機材レポート

超速実写チェック! フルサイズミラーレス「キヤノン EOS R6 Mark III」の画質を前モデルと比較検証

キヤノンからフルサイズミラーレスカメラ「EOS R6 Mark III」が発表された。スタンダードクラス「6」の最新版は果たしてどのような進化を遂げたのか? その撮り味をさっそくダテジュンが実写。2回に分けてレポートする。今回は画質性能チェックを中心にお届けする。

EOS R6 Mark III 実写チェック
[発売日] 2025年11月21日 [参考価格] ボディ 429,000円、RF24-105 IS STM レンズキット 478,500円、RF24-105 L IS USM レンズキット 583,000円 (いずれも税込)
キヤノン EOS R6 Mark III 実写チェック
  1. 【前編】画質性能チェック
  2. 【後編】AF・連写性能チェック (後日公開予定)

画質・AF&連写・動画が向上し「EOS R5 Mark II」ジュニア的な“スーパースタンダード”へと進化した「EOS R6 Mark III」

キヤノン「EOS R6 Mark III」が登場した。従来の「EOS R6 Mark II」からの主な進化点は以下のとおり。

  • 有効画素数が約2420万画素から約3250万画素に。
  • バッファメモリ強化で連続撮影コマ数がほぼ倍に。
  • 記録メディアはSDXC ×2からCFexpress Type B / SDXCに。
  • 「プリ連続撮影」機能を搭載。
  • ボディ内手ブレ補正が最大中央8.5段に進化 (周辺協調制御にも対応)。
  • 7Kオープンゲートや4K 120P動画に対応。
  • ピクチャースタイルに加え、カラーフィルターとカスタムピクチャーも搭載 (主に動画向け)。

これ以外にも動画関連の機能がかなり強化されているが、上位機種の「EOS R5 Mark II」のように、積層センサーやDIGIC Acceleratorは非採用。最高連写スピードもメカ12コマ/秒、電子40コマ/秒で、認識できる被写体の種類も従来の「EOS R6 Mark II」と同じ。

とはいえ、画素数が約1.34倍に増えているにもかかわらず、従来と連写スピードは変わらず、高感度画質もほとんど犠牲になっていない。劇的な進化とまではいえないが、必要とされている性能や機能を追加しつつ、従来の「EOS R6 Mark II」の操作感を継承した正常進化モデルといえるだろう。

EOS R6 Mark III 実写チェック
EOS R6 Mark III・RF24-105 L IS USM レンズキット

 

ボディ外観は「EOS R6 Mark II」とほぼ同じ。ネームプレートの機種名が「Mark III」になっているのと、RATEボタンの下に白色でCOLORの印字がある以外、外観的な違いはない。しかしメディアスロットを開ければ、CFexpress Type Bスロットがあり、側面の端子カバーを開けるとHDMI端子がType D (マイクロHDMI) からType Aになっている。また実際に「EOS R6 Mark III」を手にしてみると、CFexpress Type B対応のためか、多少グリップが太めになっていて、「EOS R6 Mark II」ユーザーならすぐに違いを感じ取れると思う。

EOS R6 Mark III 実写チェック

EOS R6 Mark III 実写チェック

EOS R6 Mark III 実写チェック

画質Check① 3250万画素にアップした画質性能を確かめる

「EOS R6 Mark II」の記録画素数は6000×4000ピクセルで2400万画素。一方、「EOS R6 Mark III」は6960×4640ピクセルで3230万画素。面積比なら約1.34倍の差だが、各辺の長さの比率は約1.16倍で、1割ちょっとの増。実際にMark IIとMark IIIで同じシーンを同じレンズで同条件で撮影した画像をチェックしても、Mark IIIで撮影したほうがピクセル等倍で並べたときにほんの少しだけ大きく見える、といった感じで、4500万画素の「EOS R5 Mark II」のような高精細描写が得られた感動はない。

それでも両機種で撮影した画像をじっくりチェックしていくと、「EOS R6 Mark III」で撮影したカットのほうが、コキア畑の奥に見える看板の文字がほんの少しだけ細かな部分まで解像していて、コキアやススキの茎も少しだけ分離して見えるので、3250万画素化がまったく無意味というわけではない。とはいえ過大な期待も禁物だ。

■EOS R6 Mark III

EOS R6 Mark III 実写チェック

■EOS R6 Mark II

EOS R6 Mark III 実写チェック

■部分拡大

EOS R6 Mark III 実写チェック

EOS R6 Mark III 実写チェック
撮影データ (共通) RF28-70mm F2.8 IS STM 絞り優先オート F11 1/80秒 −0.3補正 ISO100 WB : 太陽光 40mm域

画質Check② 画素数が増えたが高感度画質は低下していない?

