機材レポート

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウント速攻実写レビュー! キレキレの解像感と単焦点レンズ並みのボケ

世界で初めてズーム全域開放F1.8を実現した「18-35mm F1.8 DC HSM | Art」の革新性を受け継ぎ、進化させたAPS-C対応の標準ズームレンズ「Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art」。発売日が2025年8月7日に決定したキヤノンRFマウントを、鹿野貴司さんがレポートする。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー

一眼レフ用の名レンズがミラーレス向けに進化

シグマにはAPS-Cフォーマットの一眼レフ向けに、「18-35mm F1.8 DC HSM | Art」という名レンズがある。実はまだ現行品で、僕自身もペンタックスKマウントで使っているのだが、これが映像クリエイターたちの間で再評価されているという。

そこで、最新の光学設計を用いてミラーレス向けに仕立て直したのが、今回紹介する「17-40mm F1.8 DC | Art」だ。フルサイズ換算の画角はライカL・ソニーE・富士フイルムXの各マウントで25.5〜60mm相当、キヤノンRFマウントで27.2~64mm相当。13年前に発売された「18-35mm F1.8 DC HSM | Art」に比べ、焦点距離を前後に伸ばしながら、525~560gと3割以上の軽量化を達成している。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
これまでのシグマ製APS-Cフォーマット向けレンズは鏡筒が細く、マウント径が大きいキヤノンRFマウントではバランスが悪かった。本レンズでは鏡筒とマウント部分の太さがほぼ一緒で、見た目もすっきりしている。

 

今回はキヤノンRFマウントをお借りしたのだが、手持ち (私物) のボディはエントリーモデルの「EOS R50」。F1.8という大口径ズームレンズには合わないなぁ……と思っていたのだが、これが意外にもマッチ。僕は普段、携行性重視で同じシグマの「18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」を愛用しているのだが、本レンズくらい太さや重さがあるほうがしっかりと構えやすい。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
右が「17-40mm F1.8 DC | Art」、左が「18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary」。ホールディング性+明るさをとるか、携行性+価格をとるか。

 

インナーズームの操作感も滑らかで、こうした数値に表れない部分にシグマ製品の良さがあるように思う。さらにカメラ側で機能を割り当てられるコントロールリング (キヤノンRFマウント以外では絞りリング) と、縦横2つのAFLボタンも装備。コントロールリングのクリック感も実に素晴らしい。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
ロゴや指標は2025年からの新しいフォントを採用。一見以前と変わらないArtラインを示す「A」のマークも、左右で太さが異なり、てっぺんにセリフ (ヒゲ) があるのがわかる。その右にあるのがコントロールリングだ。

F1.8の明るさは大きなアドバンテージ

今回は街角のスナップから家族旅行までさまざまな状況で撮ってみたが、F1.8の明るさはやはり大きなアドバンテージだと感じた。一眼レフのようにファインダーが明るくなるわけではないが、EVFで見える像はクリアで立体的。フルサイズに換算すればF2.5相当のボケがあり、機動力と表現力、そして撮る楽しみが高い次元で融合している。

広角端や望遠端がもう少しあれば……と思うこともなくはないが、28mm・35mm・50mmの単焦点レンズ3本+αを1本にまとめたと考えれば納得がいく。最短撮影距離も28cmと十分短く、シグマならではの高い耐逆光性や、HLAによる高速オートフォーカスも実現している。実売価格は約15万円とAPS-Cフォーマットの標準ズームとしては高価だが、その価値は十分あるレンズだと思う。

実写作例

単焦点レンズに匹敵するボケ味

やや背景がうるさい状況だが、二線ボケもなく心地よいスナップになった。周辺でわずかに口径食が見られるが、フィルター径67mmのズームレンズとしては優秀だ。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
キヤノン EOS R50 シグマ 17-40mm F1.8 DC | Art (38mmで撮影) 絞り優先オート F1.8 1/1000秒 ISO100 WB : オート

マクロ域ではふわっと柔らかい描写に

最短撮影距離から10cmほど引いたところで撮影。マクロ域ではやや柔らかな描写となるのは、シグマ製レンズによく見られる特徴だ。もちろん1~2段絞ればキリッとシャープになる。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
キヤノン EOS R50 シグマ 17-40mm F1.8 DC | Art (40mmで撮影) 絞り優先オート F1.8 1/400秒 ISO100 WB : オート

スナップの常用レンズとして最適

ズーム倍率こそ低いものの、実用的な画角をカバー。散歩や街歩き、旅行の常用レンズとしてぴったりだと思う。コントラストの高い場面だが、ハイライトからシャドーまで階調豊かに再現されている。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
キヤノン EOS R50 シグマ 17-40mm F1.8 DC | Art (40mmで撮影) 絞り優先オート F4 1/500秒 +0.7補正 ISO100 WB : オート

さすがArtラインというべき解像力

絞り開放からシャープな描写だが、絞ればさらに解像度を増す。金属やガラスの質感描写も含めて、さすがシグマのArtラインといった写りを見せてくれた。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
キヤノン EOS R50 シグマ 17-40mm F1.8 DC | Art (17mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/1000秒 ISO100 WB : オート

F1.8で暗所でも高速・高精度なAFを実現

明るいレンズはピントの追従性も高くなり、夜のスナップも楽しくなる。前後をボカしつつ流し撮りをしてみた。手ブレ補正が内蔵されている上位機種であれば、もっといろいろな場面が撮れるだろうな……とも思った。

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー
キヤノン EOS R50 シグマ 17-40mm F1.8 DC | Art (39mmで撮影) シャッター優先オート 1/30秒 F2 ISO200 WB : オート

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art 主な仕様

Sigma 17-40mm F1.8 DC | Art キヤノンRFマウントレビュー

発売日
2025年8月7日 (キヤノンRFマウント)
2025年7月10日 (ソニーEマウント、富士フイルムXマウント、Lマウント)
参考価格 148,500円 (税込)

対応マウント キヤノンRFマウント、ソニーEマウント、富士フイルムXマウント、Lマウント
対応撮像画面サイズ APS-C
焦点距離 17〜40mm (35mm判換算 25.5〜60mm相当)
レンズ構成 11群17枚 (SLDガラス4枚、非球面レンズ4枚)
フォーカス AF (オートフォーカス)
絞り F1.8〜F16
絞り羽根 11枚 (円形絞り)
最短撮影距離 28cm
フィルター径 67mm
最大径×長さ φ72.9×115.9mm (RFマウント)
質量 約560g (RFマウント)
付属品 レンズフード LH728-02、フロントキャップ LCF-67 IV、リアキャップ LCR III、ポーチ