伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2023年2月号アザーショット 【前編】
85mm F1.4レンズといえばポートレート撮影のド定番レンズで、メーカー各社も設計には力を入れ、開発にしのぎを削る。特に気になるのは、後方のボケ描写とピント面における解像性能。これまでにない機動力を持った新しい “究極のポートレンズ” として登場した「シグマ 85mm F1.4 DG DN | Art」の描写性能をチェックした。
- SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art 実写チェック
- SIGMA 20mm F1.4 DG DN | Art 実写チェック
SIGMA 85mm F1.4 DG DN | Art
[マウント] ソニーEマウント、Lマウント [最大径×長さ] Eマウント φ82.8×96.1mm、Lマウント φ82.8×94.1mm [重さ] Eマウント 625g、Lマウント 630g [レンズ構成] 11群15枚 [最短撮影距離] 85cm [最大撮影倍率] 0.12倍 [絞り羽根枚数] 11枚 [フィルター径] φ77mm
参考価格 100,980円 (税込)
トリミングしても高精細な描写が保てる
多摩動物公園のルリコンゴウインコ。鳥インフルエンザ対策なのか水色のネットが張られていたが、絞り開放で撮影するとネットは大きくぼけて、その存在をほぼ感じなくなった。動物園での撮影には焦点距離がやや短いが、高画素機で撮影しても絞り開放から高い解像性能が得られるので、トリミングでも高精細な描写を保てるのが強みだ。
軸上色収差による色づきが極めて少ない
望遠、超望遠レンズよりも画角が広いので、背景に何が存在するかある程度その様子を保ちつつ、ピント面以外はフワッとぼけるのが、大口径中望遠レンズならではの絞り開放描写だ。軸上色収差による前後の色づきも極めて少なく、スッキリとしたボケのグラデーションを楽しめる。
輪線ボケはなく口径食は標準的レベル
江ノ島サムエル・コッキング苑のウィンターチューリップ。全身ポートレートを撮影するような距離でも絞り開放の被写界深度は極めて浅く、ピント面だけキリッと解像しその前後はフワッと大きくぼかせる。最後面に非球面レンズを1枚使用しているが、非球面特有の輪線ボケは感じない。口径食はそれなりにあるが、85mm F1.4としては標準的なレベルだ。
にじみもなく絞り開放からキリッとした高い解像性能
横浜関内の猫カフェ Miysisにて。猫の瞳を見ればわかるように店内は日中でもあまり明るくないが、開放F1.4の明るさがあれば、それほど感度を上げなくても被写体ブレしにくいシャッタースピードを確保できる。軸上色収差も非常に少なく、猫のヒゲや毛並みに色浮きはなし。開放からキリッとした解像が得られ、球面収差によるにじみはないので、柔らかな描写を得たいならソフトフィルターなどを併用したい。
パープルフリンジはなく遠景もしっかり解像
江ノ島サムエル・コッキング苑にて、ライトアップされた展望灯台を絞り開放で撮影。輝度差が非常に大きな光源周りにもパープルフリンジは出ていない。遠景の解像も凄まじく、ピクセル等倍表示して見ると、屋上のフェンスや塔のリベット、観光客の顔まで確認できる。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。