マガモのはく製を撮影して、羽根の細部がどこまで再現 (解像) できるかを感度別にチェック。高感度になるほどノイズリダクションの副作用が大きくなり、羽根の細部 (特にコントラストが低めな領域) がベタッと潰れがちになってくる。最低感度でどこまで解像しているか、そして、高感度でその解像がどこまで保たれているかを見ることで、単なる高感度ノイズの少なさだけでなく、ディテールまで残せる真の高感度性能を見極められる。

EOS R6 Mark III 実写チェック
赤枠部分を拡大して比較

 

最低感度のISO100は、両機種の解像性能が最も発揮されていて、2420万画素の「EOS R6 Mark II」は、羽根の一部に偽色 (色モアレ) が浮いているのに対し、3250万画素の「EOS R6 Mark III」は輝度モアレはあるものの偽色はなし。「EOS R6 Mark III」のほうがより細かな部分まで解像できている証だ。

■ISO100

EOS R6 Mark III 実写チェック

 

ISO1600になると両機種とも羽根のエッジのコントラストが低下してきて、解像の際立ち感は鈍化してくるが、羽根の細部のつぶれはごくわずか。ISO6400でも羽根の細部の描写はまずまず保たれている。

■ISO6400

EOS R6 Mark III 実写チェック

 

ISO12800になると、羽根の細部のコントラストがかなり低下。画素数で優る「EOS R6 Mark III」のほうが比較的高コントラストの羽根のエッジが残っているので、その分、解像感は高めだ。ISO25600になると、両機種とも羽根の細部がほとんど潰れベタッとした描写になるが、ノイズはよく抑えられ、細部の描写をそこまで求めない被写体なら実用になる画質だ。

■ISO25600

EOS R6 Mark III 実写チェック

 

ISO51200でも両機種とも高感度ノイズのザラザラ感は少ないが、もはや羽根の1枚1枚が分離せずベタッと潰れてしまっている。ISO51200以上は「EOS R6 Mark II」のほうが画質的に有利とはいえるが、常用できる画質かといえば否。常用できる画質の範囲内では、「EOS R6 Mark II」と「EOS R6 Mark III」の高感度画質はほぼ同等か、解像で優る分、「EOS R6 Mark III」が有利かもしれない。

■ISO51200

EOS R6 Mark III 実写チェック

画質Check③ 協調補正で中央8.5段、周辺7.5段の手ブレ補正

従来の「EOS R6 Mark II」は、ボディ内手ブレ補正の協調制御で最大8.0段の手ブレ補正効果が期待できるが、「EOS R6 Mark III」は、協調補正で中央8.5段、周辺7.5段とさらに手ブレ補正効果が高まっている。画素数が増えたことで、ピクセル等倍でチェックしたときに微ブレの影響がより目立つので、手ブレ補正機構の強化により、3250万画素の解像性能を引き出しやすくなっている。

どこまで手持ちのスローシャッター撮影に耐えられるのか「RF24-240mm F4-6.3 IS USM」で試してみたが、70mm域で1/2秒前後のスローシャッターでもほぼブレずに撮影できた。動きのある被写体は被写体ブレしてしまうので感度を上げて対応するしかないが、静止した夕景・暮景なら感度を抑えてスローシャッター撮影することで、高感度ノイズリダクションによる画質低下を抑えられ、水の流れをフワッと雲のように写すことも手持ち撮影で可能だ。

また、周辺協調制御にも対応。「RF10-20mm F4 L IS STM」などの対応レンズ装着時、画面中心部だけでなく、広角特有の画面周辺のブレを抑える制御を行なうことで、画面全体でブレができるだけ目立たないようにできる機能だ。

EOS R6 Mark III 実写チェック

EOS R6 Mark III 実写チェック
キヤノン EOS R6 Mark III RF24-240mm F4-6.3 IS USM 絞り優先オート F5.6 1秒 +0.3補正 ISO1600 WB : 日陰 (A3、M6) 70mm域

