機材レポート

APS-Cの特徴を生かした高速連写モデルと、リニューアルされた高性能望遠ズームに再注目!!『キヤノン EOS 7D Mark II+EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM』

キヤノン EOS 7D Mark II+EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM+バッテリーグリップBG-E16
リニューアルされた高性能望遠ズーム「EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM」を装着した『キヤノン EOS 7D Mark II+バッテリーグリップBG-E16』。トータルで2.8kg以上の重さになるが、満足度の高い望遠撮影が満喫できるセットである。

 昨年の秋に発売された『キヤノン EOS 7D Mark II』は、圧倒的な高速連続撮影性能やAF機能を実現した、APS-Cサイズのデジタル一眼レフである。その高速連続撮影のスピードは「最高約10コマ/秒」と、ミラー可動式の一眼レフとしてはフラッグシップモデル(キヤノンだとEOS-1D X、ニコンだとD4Sなど)に次ぐスピードを達成。そして、このモデルの5年前に発売された「EOS 7D」と比べると、撮像素子や画像処理エンジンも大幅な進化&スペックアップを遂げている(有効約1800万画素CMOS・デュアルDIGIC4→有効約2020万画素CMOS・デュアルDIGIC6)。

 一方、『EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM』は、従来の「EF100-400ミリF4.5-5.6L IS USM」を16年ぶりにリニューアルした、高性能タイプの望遠ズームレンズである。蛍石1枚、スーパーUDレンズ1枚を含む16群21枚のレンズ構成により、色収差を低減し画面周辺部まで高画質を実現。また、新コーティング技術ASC(Air Sphere Corting)の採用により、フレアやゴーストを大幅に抑制している。そして、手ブレ補正機構「IS」の補正能力も、シャッター速度換算で「約1.5段分」から「4段分」に高められている。…って、従来の100-400ミリの「IS」って、割と補正能力が低かったのね。

さて、話をカメラに戻すが、最近のレンズ交換式カメラでは、「35ミリ判フルサイズ」が持てはやされる傾向にある。また、それに同調するかのように、新しく登場する交換レンズも、APS-C専用レンズより35ミリ判フルサイズ対応レンズの方が、力の入った製品が目立っている(もちろん、どちらのフォーマットも採用しているメーカーでの話)。

だが、そんなカメラ業界の時流の中で、この『キヤノン EOS 7D Mark II』は、35ミリ判フルサイズよりも小さいAPS-Cサイズの特徴を生かし”手頃なサイズ&価格の高速連写モデル”を実現。こういった点が高く評価され、カメラグランプリ2015の「大賞」と「あなたが選ぶベストカメラ賞」の二冠を受賞した。ちなみに、ボクもカメラグランプリ2015の選考委員の一人だが、やはりこのEOS 7D Mark IIを1位に推した。

…ということで、新製品ではないが、いま一度『キヤノン EOS 7D Mark II』を取り上げてみたくなった。そう、人気の高い高性能望遠ズーム『EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM』と一緒にね。

キヤノン EOS 7D Mark II+EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM+バッテリーグリップBG-E16
同じようにAPS-Cサイズの撮像素子を採用していても、EOS KissシリーズやEOS 70Dなどの下位モデルと比べると、結構ボリューム感がある「EOS 7D Mark II」ボディ。だが、そのぶん「EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM」のような大柄なズームレンズとのマッチングは良好。手にした際の”剛性感”の高さも、下位モデルとはひと味違う。

高速連続撮影
吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
勢いよく羽ばたくフラミンゴを、高速連続撮影で捉える。この「最高約10コマ/秒」のスピード感は、5コマ/秒や6コマ/秒とは大きく異なるものだ。こういった動きモノの撮影では、その違いを痛感する。
◆共通データ/キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(255ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/1250秒 WB:オート ISO400 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

 『キヤノン EOS 7D Mark II』は、発売前に「デジキャパ!」の新製品レビューで使用したが、なんといっても高速連続撮影のスピード感に圧倒された。一眼レフでの”二桁台の速度”は「ニコン D4」などで体感済みだったが(これもメーカー借用品)、ミドルクラスの一眼レフで「約10コマ/秒」は、やっぱりスゴイよなぁ。ちなみに、ボク自身は、以前に使用していた「ニコン D300+マルチパワーバッテリーパック MB-D10」の組み合わせで「約8コマ/秒」を体験済み。だけど、それと比べても「約10コマ/秒」のスピード感は、ワンランク上の感覚だと思う。

 まずは、動物園に行って”約10コマ/秒の連写性能”と”100-400ミリの望遠効果”を体感したい。ま〜、トラやチーターがウロウロ散策している姿は、別に「約10コマ/秒」の連写じゃなくてもエエけどね(笑)。一方、水鳥が羽ばたく際のポーズや水飛沫の変化などは「約10コマ/秒」の威力が実感できる場面だったヨ。

