機材レポート

【発売間近】約70コマ / 秒のAF追従高速連写「LUMIX S1II」をサーキットで実写レビュー!

2025年6月19日に発売予定のLUMIXのフラッグシップミラーレス1眼カメラ「S1」シリーズのバリエーションモデル「S1II」。約70コマ / 秒の高速連写AF追従が可能になっているということで、“連写機好き”の筆者としては非常に気になり、実際にどの程度リアルタイム認識AFが追従するのか、約70コマ / 秒の高速連写がどれほどのものなのかを体験するべく、実機をお借りしてサーキットに持ち込みました。

取材を行ったのは、日本で唯一開催される自動車の24時間耐久レース「ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 第3戦 富士24時間レース」。2025年5月31日(土)の15時にスタートし、2025年6月1日(日)15時まで、ドライバーが交代しながら走行し続けるという過酷なレースとなっています。昼間の走行から夜間の走行まで様々なシーンの撮影ができるのも、モータースポーツ写真ファンにとっては楽しいレースで、年に1度のお祭りのようなレースイベントでもあります。

レンズは、望遠ズームレンズ「LUMIX S PRO 70-200mm F2.8 O.I.S」に焦点距離が2倍になるテレコンバーター(DMW-STC20)を装着。コースサイドからであれば、140-400mmの焦点距離であれば十分な迫力でマシンを撮影できます。近距離撮影用にキットレンズの標準ズームレンズ「LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S」もお借りしました。1.4倍のテレコンバーターもお借りしましたが、今回の実写レビューでは使用しませんでした。

「S1II」には、LUMIX初となる新開発の約2,410万画素フルサイズ部分積層型CMOSイメージセンサーが搭載されています。このセンサーと最新の画像処理エンジンにより、前述したように約70コマ / 秒のAF追従の超高速連写が可能に。新たに追加された「H+」モードでは、メカシャッターでも約10コマ / 秒のAF追従連写ができる。この高速連写中のAF追従はいかなるものか、また、シャッター半押しから撮影を開始する「SHプリ連写」機能も搭載されているので、そのあたりも実際に試してみることにします。

まずマシン撮りの撮影設定から。認識する被写体は「車」を選択。さらに被写体の部位を選ぶことができ、「主要部優先(ヘルメットやフロント部分優先)」と「全体(車全体認識)」の2種類が選択可能です。シーンによって使い分けることにします。

続いて連写設定。今回は超高速連写体験ということなので、「SH PRE(超高速70コマ / 秒(プリ連写))」と「SH(超高速70コマ / 秒)」で撮影を行いました。撮影枚数がとんでもないことになるので(実際になりましたが)、「SH PRE」は必要なときのみにしています。「S1II」の「プリ連写」は、0.5秒、1秒、1.5秒から時間設定ができます。どのくらい遡って記録するかは、シチュエーション次第でしょうか。AFモードは「追尾(自動認識)」を選択。普段の流し撮り撮影では、筆者も追従モードを使用しないこともありますが、今回は追従性能を試す目的なのでこの設定を採用しています。
また、記事掲載用にカメラ内の表示を出力するため、「ATOMOS Ninja V」を使用しています。実際のカメラのファインダー内や背面モニターの表示とは比率等が異なることがあることはご了承ください。

土曜日の午前中に行われたピットウォークでは雨はほぼ止んでおり、詰めかけたファンもピットレーンでマシンを見学したり、ドライバーにサインをもらったり、メインストレートではレース・アンバサダーたちを撮影したりと、めいっぱいイベントを楽しむ様子が。
しかし、レースのスタートが近づくにつれ雨雲が空を覆い始め、スタート進行途中から激しい雷雨に。結果、1時間のスタートディレイとなりました。スターティンググリッドに着いたマシンはそのまま。マシンにシートをかぶせるチームもありました。その後、スタート進行が再開されレーススタートとなりました。ゴールの時間は変更されないので、今回は23時間レースとなります。

スタートディレイ中。シートをかけられたマシン ※こちらの撮影はS1IIではありません

24時間レースならではのシチュエーションで実写!

