伊達淳一のレンズパラダイス『CAPA』2023年6月号 アザーショット【前編】
今回は、ソニーとシグマから発売されたEマウントの50mm F1.4をピックアップ。「FE 50mm F1.4 GM」は、重さ約516g、フィルター径67mmと小型軽量化を図りつつも、高解像と乱れの少ないボケ描写を併せ持った標準レンズだ。その描写力をチェックした。
- ソニー FE 50mm F1.4 GM 実写チェック
- シグマ 50mm F1.4 DG DN | Art 実写チェック
ソニー FE 50mm F1.4 GM
[マウント] ソニーEマウント [最大径×長さ] φ80.6×96mm [重さ] 約516g [レンズ構成] 11群14枚 [最短撮影距離] AF時 0.41m、MF時 0.38m [最大撮影倍率] AF時 0.16倍、MF時 0.18倍 [絞り羽根枚数] 11枚 [フィルター径] φ67mm
参考価格 206,800円 (税込)
ピント面は高い解像。ボケはにじんで柔らかい
このレンズは近接撮影時でもピント面はクリアな解像で、それでいて後方ボケのハイライトはにじんで柔らかい。電子先幕シャッターで1/2000秒の高速シャッターを切るとボケが欠けてしまうので、晴天屋外で絞り開放撮影するなら、電子シャッターかメカシャッターを使うのが基本となる。
ボケの繋がりはスムーズで軸上色収差もしっかり補正
横浜関内の猫カフェ Miysisにて。瞳AFの威力で猫の瞳にビシッとピントが合い、近接撮影でもシャープに解像。被写界深度が非常に浅いので鼻や口は大きくぼけるが、繋がりがスムーズなので猫の毛並みは柔らかい。軸上色収差もしっかり補正され、猫のヒゲや瞳の反射にも色付きは出ていない。
フリンジが目立つケースはごく限定的
ピントを合わせた猫のフィギュアの輪郭に緑のフリンジが出ているが、このように輝度差が大きな境界部分には、わずかに軸上色収差による色付きが現れることもある。とはいえ、そうしたケースはかなり限定されていて、前ボケ、後ボケのどちらも周辺まで乱れが少なくスムーズだ。
口径食は多少あるが大きな欠けにはなっていない
スクーターの金属の反射にパープルフリンジはなく、ボケの輪郭の縁取り感もそれほど目立たない。絞り開放の口径食はそれなりにあるが特に大きいわけではなく、グルグルと渦を巻いたようなボケにもなっていない。非常に自然なボケでピントを合わせた主題を浮き立たせてくれる。
後方画面周辺部のボケの崩れは少なめ
遠景解像や点像性能も高く、都市の夜景も絞り開放で安心して撮影できる。レンズ内手ブレ補正機構は非搭載だが、「α7R V」のボディ内手ブレ補正を利用して、1/6秒のスローシャッターでぶれなく撮影できた。ただ、遠景でも手前の屋形船にピントを合わせると後ろの屋形船は微妙に被写界深度から外れ始め、奥の建物は完全にボケている。屋形船の金属の手すりの反射を見ても色にじみやパープルフリンジはなく、後方の微ボケのざわつきも少なめだ。
後編では「SIGMA 50mm F1.4 DG DN | Art」の描写力をチェックします。
※参考価格は記事執筆時点の量販店価格です。