フルサイズのデジタル一眼レフ「キヤノン EOS 6D」に『タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A032)』を装着。従来モデル(Model A007)と比べると、鏡筒の全長や最大径はほとんど差がないし、フィルター径も変わらない。だけど、新しい「SPシリーズ」のコンセプトに基づくデザイン(ルミナスゴールドのブランドリングなど)は、かなり違う印象を受ける。
< 本製品の概要 >
2012年に発売された「タムロン SP 24-70mm F2.8 Di VC USD(Model A007)」は、フルサイズ対応の大口径標準ズームで初めて手ブレ補正機構を搭載したモデルである。また、タムロンで初めて簡易防滴機構を採用したモデルでもあった。
こういった重要な機能や仕様を備えつつ、価格はカメラメーカー純正の大口径標準ズームよりも相当お安い…。ということで、この “お買い得な大口径標準ズーム” を愛用している人も多いだろうね。純正のフルサイズ対応大口径標準ズームだと、手ブレ補正機構ナシでも20万円前後、手ブレ補正機構アリだと20万円台後半。だけど、このモデルだと、8万円台で買えたからねぇ(ポイント還元ありの大手量販店での税込価格。ただし、すでにModel A007の販売を終了した店が多い)。
そして、今年の夏以降(ニコン用8月、キヤノン用9月)に発売された『タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A032)』(※これ以降、Model名は省略)は、従来モデルの機能や仕様を受け継ぎつつ、新機構の採用や一部の仕様変更によって、さらなる進化を遂げたモデルである。
レンズ構成は12群17枚で、諸収差を補正するXR(高屈折)ガラスを2枚、望遠域での軸上色収差や広角域での倍率色収差を低減するLD(異常低分散)レンズを3枚、球面収差や歪曲収差を効果的に補正するGM(ガラスモールド非球面)レンズを3枚、複合非球面レンズを1枚使用。このレンズ構成は従来モデルと変わらない。そして、より透過率の高い硝材を採用し、優れた色の再現性と描写性能を実現している。またeBANDコーティングとBBARコーティングの最適化により、逆光時に発生しやすいゴーストやフレアを強力に抑制。
また、手ブレ補正機構「VC」も進化し、クラス最高となる5段分の手ブレ補正効果を実現。さらに、信号処理能力が高いDSP(Digital Signal Processor)ブロック内蔵MPUを採用したことで、AFの精度やスピードも飛躍的に向上している。
レンズのファームウェアのアップデートやAF合焦位置、フルタイムマニュアルの設定、手ブレ補正モードの選択。こういった機能のカスタマイズが可能な「TAP-in Console」にも対応する。
付属の花型フード(HA032)には、ロック機構が新設されている。これにより、不用意なフード外れが防止できる。シンプルだけど、実用性が高いロック機構とみた。
< ボケ描写をチェック >
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F2.8のボケ描写
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F5.6のボケ描写
共通データ:キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(70mmで撮影) 絞り優先オート WB:オート 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
大口径ズームの魅力は、一般のズーム(レンズキットやダブルズームキットに含まれる製品など)よりも開放F値が明るく、速いシャッターが使えたり、大きなボケ効果が得られる、といった点である。だが、必ずしも「大きなボケ=美しいボケ」ではない。大きくボケていても、二線ボケ傾向で “ささくれ立つ” ような描写だったり、画面周辺部の光量低下や像の崩れ方が気になるようでは、せっかくの大口径も魅力半減である(まあ、それでも速いシャッターを使えるメリットはあるが)。
この『タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2』の場合、自社の製品情報などで “ボケ描写の美しさ” を特別謳っているわけではない。しかし、実際に撮影してみると、予想以上に “まろやかでクセのないボケ” に感心した。その傾向は、2段絞った状態でも変わらない(当然、ボケ具合は弱くなるが)。それでいて、ピントを合わせた部分は、妙なアマさもなくてシャープでクリア。これは数ある大口径標準ズームの中でも、かなり上位にランクできる描写だな、と実感した。
< 逆光耐性をチェック >
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24mmで撮影
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70mmで撮影
共通データ:キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2 マニュアル F8 ISO100 WB:太陽光 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
風景撮影などでは、画面内に太陽を写し込むケースが多々ある。その際、目障りなゴーストが発生したり、フレアによって画面全体が不鮮明になってしまうと興醒めである。
本モデルでは、優れた反射防止性能を発揮する超低屈折率のナノ構造膜と従来のマルチコーティング技術を融合したeBAND(Extended Bandwidth & Augular-Dependency)コーティングと、BBAR(Broad-Band Anti-Reflection)コーティングが最適に施されている。それにより、逆光時での撮影で発生しやすいゴーストやフレアを強力に抑制する事に成功。
その謳い文句通り、実際の撮影でもその効果を実感。もちろん、すべての状況で “ゴーストやフレアが皆無” というわけではない。だけど、強烈な太陽をマトモに写し込んでも、その描写は驚くほどクリアだった。これには感心! また、ゴーストが確認できても、かなり軽微な発生具合で、写真の雰囲気を大きく損なうモノではない。これなら安心して “太陽サンサン写真” が撮れそう(←光学ファインダーのカメラでは、太陽を直視しないよう注意する)。
< その他のチェックポイント >
●近接性能
最短撮影距離はズーム全域「0.38m」で、最大撮影倍率は「1:5」(0.2倍)。どちらの数値も大口径標準ズームとしては平均的で問題ないが、正直「もう少し寄れてアップで撮れたらなぁ」と感じるシーンは多々あった(最大撮影倍率が0.3倍くらいだとウレシイ)。まあ、優れた描写性能を維持するためには、そう簡単にはいかないんだろうけど…。
