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【アジサイの撮り方③】ボケ描写を生かしていろいろな変化を楽しもう!

日本列島は梅雨前線が北上中の今日この頃ですが、梅雨と聞いてアジサイの花を思い浮かべる方もいらっしゃるのでは。アジサイは6~7月にかけて開花する梅雨の花で、原産国は日本です。小さな花が固まって形成された丸い形状が特徴なので、その形や梅雨時の印象を生かした狙い方をしましょう。

 

 

アジサイの撮り方①では、立体感や奥行きのある撮影方法や、涼しげな爽やかな印象を与えるコツを、また前回のアジサイの撮り方②では、梅雨らしさを演出する撮影テクをご紹介いたしました。今回のアジサイの撮り方③では、ボケ描写を生かした幻想的な写真の撮り方を、ご紹介いたします。

 

画面が平面的にならないようボケを生かそう。多重露光機能で生み出す方法もある

アジサイはボケが作りにくいのは、アジサイの撮り方①の解決法1で解説したとおり、ひと株から花が平面的に咲くためです。そのため、正面からではなく、斜めから奥行きを出す撮り方がありました。しかし、クローズアップであれば、同じ株の中でも花と花同士に距離があるので容易にぼかすことができます。また、平面的に狙う場合でも多重露光を使えばボケを取り入れることができます。シャープな画像とボケ画像を合成することで、ソフト感のある仕上がりになります。ぼかすほうの画像に大小をつけたり、ずらしたりといろいろ工夫することでバリエーションも増やせます。

 

基本テクニック

クローズアップして後ろボケ、前ボケの変化を出す

ボケを作るには距離の差が必要だが、アップで写せばわずかな距離の差でもボケを作ることができる。大きなボケを作る4つの要素「絞りを開ける」「焦点距離の長いレンズを使う」「背景を離す」「被写体に近づく」のうち、「花と背景が離れる」が少なくても、「花に近づく」を増やすことでカバーすれば大きなボケは作れる。アジサイは花と花とに多少距離があるので、前後、上下に距離ができるアングルから狙いつつクローズアップをすれば、大きなボケを作ることができるのだ。

 

手前にピント

 

奥にピント

 

ピント位置を変えるとボケのできる位置も変わる

クローズアップすると見下ろすアングルになる。上にある花が手前、下にある花が奥となり、どちらかにピントを合わせれば、もう片方はぼける。どちらを主役にするかは、花の状態や構図などを見て決める。

 

 

シャープ感がなくなるので、主役に前ボケがかからないようにする

寄れば寄るほどボケは大きくなるので、ガクアジサイの中の一、二輪だけをクローズアップすると前ボケも大きくなる。しかし、ボケが主役にかかってしまうとシャープ感がなくなるので、前ボケと前ボケの間に主役を入れるようにポジションを微調整した。

120ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/125秒) +0.7補正 ISO200 WB:4600K

 

 

 

応用テクニック

多重露光機能を使って幻想的な写真に仕上げる

平面的に咲くアジサイでも、ボケを作る方法がある。それが多重露光機能の活用だ。1枚の画像に対して、2回以上の露光を行う撮り方で、複数の画像が重なることで現実とは違った、不思議な写りになる。いろいろな撮り方が考えられるが、ここでは平面的な被写体にボケを重ねる方法を紹介する。

 


シャープさの中にソフト感があるという不思議な写りになる

普通にアジサイ全体を写すと、平面的に咲くのでボケは生じないが、同じ場所でぼかした画像を重ねることで、シャープさの中にソフト感があるという不思議な写りになる。多重露光機能を使い、まずはピントをしっかり合わせてストレートに撮影。そして、MFで意図的にピントを外したボケ画像を撮る。これをカメラ内で合成したのが上の写真である。

 

さらに!

大きくピントをずらした画像を重ねて、位置もややずらす

ボケ写真のピントの外し具合を変えると、ボケ量にも大小と変化がついてソフト感を変えられる。ここでは上の写真よりも大きくピントを外し、さらに少し位置をずらした。これにより、花のない位置に彩りのボケを加えることができた。

 

 

アジサイの撮影テクニックを3回に分けてご紹介いたしました。この週末に有名な鎌倉の長谷寺や明月院、京都の三室戸寺など、カメラを持ってお出かけしてはいかがでしょうか。

 

 

 

写真・解説/吉住志穂