360°カメラを知っているだろうか? 通常の写真や動画がある一定方向の世界を切り取り記録するのに対して、前後2つのレンズにより目に映る全ての方向を撮影することができるカメラだ。VRや映画、ドラマなどでその映像を見ることも増えている。
2025年の夏に、DJIから360°アクションカメラ「Osmo 360」が発売された。いつか使ってみたいとチャンスを狙っていたので、ちょうど計画中だった北海道バイクツーリングの旅の相棒となってもらった。
どんな映像が撮れる?
360°を全て撮れるカメラで何を撮るのか? 大きくは2パターンあり、目の前に展開される風景を撮るか、そこに身を置く自分自身を写すことが、主な目的となるだろう。その全てを記録できる特性上、アクションカメラ以上にバイクなどの乗り物やスポーツと相性がいい。



フレーミングで「アステロイド」を選択すると、はるか遠くから見下ろしたような映像も作ることができる。
いろいろなシーンを撮ってみた
「Osmo 360」は、360°撮影専用に新たに設計された1/1.1型スクエアCMOSセンサーにより最大8K/50pの美しい動画を記録できる。解像度が大きいから後処理の自由度も高い。前後のレンズで撮影した映像を合成しているわけだが、境界などはまったくわからないと言っていい。主にバイクに搭載して撮影したがブレなどもよく補正され、気になることはなかった。
操作は基本的にはRECボタンを押すだけなので簡単。後からフレーミングを自由に変更できるから、あまり構図などを気にせず、正面を向けて撮りたいシーンを見つけたらシャッターを押せばいい。とはいえ高さでだいぶ絵が変わってくるので、高さ方向の位置は慎重に選びたい。
電源オフ状態からでも、一度設定しておけば録画ボタンを1回押すだけで撮影を始めることができるのは、アクションカメラらしく便利。撮影モードは大きく、「360°」と「シングルレンズ」に分かれる。360°の動画は「360°」の「パノラマ動画」で撮影する。ほかに「パノラマ写真」「スーパーナイト」「セルフィー」「ボルテックス」「タイムラプス」を撮影できる。
通常のタイムラプス動画はカメラを固定し記録する映像だが、360°すべてが記録されているので、後から動画に自由に変化を付けることができる。
今回は夜間撮影に特化したスーパーナイトモードでは撮影できなかったのだが、都市夜景くらいであれば全く問題ない。
夕方から夜にかけての色も適切で、見た目に近く程よく鮮やかな映像が撮れる。
最北端の宗谷岬に到着寸前、突然、道路を歩く鹿に遭遇した。思わぬハプニングを拾い出せるのも360°撮影のメリットのひとつ。

1.2億画素の360°写真や通常の動画も撮影可能
360°撮影には前後のレンズを使うわけだが、1つのレンズだけを使ったシングルレンズモードでも撮影が可能。ただし、こちらは普通のカメラ同様のMP4フラット動画となるから、後で画角などを変更することはできない。使用するレンズはボタン一つですぐ切り替えが可能だ。撮影中でもレンズの切り替えが瞬時にできる。
また、1.2億画素 (15520×7760) の静止画撮影もできる。VRのような特殊なJPG画像となるが、こちらもソフト上では後から周囲をグルっと見渡し、書き出すことができるので、特に動きのない場所なら動画の代わりに静止画を撮っておけば十分な場合もあるだろう。


「Osmo 360」には105GBのストレージが内蔵されているので、例えば8K/30pなら最大100分の収録が可能。microSDスロットも装備されており、内蔵ストレージと切り替えて記録できる。
動画サイズが大きいので、大容量のmicroSDカードを購入しておいた方が安心だ。推奨microSDカードがDJIのWEBサイトに記載されている。ちなみに、手持ちの高速なmicroSDカードでも問題なく記録できた。

旅の思い出を臨場感たっぷりに記録できた
「Osmo 360」は最大10mの水中撮影が可能なので。防水性能にも問題はない。レシーバーが内蔵されているので、アクションカメラ「Osmo Action」シリーズと同様に「DJI Mic Mini」のワイヤレス使用もできる。ちなみにシャッターボタンを押さなくても、顔の前に手のひらをかざし、開くというジャスチャーで撮影を開始することも可能だ (ただしヘルメットをかぶっていると反応しないようだ)。
「Osmo 360」はとにかく全方位を撮影しているので、撮影中はストレスがない。何より後で確認すると、普通の動画以上に臨場感があり、その時の記憶が昨日ののように蘇ってくる。旅の記録には、まさに最適なカメラと言える。
「Osmo 360」で撮った北海道ツーリーングの旅
なお、360°カメラを使いこなすにはアクセサリーが重要だ。ソフト、アプリとともに後編で紹介する。
〈文・撮影〉稲葉利二