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(70mmで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/250秒 +0.7補正 ISO100 WB:オート 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
●歪曲収差
カメラに搭載されている各種の収差補正機能(カメラによって機能の有無や内容は異なる)が使えない…。これがレンズメーカー製の交換レンズの泣き所のひとつである。だから、あまりレンズメーカー製品は選びたくない…そういう人もいるかも。
前述のとおり、本モデルの場合は、諸収差を補正するXRガラスを2枚、望遠域での軸上色収差や広角域での倍率色収差を低減するLDレンズを3枚、球面収差や歪曲収差を効果的に補正するGMレンズを3枚、複合非球面レンズを1枚使用している。だから、カメラ側の収差補正機能に頼らなくても、良好な描写を得ることができる。
…とはいえ、撮影状況や被写体によっては、色収差や歪曲収差、絞り開放付近では周辺光量低下。そういった “レンズの弱点” が少し気になるケースもあるからねぇ。まあ、そんな時には「Adobe Lightroom」などのソフトを使ってRAW現像すればイイか。
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(24mmで撮影) 絞り優先オート F11 1/40秒 +0.3補正 ISO500 WB:オート 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
●手ブレ補正
タムロンの手ブレ補正機構「VC」は、従来から定評のある手ブレ補正である。従来モデルでも「4段分」の補正効果を実現していた。そして、本モデルでは、手ブレ補正処理専用MPUの追加や、制御アルゴリズムを一新したことで、このクラスのレンズでは最高となる「5段分」の手ブレ補正効果を達成。これにより、手ブレが発生しやすい低照度下の撮影や、手持ち撮影時にあまり速いシャッターが使えない(または意識的に速度を下げる)場合などでも、手ブレを抑えたシャープな描写を得ることが可能になる。
えーと、このズームの望遠端は70mmだから、手持ち撮影時の低速限界値(昔から言われている、レンズの焦点距離分の1秒)は1/70秒になるか。でも、使用カメラには1/70秒の設定はないので1/80秒を低速限界値にしよう。で、そこから低速側に5段分下げると、1/2秒より1/3段だけ速い「0.4秒」になる。
そこで、実写テストをしてみた。結論から言うと…あ、コレは主観になるけど。うーん、5段分はちょっとキツイかな。0.4秒だとキリが悪いのでそれに近い1/2秒と、1段上げた1/4秒で撮影してみた(各速度で10枚)。…結果、1/2秒での“手ブレがなくてOK”なカットは結構少ない。一方、1/4秒でのOKカットは全体の7割くらいはあった。だけど、考えてみると “中望遠70mmで1/4秒の手持ち撮影が十分可能” という結果もスゴイと思う。あ、クドいようだけど、この結果と評価はあくまでも自分の主観だからね。
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(70mmで撮影) シャッター優先オート F10 1/4秒 −0.7補正 ISO100 WB:オート 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
< まとめ >
今回の『タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2』は、光学系(レンズ構成)は従来モデルと同じでも、コーティング技術の進化などにより、実際に使ってみても、メーカーが謳う “トップクラスレベルの高画質を実現” が実感できた。
そして、レンズ鏡筒の可動部や接合部各所に防滴用シーリングを配した「簡易防滴構造」や、レンズ前面に撥水性・撥油性に優れたフッ素化合物の「防汚コート」も採用。だから、風雨などの影響を受ける屋外撮影でも安心感が高い。
フィルター径は82mmで、重さも900g前後…と、現在の大口径標準ズームらしい大きくて重いレンズになる(従来モデルと比べると、重さのアップが顕著)。でも、新SPシリーズのデザイン(鏡筒素材、操作リングのローレットパターン、ルミナスゴールドのブランドリング、など)のせいか、不思議と従来モデルのような “妙な威圧感” がなくてイイ感じ。
以上のような、ハイレベルな機能や仕様を備えていて、実写性能も極めて優秀! だけど、実売価格は同クラス製品の約半分だからね。間違いなく “魅力的な最新大口径標準ズーム” と言えるね。
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(70mmで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/80秒 ISO400 WB:オート 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(36mmで撮影) 絞り優先オート F4 1/30秒 ISO1600 WB:オート 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(70mmで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/60秒 +0.7補正 ISO125 WB:太陽光 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(24mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/40秒 +1.7補正 ISO100 WB:太陽光 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(70mmで撮影) 絞り優先オート F11 1/15秒 ISO800 WB:オート 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(70mmで撮影) 絞り優先オート F2.8 1/1000秒 −0.3補正 ISO100 WB:太陽光 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
キヤノン EOS 6D タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(24mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/13秒 ISO800 WB:太陽光 5472×3648ピクセル JPEG(※オリジナルデータ)
落ち着きがあって上品なデザインの『タムロン SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2』は、多くのボディに違和感なくマッチする。