連写性能以外では、AF性能&仕様のレベルの高さも際立っている。オールクロス65点AFセンサー(中央は開放F8に対応)、低輝度限界はEV-3(中央1点)、7つの測距エリア選択モード、狙った被写体を捉え続ける予測精度と安定性を実現したAIサーボAF III、AFカスタム設定ガイド機能。…何、この隙がない感!?(笑) ちなみに、7つの測距エリア選択モードの中では「ゾーン」と「ラージゾーン」がお気に入り。動きの激しい(速さだけでなく、変化の度合いも)被写体では、この2モードが便利なんだよね。

でもって、APS-Cサイズ機だと35ミリ判換算で「640ミリ相当」の超望遠の画角が得られる「EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM」の頼もしさも実感した。そう、動物園とかの”被写体に近づけない状況”だと、300ミリ相当くらいの望遠でも物足りなく感じることが多いからね。もちろん、各部の操作性やAF性能、そして画質に関してもハイレベルで、非常に満足度が高い。希望小売価格30万円(税別)の製品だから、これで満足度が低かったら怒るわな(笑)。

ただし、台座部分が着脱可能な三脚座の台座は、ちょっと小さすぎる印象を受けた。まあ、大きすぎるのも問題だけど、適度な大きさ(というか、レンズ本体部分との隙間)があれば、撮影中の携行時に”取っ手”として利用できて便利なんだよねぇ。本来の評価基準とはズレるけど。

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(400ミリで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/500秒 WB:オート ISO2500 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(400ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/1250秒 WB:オート ISO400 3648×5472ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(400ミリで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/500秒 WB:オート ISO800 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(371ミリで撮影) シャッター優先オート F5.6 1/1000秒 WB:オート ISO1600 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

◆ ◆ ◆

キヤノン EOS 7D Mark II+EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM+フードET-83D
「EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM」に同梱のレンズフード「ET-83D」を装着した状態。このフードには、PLフィルターなどの回転操作を可能にする開閉式の操作窓が備わっている。レンズ本体との外観バランスも良好。

100ミリで撮影
吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例

400ミリで撮影
吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
「最短撮影距離0.98m」という近接能力の高さも、この”新しい100-400ミリ”の大きな特長のひとつ。超望遠400ミリ(しかも画質をウリにする高性能タイプ)で、この数値は結構スゴイよ。…ということで、花壇の中の小さな一輪の花も”400ミリで最短近く”だと、マクロレンズ並に大きく写せるのだ。
◆共通データ/キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(255ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/1250秒 WB:オート ISO400 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

 動物園に続き、植物園でも実写してみることにした。「EOS 7D Mark II」ボディはともかく、超望遠域までカバーする「EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM」は、スポーツや乗り物や動物を撮るレンズ…という印象が強いと思う。だが、このレンズには、旧モデル「EF100-400ミリF4.5-5.6L IS USM」と比べて”最短撮影距離大幅短縮&最大撮影倍率アップ”という特長がある。そのため、植物園でのクローズアップ撮影も十分イケる。その仕様は、旧モデルで”全域1.8m・0.2倍 “、本モデルで”全域0.98m・0.31倍 “。なんと、最短撮影距離は半分近くまで短縮されているのだ。マクロ機能を持たない中望遠レンズの最短撮影距離並の間合いを保ちながら、約0.5倍相当(35ミリ判換算)のマクロ撮影が可能…。これはなかなか楽しいっ! また、そこまでの高倍率でなくても、超望遠特有の”引き寄せ効果”や”圧縮効果”によるダイナミック絵作りは、花などの植物撮影でも魅力的なのである。

 最後に、ボクが「EOS 7D Mark II」で気に入っている、いろんな点(まだ触れていない点)を列記してみよう。
●インテリジェントビューファインダーII
●強化された防塵・防滴性能
●人工光源下でのフリッカーレス撮影機能
●記録画質「RAW+L」設定時の連続撮影可能枚数は19枚(UDMA7対応のCFカード使用時)
…といった点である。特に、光学ファインダー機でありながら、ライブビューや電子ビューファインダーのような多彩な設定情報が表示できる「インテリジェントビューファインダーII」には感心したねぇ。

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(200ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/640秒 WB:太陽光 ISO320 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(400ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/1250秒 WB:太陽光 ISO400 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(300ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/800秒 +0.3補正 WB:太陽光 ISO400 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

吉森信哉「キヤノン EOS 7D Mark II」作例
◆キヤノン EOS 7D Mark II EF100-400ミリF4.5-5.6L IS II USM(400ミリで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/1250秒 +0.7補正 WB:太陽光 ISO250 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)