場。AFスピードや手ブレ補正の効き、MFレンズをAFレンズに変えてしまう製品の実力など、徹底的に使い倒してみた。後編では、電子接点付きのマウントアダプターに着目する。
マウントアダプター使い倒しレビュー
- もはや変換だけじゃない!
- AFや手ブレ補正は使えて当たり前!?
AFや手ブレ補正を生かせる! 純正レンズと同じように使えるのが強み
電子接点付きマウントアダプターの最大の強みは、カメラやレンズの機能をほぼ完全に利用できるところだ。マウントもメーカーも異なるカメラとレンズの組み合わせであっても、純正レンズと同じようにAFやAEが使えるし、手ブレ補正も効く (さすがにカメラとレンズ双方は協調作動せず、使用する際はレンズ側の手ブレ補正機能はOFFに)。
人物や動物の顔 / 瞳認識、画面内を移動する被写体に測距点を移動させてピントを合わせ続ける追尾機能なども、たいていはそのまま使える。コンティニュアスAFの動きがいまひとつ速くなかったり、レンズとの組み合わせによっては正常に作動しないケースもあるようだが、マウントアダプターのファームウェアアップデートで改善する場合もあるようだ。
また、画像に記録されるExif情報にレンズの名前や撮影時の焦点距離、絞り値といった撮影データが純正レンズ同様に記録されるのもありがたい。電子接点のないタイプでは1枚1枚メモを取らないといけなかったのが、電子接点付きならシャッターを切るだけで撮影データを残すことができる。
着脱式の三脚座は純正にない強み「Commlite CM-EF-EOS R」(キヤノンEF → キヤノンRF)
コムライトのキヤノンEF → キヤノンRFマウントアダプター「CM-EF-EOS R」は、純正品同様にAFやAE、手ブレ補正なども問題なく利用できる。着脱式の三脚座を備えている。重さのあるレンズで三脚撮影をする際に重量バランスを調整しやすいのが純正にない強みだ。参考価格7,680円 (税込)。
マクロ域撮影でも手ブレ補正で安心
かなり暗い環境でサキシマキノボリトカゲを撮影。手ブレ補正が効くので低速シャッターでも安心して撮影できる。このレンズのウリの200mm側で1:4の近接撮影でも効く。
焦点距離や撮影データなどのExif情報が記録される
装着したレンズの名称や撮影時の焦点距離、絞り値などの情報は純正品同様にExif情報に記録してくれる。撮影データがきちんと残せるのが電子接点付きマウントアダプターの便利な点だ。
レンズ光学補正にも対応する
基本的には純正品と同じようにレンズ光学補正に対応したレンズであれば歪曲収差や周辺光量の補正が可能。ただし、レンズメーカー製では一部の機能が利用できないなどの制約もあるので要注意だ。
RFマウント以外に変換できる製品もアリ
EFレンズはメカ連動がなく、シンプルな構造で多機能を実現しやすいこともあり、カメラ側のバリエーションが豊富。キヤノンRFのほか、ソニーE (CM-EF-E HS) やニコンZ (CM-EF-NZ)、マイクロフォーサーズカメラ用のものが発売され、AFやAE、手ブレ補正なども活用できる。参考価格 CM-EF-E HS [キヤノンEF → ソニーE] 18,350円、CM-EF-NZ [キヤノンEF → ニコンZ] 31,800円 (いずれも税込)。
AFニッコールレンズをソニーのミラーレスに装着「MonsterAdapter LA-FE1」(ニコンF → ソニーE)
モンスターアダプターの「LA-FE1」は、AFモーター内蔵のニコンFマウントレンズをソニーEマウントカメラで使用できる電子接点付きモデル。モーターなしレンズでもCPU内蔵レンズはカメラ側から絞りの設定に対応できるほか、Exif情報の記録も可能となっている。参考価格41,000円 (税込)。
顔を向けた瞬間に瞳を捉える正確さ
カメラを向けるとなかなか目を向けてくれない猫なのだが、顔を上げた瞬間に瞳検出してくれたので、絞り開放でもばっちりピントの合った写真を楽に撮影することができた。
動物瞳検出が働き猫の目を捉え続ける
電子マウントアダプターのすごいところは、非純正との組み合わせなのに純正レンズとほぼ同じ使い方ができること。今どきのカメラなら人物の顔や目はもちろん、動物の目にだって快適にピントが合う。一眼レフ用のレンズ資産が、メーカーの異なるミラーレスカメラで生かせるのだから素晴らしい。
