この9月に一挙5本ものニューレンズを投入してきたシグマ。中でも注目は、20mmスタートの10倍高倍率ズームレンズ「20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporary」だ。この1本で超望遠域から望遠域まで幅広くカバーする初のレンズ、はたしてその実写性能は? 今回はその画質面を中心にダテジュンがレポート!

唯一無二! 20mmから200mmまでの10倍ズーム
シグマから、広角20mmスタートの高倍率ズームが発売された。フルサイズ対応で20mmスタートの光学10倍ズームは世界初。しかも、焦点距離28-85mm域ではハーフマクロ撮影も可能で、「一般的な標準ズームに比べ、高倍率ズームは寄れない」という弱点も克服した画期的な高倍率ズームだ。
開放F値はF3.5-6.3で、高倍率ズームとしては標準的。「ソニー α7R V」に装着して開放F値の変化を調べてみると、開放F3.5の明るさはワイド端20mm時のみで、21mmでF4.0、28mmでF4.5、38mmでF5.0、50mmでF5.6、83mmでF6.3という結果に。
また、最短撮影距離はワイド端25cm、テレ端は64cmだが、前述したように焦点距離28-85mm域ではハーフマクロ撮影も可能。特に、焦点距離28mm時の最短撮影距離はわずか16.5cmで、レンズ前約2cmまで被写体に近寄れるほか、焦点距離85mm時も25cmまで寄れるのが強みだ。

■他社高倍率レンズとの外観比較
カメラメーカーの高倍率ズームはレンズISを搭載しているのに対し、「20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporary」はレンズISは非搭載。それだけ光学系も少なくて済むので、20mmスタートの10倍ズームという攻めたスペックの割に、標準的なサイズ感、重さに収まっている。

さすがに大きい、20mmから200mmの画角変化
ワイド端が20mmと24mmとではどれくらいの差があるか? 後ろに下がって撮影できるシチュエーションでは、ワイド端24mmスタートでも対応できないことはないが、室内など狭い場所や撮影ポジションが限られている場合、やはり20mmの画角の広さは魅力的だ。
東京・新宿の東京都議会議事堂と高層ビル群を街路から撮影してみると、20mmなら都庁前広場まで入れた構図で撮影できるのに対し、24mmで都庁前広場まで入れるのは無理なので、議事堂と高層ビル群のみの構図で撮影するしかない。標準ズームや高倍率ズームのなかには28mmスタートの製品もあるが、この場所から28mmで撮影すると、高層ビルの上部も少し切れてしまって窮屈な構図になってしまう。
超広角ズームに付け換えなくても20mmの画角で撮影できるのは非常に便利で、通常の標準ズームや高倍率ズームとは違った作画がこのレンズ1本で狙えるのは実に楽しく快適だ。
■20mm
■24mm
■28mm
■70mm
■200mm
撮影データ (共通)
ソニー α7R V シグマ 20-200mm F3.5-5.6 DG | Contemporary 絞り優先オート 絞り開放 (F3.5〜6.3) 1/2000秒〜1/500秒 ISO100 WB : 晴天
レンズ補正のON/OFFが可能
気になるのは画質だ。20mmスタートというこれまでにないスペックだけに、画面中央はもちろん、周辺部まで “絞り開放で” ちゃんと解像するのか? が気になる人も多いだろう。ミラーレス用交換レンズのなかには、歪曲収差や倍率色収差、周辺光量をデジタル補正を前提とすることで、光学的に補正するよりも小型軽量化や高倍率化を図っている製品も少なくなく、特に歪曲収差のデジタル補正をOFFにできない製品もある。
しかし「20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporary」は、歪曲収差を含むカメラのレンズ収差補正をすべてOFFにできる。もちろん、レンズ補正をOFFにすれば歪曲収差や周辺減光が目立つものの、それでも一眼レフ用高倍率ズーム並みの収差まで光学的に追い込んでいる。そのため、ワイド側周辺部まで、ピントが合っている領域は安定した解像が得られる。
芝目や細かい枝や葉っぱが周辺部にあっても、像が流れたりブレたような不快な描写になりにくい。ただ、被写界深度から外れた部分は、コマ収差や口径食、非球面レンズの影響で微ボケが△になったり縁取り感が目立つこともある。だから必要に応じて絞って微ボケのうるささを抑える工夫は必要だが、近接撮影や中望遠域など被写界深度が浅くなり、ある程度ボケが大きくなるシチュエーションでは、口径食もそれほど目立たず、ボケもキレイだ。
また、テレ側では被写界深度が浅くなる分、一見、ピントが合っているように見えても、実は微小なピンボケ状態でピークの解像が得られていないということもある。動体はAF-Cで撮影するしかないが、静止した被写体であればAF-Sにして、必要に応じてライブビュー拡大を併用して、狙った箇所に確実にピントを合わせ、ブレずに撮影できれば、高画素機と組み合わせても不満を感じにくい解像が得られるはずだ。
■レンズ補正OFF

■レンズ補正ON

口径食&パープルフリンジをチェック
絞り開放では、レンズ補正ONでも周辺光量低下がそこそこ目立つが、口径食はそれほど目立たない。もちろん、画面周辺部では、葉っぱや木漏れ日などの玉ボケがレモン型に欠けるが、背景が渦を巻いたようなぐるぐるボケにはならず、玉ボケの縁取りや輪線模様はほとんど気にならない。
テレ側の解像もまずまず安定していて、金属の鏡面反射にもパープルフリンジが浮くことは少ない。だが、わずかではあるが軸上色収差と倍率色収差が残っているので、高コントラスト部分の微ボケに色づきが出たり、木漏れ日が露出オーバーになった部分の輪郭にパープルフリンジが浮くこともある。
■口径食チェック

■パープルフリンジチェック


まとめ
個人的に、超広角や超望遠レンズをメインに使うことが多く、24-70mmクラスの標準ズームにはあまり興味がなかったりする。なので、ふだんから24-200mmや24-240mmといったフルサイズ対応高倍率ズームを携行して、広角~標準~中望遠域の画角をカバーしている。それだけに、20mmスタートの高倍率ズームは “待ってました!” の1本で、一般的な高倍率ズームの弱点である “寄れない問題” も解決。それどころか、28-85mm域ではハーフマクロ撮影まで可能なのはバンバンザイだ。
もちろん、F2.8クラスの標準ズームや望遠ズームのほうがピークの解像は際立っていて、被写界深度の浅さを生かして主被写体を背景から浮き立たせることもできるので、そうした描写に太刀打ちできるわけではないが、24-105mm F4クラスの標準ズームよりも周辺解像の安定性に優れ、最短撮影距離も短く、それでいてカバーする焦点距離域も広いので、本当にこのズーム1本でさまざまな作画が楽しめる。
Sigma 20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporary 主な仕様
対応マウント ソニーEマウント、Lマウント
対応撮像画面サイズ フルサイズ
焦点距離 20〜200mm
開放絞り F3.5〜6.3
最小絞り F22〜F40
画角 94.5°〜12.3°
レンズ構成 14群18枚 (FLDガラス1枚、SLDガラス3枚、非球面レンズ4枚)
絞り羽根枚数 9枚 (円形絞り)
最短撮影距離 焦点距離28mm時 16.5cm、ワイド端 25cm、テレ端 65cm
最大撮影倍率 1:2 (焦点距離28〜85mm時)
フィルター径 72mm
最大径×長さ Eマウント φ77.2×117.5mm、Lマウント φ77.2×115.5mm
質量 Eマウント 540g、Lマウント 550g
※参考価格は記事公開時点の量販店価格です。