伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2023年3月号 アザーショット【後編】
富士フイルムXシリーズのマクロレンズは3本あるが、そのうちの「XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro」は、Xシリーズ用交換レンズで初めて等倍撮影に対応した中望遠マクロ。インナーフォーカスを採用し、シフトブレ対応の手ブレ補正機能を搭載。テレコンバーターも装着できるのが特徴だ。マクロレンズとして求められる性能を凝縮したと謳う望遠マクロの実力をチェックした。
- XF30mmF2.8 R LM WR Macro 実写チェック
- XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro 実写チェック
富士フイルム XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
[マウント] 富士フイルムXマウント [最大径×長さ] φ80×130mm [重さ] 約750g [レンズ構成] 12群16枚 [最短撮影距離] 25cm [最大撮影倍率] 1倍 [絞り羽根枚数] 9枚 [フィルター径] φ62mm
参考価格 147,950円 (税込)
しべに付いた花粉を鮮明に再現
冬に咲いている身近な花といえば、ツバキ。このカットは約1/3~1/2倍のマクロ撮影であえて絞り開放で撮影している。中望遠マクロだけあって被写界深度は非常に浅く、花のしべのごく一部にしかピントは合わず、雌しべの先端を狙ったはずが少しだけ前ピンに。それでもピントが合っている雄しべの花粉が驚くほど鮮明に再現されている。
ピント面はとてもシャープで、後ボケはクリーミー
多摩動物公園の大温室が工事中だったので、ほかに都内で蝶が見られる温室ということで、足立区生物園の温室に足を伸ばしてみた。飛んでいる蝶を撮影するのは難しく、葉っぱで休憩している蝶をパチリ。後ボケは完全に大ぼけし、実にクリーミー。ピントの合った顔の部分は、絞り開放の近接撮影としてはかなりシャープでクリアだ。
花びらの輪郭に軸上色収差による色浮きはない
軸上色収差が残っていると、白い花びらの輪郭に不自然な色が浮くが、このレンズはピント面だけでなくボケにも色づきがなく、ほんの少しにじむハイライトの軟らかさもいい感じだ。茎の輪郭に少し不自然な縁取りがあるが、これはレンズというよりカメラの輪郭強調のいたずらか? 口径食はそれなりにあるが、ボケの輪郭や欠け具合は自然だ。
梅の花がボケすぎないよう少し絞って撮影
梅のシーズンには少し早かったが、早咲きの梅を中望遠の狭い画角で切り取ってみた。絞り開放だと梅の花がぼけすぎてしまうので、1段ちょっと絞って撮影。少し絞ることで梅の花の輪郭がある程度クッキリと再現され、必要以上にしべが微ボケにならずに済んでいる。後ボケも非常に柔らかで自然だ。
微ボケ部分も自然で、うるささを感じない
バイクショップ店頭に整然と並べられている同型のスクーター。手前から2番目のスクーターのエンブレムにピントを合わせ、その前後をぼかしてみた。ピントが合っているエンブレムは色ズレやパープルフリンジがなく、前後のボケを見ても色づきはない。微ボケになっている前後のバイクのエンブレムを見ても、自然なボケ感でうるささは感じない。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。