画質Check④ 静止画撮影でも活用できる「カラーフィルター」

EOSには「ピクチャースタイル」という画作り機能が搭載されているが、「EOS R6 Mark III」には、ピクチャースタイルに加え、カラーフィルターとカスタムピクチャーという画作り機能を追加。この3つの画作り機能を合わせて「カラーモード」と呼び、撮影時にボディ左肩のRATEボタン (COLORボタン) を押すことで、3種類のカラーモードを切り換えられるようになっている。

ちなみに、カスタムピクチャーは、CINEMA EOSに搭載されている動画用の画作り機能。これに対してカラーフィルターは、カラーグレーディングという動画編集時の色・階調調整を行わなくても、もっと手軽にクリエイティブな色や階調を楽しめる機能。どちらも基本的には動画用の画作り機能だが、カラーフィルターは静止画撮影 (RAW記録時は設定不可) でも使え、色調をアンバーやブルー、グリーン系に変えたり、ティール・アンド・オレンジなど流行りの画作りに仕上げることもできる。

ただ、従来のピクチャースタイルもカラーモードに統合されたので、メニューやCOLORボタンでピクチャースタイルを変更する際は、ピクチャースタイルかカラーモードを選択する画面が表示されてしまう。ダイレクトにピクチャースタイルを変更したい場合は、Q (クイック設定) ボタン経由か、操作ボタンカスタマイズでCOLOR (RATE) ボタンへの機能割り当てを「ピクチャースタイル」に変更しよう。

■カラーフィルター「StoryBlue」で撮影

マットなトーンを基調として全体的に青色の効果をかけるフィルター。草の黄色みが抑えられ、日陰の青っぽさが強調されている。

EOS R6 Mark III 実写チェック
キヤノン EOS R6 Mark III RF70-200mm F2.8L IS USM Z 絞り優先オート F2.8 1/250秒 +0.7補正 ISO400 WB : 太陽光 189mm域

■カラーフィルター「Clear Story Teal & Orange」で撮影

マットなトーンを基調として、暗部は青緑色、明部は暖色の効果をかけるフィルター。ホワイトバランス調整では出せない色相がねじれた独特の色再現で、情感に訴える画作りが楽しめる。

EOS R6 Mark III 実写チェック
キヤノン EOS R6 Mark III RF70-200mm F2.8L IS USM Z 絞り優先オート F2.8 1/200秒 +0.7補正 ISO400 WB : 太陽光 200mm域

画質性能まとめ

従来の「EOS R6 Mark II」に比べ、画素数が約1.34倍の3250万画素に増えているので、自然風景などをより高精細に描写できるのでは? という期待も高まるが、実際にはそこまで圧倒的な差はなく、解像限界付近で偽色 (色モアレ) が少なく、ISO3200~6400前後の高感度域で多少エッジが残りやすくなったかな、というのが正直な印象。ただ、逆に画素数が増えても、連写スピードは低下せず、連続撮影コマ数はむしろ増えているので、価格が高くなったこと以外のマイナス要素はなしだ。

カラーフィルターが使えるのはJPEG撮影のみで、どちらかといえば動画撮影に威力を発揮する機能だが、それでも簡単に写真の雰囲気を変えられるのはおもしろい。ただ、RAW記録時も適用できて、カメラ内RAW現像でいろいろカラーフィルターを変えられるようになればもっと活用しがいがあると思う。

カリカリし過ぎない自然な解像感

2400万画素クラスだと、輪郭強調が少し強めの画作りで解像感を高めている機種もあるが、「EOS R6 Mark III」は3250万画素の細部描写力を生かし、カリカリし過ぎない自然な解像感が得られるように思う。ススキの穂や木肌、葉っぱの細部まで自然に解像しているのは好印象だ。

EOS R6 Mark III 実写チェック
キヤノン EOS R6 Mark III RF70-200mm F2.8L IS USM Z 絞り優先オート F2.8 1/640秒 +0.3補正 ISO100 WB : 太陽光 200mm域

次回はAF・連写性能をチェック! 先取りひと言インプレ

次回はAFや連写について取り上げるが、プリ撮影が搭載されたことで決定的瞬間を逃さず撮影できるようになり、連続撮影可能コマ数も増えた点で非常に快適になった。

被写体認識AF&トラッキングは、カタログスペック的には「EOS R6 Mark II」と同じだが、被写体の頭部を追い続けるトラッキングの粘りが良くなった感じで、これまでになく、鳥類の頭部にピントが合う率が高かった。また、気になるローリングシャッター歪みについても、恒例の扇風機チェックをしているので、後編もお楽しみに!

