機材レポート

機能や仕様を着実に向上させた、EOS 5Dシリーズの正統後継モデル『キヤノン EOS 5D Mark IV』

EOS 5D Mark IV+EF24-70mm F4L IS USM+EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)

EOS 5D Mark IV+EF24-70mm F4L IS USM+EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)
EOS 5D Mark IV ボディ+EF24-70mm F4L IS USM。さらに、EF70-300mm F4-5.6 IS II USMも。

< EOS 5D Mark IV の機能概要&立ち位置 >

 『キヤノン EOS 5D Mark IV 』は、有効約3040万画素の35mm判フルサイズのCMOSセンサーを採用する、フルサイズ機の中の中核的なモデルである。最上位モデルのEOS-1D X Mark IIにも搭載される「61点高密度レティクルAF II」を採用し、高い動体捕捉性能を実現。そして、像面位相差AF技術デュアルピクセルCMOS AFの採用により、高速かつ動体追従(サーボAF)も可能なライブビューAF撮影も実現している。また、連続撮影速度も「約7.0コマ/秒」と、ミドルクラスのフルサイズ機としては高速なのも魅力である。

 現在、キヤノンの35mm判フルサイズのデジタル一眼レフは、フラッグシップモデル「EOS-1D X Mark II」、ミドルクラス「EOS 5Ds」「EOS 5Ds R」「EOS 5D Mark IV」「EOS 5D Mark III」、下位モデル「EOS 6D」…という構成になっている(キヤノンのデジタル一眼レフカメラ全体の中では、EOS-1D X Mark IIがプロフェッショナルモデル、それ以外はハイアマチュアモデルと位置付けられている)。EOS-1D X Mark IIは卓越した高速連写などプロフェッショナル仕様のモデルで、EOS 6Dは小型軽量設計やコストパフォーマンスの高さが魅力のモデル。中間に位置するEOS 5Dシリーズは、EOS 5DsとEOS 5Ds Rが、約5060万画素の高画素がウリの派生モデル(?)。そして、EOS 5D Mark IIIと次のEOS 5D Mark IV が、初代EOS 5Dから続く正統なシリーズ後継モデルになる、と思う。

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< 歴代モデルの進化点 >

 2005年9月発売の5Dシリーズ初代「EOS 5D」は、40万円弱の実売価格で “多くの人が買いやすいフルサイズデジタル一眼レフ” として人気を博した(フルサイズの最上位モデルEOS-1Ds Mark IIは90万円前後)。

 2008年11月発売の二代目「EOS 5D Mark II」は、CMOSセンサーの有効画素数を大幅にアップさせ(※後述)、ライブビューや動画撮影(フルHD対応)も搭載。そして、センサー上のゴミを振るい落とす「セルフクリーニングセンサーユニット」も採用された。

 2012年3月発売の三代目「EOS 5D Mark III」は、CMOSセンサーや映像エンジンの進化などにより、前モデルEOS 5D Mark IIよりも画像品質(静止画、動画)やパフォーマンスが大幅にアップ。ちなみに、このモデルに搭載される映像エンジン「DIGIC 5+」の処理能力は、従来のDIGIC 4の約17倍にもなる。

 そして、2016年9月発売の四代目「EOS 5D Mark IV」は、CMOSセンサーの有効画素数を3000万画素に乗せつつ、連写性能や高感度性能も向上させている。さらに、4K動画撮影機能の搭載や、タッチパネル対応など、よりクリエイティブ&アクティブな仕様になっている。

 ちなみに、歴代モデルに搭載される35mm判フルサイズCMOSセンサーの有効画素数は、約1280万画素(EOS 5D)、約2110万画素(EOS 5D Mark II)、約2230万画素(EOS 5D Mark III)、約3040万画素(EOS 5D Mark IV)…と、着実にアップ。まあ、二代目での “約倍増” が印象的だったねぇ。

< 個人的にお気に入りの機能 >

 以上のように、この「EOS 5D Mark IV」は、センサー画素数や連写性能など、全体的にバランスの良い(しかもハイレベルな)ミドルクラスのフルサイズ機である。だから、いろんな撮影ジャンルや撮影状況に対応できる実力を持っている。

 そして、「EOS 5D Mark IV」の機能で気に入ったのは、新たに搭載された…モノではなく、前モデルEOS 5D Mark IIIから搭載されている「ハイダイナミックレンジモード」。露出アンダー/標準/オーバーの3画像を自動で撮影・合成し、暗部から明部まで豊かな階調を実現したり、絵画のような独特な描写が得られる撮影モードである。

 まあ、HDRモード自体は多くのメーカー&機種に搭載されているが、EOS 5D Mark IIIやEOS 5D Mark IVのHDRモードは、その応用範囲の広さが魅力的。合成された完成カットだけでなく、露出アンダー/標準/オーバーの3画像も記録できたり、手持ち撮影による画面のズレを自動で補正してくれる「自動画像位置調整」機能も搭載されているのだ。あ〜、今回のようなスナップ的な撮影だと、この「自動画像位置調整」が実に便利だわ(画角は少し狭まるけど)。