雨の中、長時間にわたるレースがスタートしました。まずは、マシンが正面から向かってくるところが撮影できるコーナーに移動。今回はボディとレンズ合わせて約2,600gほどですので手持ちで撮影しています。コース上のマシンにカメラを向けシャッターを半押しすると、瞬時にマシンを認識し、緑の長方形の枠がマシンをしっかり捉えてフォーカスしています。マシンが減速してコーナーをまわっていくのに合わせてカメラを振っていくと、しっかりと追従していくのがわかります。


「SH PRE」、「SH」で撮影した画像を確認する際、カメラの再生ボタンを押すと「グループ再生」という形で再生されます。連写でシャッターを切った一連をグループとして認識しています。一枚一枚の画像を確認したい場合は、カーソルボタンを下に押すことで「通常再生」に切り替わり、それぞれの写真を個別にチェックできるようになっています。

今度はそのままコーナーをまわったマシンが画角からはみ出すような構図で狙ってみました。コーナーをまわってマシンが加速していく間もAFがしっかり追従しており、マシンが画角から飛び出して前半分になっても、認識は途切れずしっかりと追い続けていることが確認できました。


マシン後方からの撮影でも同様に、画角に全体が入っていなくても車と認識しフォーカスします。その後、後続のマシンが抜きにかかって画角に入ってきても、AFは狙った先頭のマシンに迷わず追従しているのがわかります。


続いて、「SH PRE(プリ連写)」を実感するために、金網を避けるように狙うシーンと、マシンが見えないところから飛び出してくるようなシーンを狙ってみました。
こちらは実際には、最後の4枚目(右下の写真)のように、金網が抜けた瞬間にシャッターを切っています。ただそこでいきなりピントを合わせようとすると、どうしてもシャッターを切るのが遅れます。ここでは連写設定を「SH PRE」の設定にしているため、金網の向こうにマシンが見えている段階からシャッターの半押しで記録が始まっており、AFもきちんとマシンを捉えて追従しています。太い金網の支柱が入っても外れることなく追い続け、金網を抜けたところでマシンにビシッとフォーカスしているのがわかります。



100RからADVANコーナーヘアピンに向かうところでも飛び出しを狙ってみます。マシンが登ってくるためコースサイドにいるとマシンが突然現れるイメージです。実際にシャッターを切り始めたのは、右の写真のような位置ですが、プリ連写により飛び出してくるマシンの瞬間をしっかり捉えているのがわかります。

総合優勝を飾ったST-Xクラス23号車のTKRI松永建設AMG GT3。ドライバーは、DAISUKE選手、片岡龍也選手、奥本隼士選手、中山友貴選手、元嶋佑弥選手。

そして24時間レースの特徴といえば、深夜も夜通しマシンが走行し続けるという点。毎年、ナイトレースのマシン撮影を楽しみにしている方も多いかと思います。コースは照明に照らされているとはいうものの、暗い中をレーススピードでマシンが駆け抜けていきます。さらに今年は霧が発生し、視界不良のためセーフティーカー先導による周回も発生。また明け方にはレース中断もありました。

そんなナイトレースの真っ暗な状況下で、AFがどこまで認識・追従するのかを体験。さすがに暗すぎて追従が難しいシーンもありましたが、暗い中でもマシンの位置をしっかりと捉え、ピントを合わせ続けることができており驚きました。

ISOを落として、あえて暗い中でリアルタイム認識AFが機能するかチェック

次に後方のマシンのライトに前方のマシンが照らし出されるというシーンも狙ってみました。最初は2台のマシンを1台としてまとめて認識していましたが、マシンが横に並んで広がるにつれて、AFの認識枠も長方形に広がり、それに応じて追従します。最終的には、手前のマシンを明確に認識し、そちらにピントがしっかり合っていく動作になっていました。このような光の少ない環境下でも、AF追従が非常に高精度に作動し、撮影を楽しめることが確認できました。


認識力が向上した人物AFを体験!

