日本列島は梅雨前線が北上中の今日この頃ですが、梅雨と聞いてアジサイの花を思い浮かべる方もいらっしゃるのでは。アジサイは6~7月にかけて開花する梅雨の花で、原産国は日本です。小さな花が固まって形成された丸い形状が特徴なので、その形や梅雨時の印象を生かした狙い方をしましょう。
前回のアジサイの撮り方①では、立体感や奥行きのある撮影方法や、涼しげな爽やかな印象を与えるコツをお伝えいたしました。今回のアジサイの撮り方②では、梅雨らしさを演出する撮影テクをご紹介いたします。
曇天のやわらかい光で撮ったり水滴や雨そのものを写したりしてみよう
アジサイは梅雨に咲く花なので、写真の中にその季節感を盛り込みたいものです。前回紹介した、ホワイトバランスの設定による青みを加えるテクニックのほかにも、梅雨らしさを演出する方法はいくつかあります。例えば、光の選択であったり、雨そのものを画面に写し込んだりする方法などです。やわらかい光は曇天続きの梅雨らしさがあります。雨の日に撮影に行くなら、水滴や雨そのものを写すのも手です。直接的に梅雨を感じさせることができます。
基本テクニック
陰影が強くなる直射光を避けて、日陰に咲くアジサイを選ぶ
梅雨の晴れ間に出くわすと、真上からの強い光がアジサイに降り注ぐ。普通、晴れた日は光があって撮影しやすいものだが、梅雨らしさを感じさせるとなると強い日差しは不向きだ。晴れていても林の中など、日陰に咲いている花を選べば光が拡散してやわらかくなる。また、晴れた日の日陰の光は青みがかるので梅雨らしさが出る。
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強い光を手で遮って弱くして撮影
クローズアップなら手の平で日陰を作ることもできる。撮りたい花に光が当たり、強い影ができていた(上写真)。そこで、その光を手で遮って全体を陰にした(下写真)。カメラは三脚に据え、右手でシャッターを切り、左手で陰を作っている。陰になった花に対してさらに明るく露出補正をかけたので、背景はより明るくなっている。
140ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/60秒) +2.3補正 ISO200 WB:晴天
晴天の直射光の写真 △
曇天のやわらかな光のほうがしっとり感がある
上の写真は晴天の直射光によって、アジサイに強い影ができている。メリハリはあるが、梅雨時の雰囲気は皆無。曇天のやわらかい光で撮った下の写真は、背景の色も寒色系ということもあり、しっとり感がある。陰影が少なく、アジサイの優しい色が出ている。
応用テクニック①
水滴をメインに撮りたいときは、雨上がりを狙う
降雨時は水滴が膨らんでは次々と落ちてしまうが、雨上がりなら水滴が安定してついているので写しやすい。水滴がついた“花”としてアジサイをクローズアップするのもいいが、花についた“水滴”をメインにしてみるのもいいだろう。マクロレンズで迫れば、水滴を大きく写せるし、角度によっては花びらの色を映しこんだ、美しい姿を写すことができる。
水滴を主役にしつつもアジサイの個性も生かす
マクロレンズで迫れば、撮影倍率が高まり、水滴が主役の写真になる。ピントは水滴の表面に合わせるが、AFでは合いにくかったので、ここではMFで合わせている。また、ピントのピークがつかみにくいので、ライブビューで水滴を拡大して合わせた。アジサイだとわかる程度に花を入れ、画面の対角線を生かしてフレーミング。さらに、ホワイトバランスを4600Kにして少し青みを足した。
120ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/500秒) -0.3補正 ISO200 WB:4600K
応用テクニック②
暗い背景とスローシャッターを選んで降雨を取り込む
降雨時の撮影は傘を差したり、機材をぬらさないように注意を払ったりと何かと面倒だ。しかし、降雨のときしか撮れない特別な写真になる。雨は噴水や滝と同じように、シャッター速度を遅くすると白い線のように写って、より降雨感が出る。また雨は白く写るので、背景が明るいとそこに溶け込んでしまう。暗い背景を選ぶと降雨が際立って効果的だ。
シャッター速度1/40秒で雨の線を長く描写する
木の陰になった部分を背景に広めにフレーミングして降雨を写した。雨は動く被写体なので、シャッター速度優先オート(S、Tvモード)で1/40秒を選択した。これよりも速いシャッター速度だと雨の線が短くなり、遅くすると被写体ブレの可能性が出てくる。また、焦点距離が長いほど画角が狭くなり、速めのシャッター速度でも線が長く写る。雨の中に咲くアジサイ写真に仕上がった。
150ミリ相当 シャッター速度優先オート(F5 1/40秒) -1.3補正 ISO200 WB:晴天
日本独自の四季を表現できる絶好の時期こそが梅雨。今年は、梅雨らしい演出を加えた一枚を撮りに行きたくなりますね。
写真・解説/吉住志穂