EOS 5D Mark IV(撮影:吉森信哉)
前モデルと同様、多彩な操作や仕上がりが選べるハイダイナミックレンジモード(HDRモード)。

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
通常撮影
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF24-70mm F4L IS USM(24mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/40秒 WB:オート ISO800 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
HDR撮影
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF24-70mm F4L IS USM(24mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/80秒 WB:オート ISO1600 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

 「レンズ光学補正」機能の充実ぶりも、このモデルの気に入っている点。レンズを絞り込んだ際に発生する「回折現象」の改善が、専用のRAW現像ソフト(Digital Photo Professional)を使用せずに、撮影時にカメラ内で可能になるのだ。

 また、従来モデルから搭載されていた、周辺光量や色収差の補正機能に加えて「歪曲収差補正」機能も搭載された(すべてJPEG撮影時でも補正可能)。歪曲収差補正、やっと来たよ…。

キヤノン EOS 5D Mark IV(撮影:吉森信哉)
公開済みのレンズ補正データは、基本的にすべてカメラに内蔵している(今後発売されるレンズは追加登録が必要だが)。

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< 今回使用した、EOS 5D Mark IV +2本のEFレンズ >

 今回、自分は「EOS 5D Mark IV + EF24-70mm F4L IS USM + EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」という組み合わせで、植物園や動物園でスナップ的な撮影にトライしてみた。

 標準ズームの24-70mmF4Lは、コンパクト設計だけど “L仕様” なので画質的にハイレベル。また、この種の製品としては珍しくマクロ機能も搭載しているので、花や小物などのクローズアップ撮影にも強い。

 新しい望遠ズームの70-300mmF4-5.6は、EFレンズ初の “液晶画面” の搭載が目を引くが、実際に使ってみると安定した描写性能も魅力的だった。

EF24-70mm F4L IS USM(撮影:吉森信哉)
全長93mm、質量約600gの小型軽量設計の「EF24-70mm F4L IS USM」。望遠側が長い「EF24-105mm F4L IS II USM」と比べると、全長は25mm短く、質量は195g軽い。

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
通常の最短撮影距離(0.38m)で撮影
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF24-70mm F4L IS USM(70mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/250秒 WB:オート ISO100 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
マクロ時の最短撮影距離(0.2m)で撮影
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF24-70mm F4L IS USM(24mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/125秒 WB:オート ISO100 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)
スリムでスマートな鏡筒に液晶画面を搭載する「EF70-300mm F4-5.6 IS II USM」。

キヤノン EOS 5D Mark IV+EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)
液晶画面には「撮影距離」「焦点距離」「揺れ量」のうち、ひとつを選択して表示できる(カメラの電源がONの場合)。表示内容の切り換えは、横にある表示モードボタンを押して(1秒未満)おこなう。

  • EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)

    焦点距離

  • EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)

    揺れ量

キヤノン EOS 5D Mark IV+EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)
表示モードボタンを長押し(1秒以上2秒未満)すると、表示が白黒反転する。

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キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF24-70mm F4L IS USM(24mmで撮影) 絞り優先オート F11 1/100秒 −0.3補正 WB:オート ISO100 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF24-70mm F4L IS USM(70mmで撮影) 絞り優先オート F4 1/60秒 WB:オート ISO100 4480×6720ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF24-70mm F4L IS USM(24mmで撮影) 絞り優先オート F11 1/100秒 −0.3補正 WB:オート ISO100 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(300mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/500秒 WB:オート ISO250 4480×6720ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(129mmで撮影) シャッター優先オート F7.1 1/250秒 WB:オート ISO100 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(300mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/500秒 WB:オート ISO1000 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

キヤノン EOS 5D Mark IV 作例(撮影:吉森信哉)
◆キヤノン EOS 5D Mark IV  EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(300mmで撮影) シャッター優先オート F6.3 1/1000秒 WB:オート ISO250 6720×4480ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)

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< 変わってなさそで、やっぱり変わって(進化して)る >

 約5年前に発売された前モデルEOS 5D Mark IIIは、今でも十分な機能や仕様を備えた、魅力的なフルサイズ機である(価格もね)。だけど、後継モデルの「EOS 5D Mark IV」を使ってみると「やっぱり、いろんな所が進化していて快適だわ」と実感する。透過型液晶を採用してファインダー画面上に多彩な撮影情報を表示する「インテリジェントビューファインダーII」も実用性が高い。なかでも、画面上部に表示される2軸式の水準器が、個人的には好みである。そういえば、AFフレームを使って表示されるEOS 5D Mark IIIの水準器は、操作性がイマイチだったからねぇ…。

 また、画質設定「RAW+L」時などでの連続撮影可能枚数に不満は残るが、約3040万画素のフルサイズ機で “7コマ/秒の高速連写” を実現したのは立派だと思う。ただし、これにEOS 5Ds/5Ds Rのような「クロップ」機能が搭載されていれば、もっと立派なんだけどねぇ(APS-Cでも1200万近い画素数が確保できるし)。

 いずれにせよ、現在のフルサイズ機のEOSの中で “いちばんのユーティリティープレイヤー” は、この「EOS 5D Mark IV」になるだろう。

EOS 5D Mark IV+EF24-70mm F4L IS USM+EF70-300mm F4-5.6 IS II USM(撮影:吉森信哉)