カメラボディのAF微調整機能も活用可能「Fringer FR-NZ1」(キヤノンEF → ニコンZ)
キヤノンEFマウントレンズをニコンZマウントのカメラボディで使えるフリンガーの「FR-NZ1」は、鏡胴と着脱式三脚座にマグネシウム合金を採用。装着レンズにもよるが、動画撮影時のAF速度の調整や、AFでのピントが甘いときのためのAF微調整機能も活用できる。参考価格44,000円 (税込)。
十分なAFスピードも電車を追いかけた
AFの追尾速度が遅くならないか心配だったが、ホームに入ってくる電車くらいのスピードなら純正の組み合わせのときと遜色なく感じた。これなら動体でも安心して撮影できる。
追尾AFにもしっかり対応、迫ってくる列車もAFで追える
コンティニュアスAFでのピントの食いつきや安定性の面では、純正レンズとの組み合わせに比べてやや落ちるケースもあるが、一般的な動体撮影なら十分に対応可能。追尾AFも使えるので、画面内を移動する被写体も問題なく追える。
電子制御ができるそのほかの主なマウントアダプター
現在発売されている電子マウントアダプターは、多くがキヤノンEFマウントレンズ用とニコンFマウントレンズ用で、対応カメラボディはキヤノンRF、ソニーE、ニコンZ、富士フイルムX、マイクロフォーサーズなどがある。縮小光学系を搭載したスピードブースタータイプも登場しており、APS-Cサイズ機のユーザーにとっても選択の幅が広がってきている。
- Commlite CM-ENF-E1 PRO [ニコンF → ソニーE] 30,300円
- SHOTEN NAF-SE [ニコンF → ソニーE] 29,800円
- VILTROX NF-E1 [ニコンF → ソニーE] 22,300円
- VILTROX EF-EOS R [キヤノンEF → キヤノンRF] 6,900円
- VILTROX EF-ZR [キヤノンEF → ニコンZ] 26,300円
- VILTROX NEX IV [キヤノンEF → ソニーE] 17,200円
- VILTROX EF-FX1 [キヤノンEF →富士フイルムX] 21,800円
- VILTROX スピードブースター EF-Z2 [キヤノンEF → ニコンZ] 29,800円
- VILTROX スピードブースター EF-E II [キヤノンEF → ソニーE] 23,800円
※価格はいずれも税込。
電子接点付きのエクステンションチューブもある
一方、マウントアダプターとは少し違うが、電子接点を持つミラーレスカメラ用の中間リング (エクステンションチューブ) も登場している。撮影距離による収差変動を抑えるフローティング機構を備えたレンズでは、中間リングを使うことで収差が増えて解像感が低下する場合がある。という事情もあって純正では発売されていないわけだが、比較的安価で手軽に接写が楽しめるので持っていると便利だ。
等倍以上の撮影も可能に「Commlite CM-MET-EOS R (26mm・36mmセット)」(キヤノンRF用)
コムライトの「CM-MET-EOS R」はキヤノンRFマウント用の中間リング。厚さ26mmと36mmの2つがセットになっていて、ひとつだけでも使えるし、2つ重ねて使うこともでき、50mmレンズなら等倍以上の高倍率撮影が可能だ。
オオゴマダラの顔をドアップで撮影
体長7cmほどのオオゴマダラのアップ、このレンズのもともとの最短撮影距離は45cmだが、エクステンションチューブを使うと105mm側でほぼレンズ前数cmのところまで寄れ、ほぼ等倍で撮影が可能。
解像を上げるにはF8まで絞って使う
フローティング機構を備えたレンズは中間リングを使うことで収差が増える場合があるため、絞り気味にしたほうがシャープに写せる。
ソニーEマウント用のセット「Commlite CM-MET-E (10mm・16mmセット)」(ソニーE用)
ソニーEマウント用の「CM-MET-E」は厚さ10mmと16mmの2つがセット。電子接点付きで手ブレ補正などの機能も問題なく利用できる。参考価格4,800円 (税込)。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。
〈解説〉北村智史
〈製品撮影・作例撮影・解説〉青柳敏史