AF・連写check!

「EOS R6 Mark III」が手元に届いてすぐに近くの川に出撃。川面を見ればわかるように、小雨が降っているという悪条件だったが、飛び立ったコサギの頭部にビシッとピントが来ているのに驚いた。

EOS R6 Mark III 実写チェック
キヤノン EOS R6 Mark III RF200-800mm F6.3-9 IS USM シャッター優先オート F10 1/1000秒 −0.3補正 ISO1000 WB : オート 371mm域

新レンズ「RF45mm F1.2 STM」もチェック! 先取りひと言インプレ

EOS R6 Mark III 実写チェック
[発売日] 2025年11月下旬予定 [参考価格] 66,000円 (税込)

非Lレンズながら開放F1.2で実売66,000円前後 (税込) という前代未聞のコスパ。質量も約346gと軽量で、常時携帯しても苦にならない携行性、機動力も魅力的だ。

絞り開放の描写が、ほかのRFレンズと比較してやわらかいのが特徴だが、一眼レフ用の大口径レンズのような暴れ馬ではなく、周辺解像の乱れは穏やかで、色収差もそれほど目立たない。いい意味でクセがないので、誰でも気楽に開放F1.2ならではの大きなボケを楽しめる。

ちなみに晴天屋外でF1.2開放で撮影するには、1/8000秒よりも速いシャッタースピードにする必要がある。その点「EOS R6 Mark III」は、電子シャッターで最高1/16000秒まで設定できるので (シャッター優先オートおよびマニュアル露出時)、よほど明るいシーンでもない限り、NDフィルターを使わず、F1.2開放で撮影できるのが強みだ。

開放F1.2ならではの大きなボケが楽しめる

これが45mm F1.2開放のボケ。望遠や中望遠レンズほど大ボケはしないが、ピント面以外をフワッとボカし、主要被写体を浮き立たすことができる。前後のボケには、軸上色収差による色づきがわずかにあるが、近接撮影でもピント面のニジミはほとんどなく、周辺のボケが放射状や同心円状に流れることもなく、非常に整った開放描写だ。

EOS R6 Mark III 実写チェック
キヤノン EOS R6 Mark III RF45mm F1.2 STM 絞り優先オート F1.2 1/125秒 +0.3補正 ISO100 WB : 太陽光

キヤノン EOS R6 Mark III 主な仕様

有効画素数 最大約3250万画素
撮像素子 35mmフルサイズCMOSセンサー
マウント キヤノンRFマウント
AF方式 デュアルピクセル CMOS AF II
AFエリア分割数 最大1053分割
被写体検出  自動、人物、動物 (犬 / 猫 / 鳥 / 馬)、乗り物 (モータースポーツ〈車・バイク〉/ 飛行機 / 列車)
ISO感度 静止画撮影時 ISO 100~64000 (拡張 ISO 102400)、動画撮影時 ISO 100~25600相当 (拡張 ISO 102400)
シャッター速度 メカシャッター 電子先幕 1/8000~30秒、電子シャッター 1/16000~30秒、バルブ
高速連続撮影速度 メカシャッター 電子先幕時 約12コマ/秒、電子シャッター時 約40コマ/秒、
ファインダー 0.5型 約369万ドット 電子ビューファインダー (倍率 約0.76倍)
液晶モニター 3.0型 約162万ドット バリアングル液晶モニター
手ブレ補正 ボディ内5軸手ブレ補正 中央8.5段、周辺7.5段
※CIPA2024規格準拠、ピッチ / ヨー / ロール補正性能、RF24-105mm F2.8 L IS USM Z (f=105mm) 使用、協調補正時
カードスロット  CFexpress Type B、SD (UHS-II対応) のデュアルカードスロット
幅×高さ×奥行き 約138.4×98.4×88.4mm
質量 約699g (バッテリー、CFexpressカードを含む) / 約609g (本体のみ)
付属品 バッテリーチャージャー LC-E6、バッテリーパック LP-E6P、ストラップ ER-EOSR6 MarkIII、シューカバー ER-SC2