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【アジサイの撮り方①】立体感や奥行きのある写真を撮るテクニック

日本列島は梅雨前線が北上中の今日この頃ですが、梅雨と聞いてアジサイの花を思い浮かべる方もいらっしゃるのでは。アジサイは6~7月にかけて開花する梅雨の花で、原産国は日本です。小さな花が固まって形成された丸い形状が特徴なので、その形や梅雨時の印象を生かした狙い方をしましょう。

 

 

× アジサイ写真でよくある失敗

 

固まって咲くアジサイを俯瞰気味にただ撮っただけ

梅雨時の印象や花の立体感、色彩など、全てがイマイチ。散歩途中に見つけてただカメラを向けたような写真で、その意図が伝わらず、作品としてのクオリティーが低い。

 

<ココが残念>

  1. 花の並びが平面的で立体感が乏しい
  2. 背景が葉の緑のみで暗い印象
  3. 花が乾いているので梅雨らしさがほしい

 

むずかしいですよね。どのようにすれば、アジサイのステキな写真が撮れるのか悩んでしまいます。

これから初心者の方でも、ひと味違うアジサイの写真が撮れるコツ3つをご紹介いたします。

 

アジサイの新しい撮り方

ピントは手前の一輪に合わせる。梅雨時期特有の青みがかった光を生かす

一般的なアジサイはホンアジサイとも呼ばれ、丸い形を成す「手まり咲き」。一方、周囲を花が丸く囲むガクアジサイは「額咲き」です。どちらも小さな花が集まって、大輪のようなボリューム感があります。花がたくさんあるのでピント位置に迷いますが、基本的に手前の一輪に合わせるのが◎。色は白、青、紫、赤紫と寒色系で、梅雨時期特有の青みがかった光とよく合います。また、花が大きくて複数の花が平面的に咲くので、株に対して正面から狙うと平面的に写ってしまうので気をつけましょう。

 

解決法①

 

斜めから狙ったり、前ボケを入れたりして奥行きを出す

アジサイは平面的に花をつけるので、株に対して正面から狙うと全体にピントが合い、立体感や奥行きが出ない。なので、斜めから狙ったり、前ボケを入れたりする工夫が必要だ。どちらの方法も、手前と奥との距離の差を意図的に作ることで、奥行きを出す効果がある。

 

斜めから狙って奥行きを出す

斜めから狙うと、前後の距離の差が生じる。また手前の花に寄ることで背景がぼけるので、シャープとボケの差でも奥行きが出る。さらに24ミリ相当の広い画角によって、遠近感も強調された。

 

前ボケを入れて奥行きを出す

アジサイの株を正面から狙っただけなので、前ボケがないと平面的に写るシーンだ。手前のアジサイをぼかして加えたことで、前後の距離の差が生まれて画面に立体感が出た。

 

写真の構図のまとめ方を知ったところで、次に、アジサイが身にまとう梅雨の涼しさや、爽やかさを演出するためのテクニックをご紹介いたします。
 

解決法②

 

丸いボケ(玉ボケ)を入れて明るく爽やかな印象にする

品種によるが、アジサイは半日陰を好むものが多く、特にヤマアジサイは林の中に咲くことが多い。そのため、花を見上げると林が背景になり、木漏れ日の丸いボケを入れることができる。自然の中にある白い点である、葉と葉の間の部分を大きくぼかすと、丸い玉ボケになって爽やかな印象を作れる。

 

木漏れ日のある部分を大きくぼかすと、きらめきを感じるボケになる

木漏れ日の白い点を、望遠系のレンズを使って、絞りを開け、花に迫って大きくぼかすと、きらめきを感じる玉ボケとなった。ボケが小さいとうるさく感じるので、大きくぼかすことも大切だ。

92ミリ相当 絞り優先オート(F3.9 1/100秒)+1補正 ISO200 WB:晴天

 

解決法③

雨の日の光を生かして梅雨らしい色彩に演出する

梅雨の花は寒色系が多い。雨の日の光はやや青みがかるので、光と花色が同系色となってマッチする。しかし、ホワイトバランスを「オート」にすると雨の日本来の青みが抜けてしまうし、花の青色を感じて赤っぽく色を加えてしまうこともある。基本は、色が補正されない「太陽光(晴天)」で、自然の光の色をそのまま出そう。

 

WB「オート」 △

 

WB「電球」 ×

 

WB「4600K」 ◎

オートでは温かい色合いに、電球では青すぎて不自然。4600Kで梅雨らしい涼しさが出た

WB「オート」は自然な色合いだが、青みが抜けて梅雨らしさがない。青みが加わるWB「電球」にすると、青色が強すぎて不自然になった。少し青みを加えるならカスタム(色温度設定など)でホワイトバランスの調整を行うのが◎。WB「太陽光」=約5500Kなので、それより値を下げていくと青みが加わる。ここではライブビュー画面を見ながら調整し、4600Kで最適な色彩になった。

300ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/250秒)+0.7補正 ISO250

 

梅雨のジメジメさえも楽しくなるような、アジサイのステキな写真を撮りにいきたくなりますね。

 

 

写真・解説/吉住志穂