「S1II」では、人物の瞳・顔の検出に先進的なAI技術を採用しています。これにより、たとえば顔が傾いていたり、顔の一部が隠れている難しいシーンであっても、高精度に瞳・顔にピントを合わせることが可能になっています。実際にどうなのか、実写してみました。

リアルタイム認識AFの被写体は「人物」に設定。「人物」の中でも認識モードが選べるようになっており、「瞳・顔・体」、「瞳・顔」、「アーバンスポーツ」(新搭載)という選択肢があります。「瞳・顔」のモードにすると、より瞳の認識精度が上がります。

(写真左上)ドライバーに傘をさすレース・アンバサダー。完全に顔が横を向いた状態でも、しっかりと瞳を認識しているのがわかります。
(写真右上)フードをかぶり、さらにメガネをかけた状態でも、瞳を高精度に検出。TOYOTA GAZOO ROOKIE Racingでドライバー・MORIZOとしてST-Qクラス32号車をドライブしたトヨタ自動車の豊田章男会長のグリッドウォークでの一コマ。
(写真左下)イベント広場のステージでのライブ中の写真。顔の前で手を交差させ、瞳がやや見えにくい状態でも認識が維持されています。
(写真右下)こちらもステージでのライブ写真。バイオリンを弾く女性の顔に弓がかかっている状態でも、弓の向こうの瞳をしっかり捉え続けています。
こうした様々な実写を行う中で、AIによる瞳・顔認識の精度の高さを実感することができました。

もちろん24時間ずっと撮り続けたわけではなく、シーンを絞って撮影を行いましたが、「SH PRE」「SH」の超高速連写で撮影した結果、マシン撮りの撮影枚数は1万枚を超えました。そんなに撮ったら選ぶのが大変! と思うところですが、しっかり追従して撮れている分、自分がベストだと思う構図を選んでいけば良いんだと感じました。1/70秒の違いはほんのわずかではありますが、高速で流せば違いは大きくなりますし、そのこだわりこそが写真セレクトのおもしろいところだと思います。

モータースポーツファンだけでなく写真・カメラ好きも大満足

今年のスーパー耐久24時間レースは、雷雨による1時間のスタートディレイに始まり、発生した霧による視界不良やクラッシュなどのトラブルにより、赤旗(レース中断)も10回といろんなことが起きるレース展開となりました。とはいえ日が差して汗ばむ気温となる時間帯もあり、観客もレインコートを着たり脱いだり、キャンプ組はテントに避難したりと慌ただしかったと思います。ただそれも24時間という長時間にわたる耐久レースの醍醐味(見る側)。それぞれに楽しむ様子が見られました。
写真・カメラ好きにとっても、スーパー耐久は多くのクラスに分かれているので、様々なタイプのマシン撮りができます。普段の公道を走っているのと変わらない車がサーキットを疾走する姿や、もしかしたら自家用車と同じ車種なんてことも。そして夜間走行も撮れて、今回は撮影しませんでしたが花火の撮影もできるし、レース・アンバサダーやイベントステージでのトークショーやライブも撮影でき、全部撮るも良し、興味のあるものだけを撮るのも良し、自由に撮ってじっくり楽しめるイベントだなと感じました。

LUMIX S1II 主な仕様

有効画素数 2,410万画素
撮像素子 35mmフルサイズCMOSセンサー
マウント Lマウント
ISO感度 ISO 100~51,200 (拡張 ISO 50 / 204,800 /)
シャッター速度 静止画 60~1/8,000秒、動画 1/25~1/16,000秒
ファインダー 0.5型 有機ELライブビューファインダー (倍率 約0.78倍)
画像モニター 3.0型 約184万ドット 液晶モニター (静電容量方式タッチパネル)
記録媒体 CFexpress Type B、SD/SDHC/SDXCメモリーカード (UHS-II対応)
外寸 (幅×高さ×奥行き) 約134.3×102.3×91.8mm (突起部を除く)
質量 約800g (本体、バッテリー、メモリーカードを含む)
付属品 バッテリーパック、バッテリーチャージャー、ショルダーストラップ、ボディキャップ、ホットシューカバー、バッテリーグリップ接点カバー