機材レポート

発売前に速攻実写レビュー!「FUJIFILM X-T30 III」の操作性は? 描写力は?

富士フイルムから、小型軽量のミラーレスカメラ「X-T30 III」が新登場。同時に発表された標準ズームレンズ「XC13-33mmF3.5-6.3 OIS」が付属するレンズキットは、2025年12月に発売される。発売を前に、藤井智弘さんが実機をチェック! スナップ撮影で操作性や描写力を検証した。

X-T30 III 実写レビュー

フィルムシミュレーションの切り替えが簡単になった

「X-T30 III」は、小型軽量ながら一眼レフライクなデザインやシャッターダイヤルを持ちアナログ感覚の操作が楽しめる「X-T30 II」の後継機。デザインや操作性は踏襲し、天面にはフィルムシミュレーションダイヤルを新搭載。「X-T50」や「X-M5」などと同様に、フィルムシミュレーションを瞬時に切り替え可能だ。さらにFS1〜FS3では、自分好みにカスタマイズしたフィルムシミュレーションの登録もできる。画作りにこだわる富士フイルムらしい仕様だ。

FUJIFILM X-T30 III

クラシックネガで赤い車を印象的に

「X-T30 II」ではドライブだった天面のダイヤルが、「X-T30 III」ではフィルムシミュレーションになり、手軽に富士フイルムらしい色が楽しめるようになった。ここではクラシックネガに設定。カラークローム・エフェクトを弱にして、車の赤を強調した。

X-T30 III 実写レビュー
富士フイルム X-T30 III XC13-33mmF3.5-6.3 OIS 絞り優先オート F8 1/40秒 ISO160 WB : オート

コンパクトながら操作性は良好

手にすると、EVFを搭載したAPS-Cサイズ機とは思えないほど小さくて軽い。重さはバッテリーとSDカードを含んでもわずか約378gしかない。グリップは小さいが指がかりが良く、安定したホールディングができる。試しにやや大柄の望遠ズームレンズを装着してみたが、しっかり握ることができた。

シャッターダイヤル以外にも前後にコマンドダイヤルを装備し、押し込むとダイヤルの機能の変更が可能。カスタマイズもできる。シンプルな操作で多機能をコントロールできる。ただし気付かず押し込んでしまい、ダイヤルの機能が意図せず変更されたことがたびたびあった。もう少し押し込みにメリハリがあると、さらに使いやすくなると感じた。

日常的に持ち歩いて瞬間を写し止める

前日に降った雨のシミと、歩く人の影を意識した。「X-T30 III」と「XC13-33mmF3.5-6.3 OIS」の組み合わせは600gに満たない軽量。いつでも持ち歩いて、瞬間にすぐ反応できる。スナップを軽快に撮りたい人だけでなく、重さが気になる女性も注目だ。

X-T30 III 実写レビュー
富士フイルム X-T30 III XC13-33mmF3.5-6.3 OIS 絞り優先オート F8 1/350秒 ISO160 WB : オート

ビギナーからベテランまで楽しめるカメラ

撮像素子は2610万画素を持つ「X-T30 II」の第4世代 X-Trance CMOS 4センサーを踏襲。しかし、プロセッサーは最新の第5世代 X-Processor 5だ。X-Trance CMOS 4とX-Processor 5の組み合わせは、「X-S20」や「X-M5」と同じ。20種類のフィルムシミュレーションや6種類の被写体検出機能、6K/30pや4K/60p、4:2:2 10bitの動画撮影に対応している。

実際に撮影すると、レスポンスの良さが感じられた。AFがスピーディーに駆動し、被写体検出機能も優秀。画面内で被写体が小さくても検出する確率が高く、快適な撮影ができた。撮像素子こそ最新の4000万画素ではなく、「X-T30 II」と同じ2610万画素だが、おかげで扱いやすい画像サイズ。もちろんA3ノビのプリントも余裕で耐えられる解像力が得られる。

スペックは「X-M5」に近いものの、EVFやストロボ、シャッターダイヤルを搭載することで、より写真撮影に向いた仕上がり。ビギナーからベテランまで楽しめるカメラだ。手軽に設定できるようになったフィルムシミュレーションやカラークロームエフェクトなどで、富士フイルムならではの個性的な表現を狙いたい。

とっさのシャッターチャンスを逃さない

カラスが上空を通過した瞬間、とっさに「X-T30 III」を構えてシャッターを切った。小型軽量でレスポンスが優れているおかげで確実に捉えることができた。「XC13-33mmF3.5-6.3 OIS」も解像力が高く、建物や木の葉をしっかり解像している。

X-T30 III 実写レビュー
富士フイルム X-T30 III XC13-33mmF3.5-6.3 OIS 絞り優先オート F8 1/250秒 ISO160 WB : オート

走り続ける電車を確実にキャッチ

被写体検出を「鉄道」に設定し、向かってくる電車を狙った。AFはコンティニュアス。車体がまだ遠くにいる状態から検出し、確実に追い続けた。被写体検出を活用した撮影も積極的に行うと、「X-T30 III」がより楽しめるだろう。

X-T30 III 実写レビュー
富士フイルム X-T30 III XC13-33mmF3.5-6.3 OIS シャッタースピード優先オート 1/1000秒 F6.3 ISO800 WB : オート

シリーズ最広角の標準ズームレンズも新登場

超広角から標準までカバーする「XC13-33mmF3.5-6.3 OIS」も同時に登場した。換算20〜50mm相当になり、XCシリーズ最広角となる。わずか147gと軽量ながら、手ブレ補正を搭載。「X-T30 III」とのバランスも良く、軽快な撮影が楽しめた。描写も絞り開放からズーム全域で安定している。風景やスナップはもちろん、超広角域を生かしてVlog用にも最適だ。

遠近感とボケ味が被写体を際立たせる

「XC13-33mmF3.5-6.3 OIS」の最短撮影距離は0.2m。レストランのテラス席にかけられていた、金属のジョウロのオブジェに近づき、ワイド端13mm側で撮影。超広角レンズらしい遠近感と、F3.5のボケを生かした写真になった。金属の質感再現も良好だ。

X-T30 III 実写レビュー
富士フイルム X-T30 III XC13-33mmF3.5-6.3 OIS 絞り優先オート F3.5 1/280秒 ISO160 WB : オート