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【ユリの撮り方】周りの環境を生かした臨場感あふれる写真撮影

6月中旬から7月にかけ色鮮やかな花を咲かせてくれるユリ。大柄でカラフルな色をしたユリは、被写体としても撮りやすく人気のある花です。森に群生するユリの撮り方や、シベにクローズアップした撮影方法など、ユリの特性を生かす撮影テクニックをご紹介いたします。

 

色鮮やかな花なので光の強い晴天時は彩度やコントラストを控えめにしよう

黄色や赤など品種改良により鮮やかな色が多いため、仕上がり設定が鮮やかめだと派手すぎてしまいます。特に晴れて光が強い日は色飽和を起こしやすく、彩度やコントラストを控えめにするとよいでしょう。
群生するユリの花畑を風景的に広く見せて華やかさを生かすだけでなく、シベの美しさをクローズアップするのも、ユリのおすすめの撮り方です。また、背の高い花なのでしゃがみ込んだ無理な体勢は必要なく、比較的容易にクローズアップ撮影を楽しめます。ただ風に揺れるとぶれやすく、ピント合わせも難しくなります。雨上がりや朝露で水滴をまとった、無風の日がベストです。

 

基本テクニック

ユリに迫りつつ、背景に森や滝などを入れて現場の臨場感を盛り込む

草原や森、水辺など、ユリが咲く環境はさまざまであり、背景を生かすことでユリが咲く環境の臨場感を盛り込める。広角レンズなら高原の森や夏空の広がりを生かせ、望遠レンズならユリだけでなく渓流や夏雲などのモチーフを迫力ある姿で捉えられる。花の美しさだけでなく、背景も意識して被写体を選ぶようにしよう。

 

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見つけたときの状態のまま、森に咲くカラフルなユリにレンズを向けた。写真にするとユリが目立たず、狙いが散漫で何を見せたいのかわからない。

 

参考例 ○

広角レンズでユリに近づき背景に森を見せる

ピンク色のユリに近づいて広角レンズで大きく見せ、背景に森を写し込んだ。森の中に咲くユリの雰囲気が出て、森の広がりも感じられる。また背景の木々のリズム感が生きるようなポジションを選んで撮影している。

36ミリ相当 絞り優先オート(F5.6 1/50秒) +0.7補正 ISO800 WB:5000K PLフィルター

 

背景に川を見せることで奥行きと水辺の雰囲気を表現

遠景の滝とユリを一緒に見せるため、望遠レンズの圧縮効果を生かして切り取った。画面内で滝を大きく見せることで迫力が出た。滝がユリに隠れずに形をしっかり見せられるよう、ポジションを微調整しながら撮影している。

68ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/125秒) ISO1250 WB:5000K PLフィルター

 

 

 

応用テクニック①

シベについた水滴を生かしてクローズアップで狙う

雨上がりや朝露など水滴をまとったユリは、みずみずしさが感じられてフォトジェニックだ。風景的に広く撮ると水滴は目立たないので、マクロレンズなどでクローズアップするのがベターである。水滴に正確にピントを合わせ、ぶれなく撮影するためには、風のない日にライブビューAFの拡大表示を活用するといい。

 

望遠+絞り開放で前後の花びらをぼかして水滴を強調する

ここでは水滴をまとったユリを望遠レンズでクローズアップした。若干のプラス補正で明るく仕上げると、白い色と相まって清楚な雰囲気が醸し出された。絞り開放F2.8で前後の花びらをぼかすことで、水滴の印象を際立たせている。

200ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/250秒) +0.7補正 ISO100 WB:晴天

 

応用テクニック②

森に群生するユリは曇天の拡散光で撮るのが最適、優しい色を引き出せる

晴れた日は光が強く、光を受けたユリが華やかに見える。ただ森の中に咲くユリは、写真にすると強い影が目立ちがちだ。写真的には均一な光となる曇天の拡散光のほうが、見たままのイメージで仕上げやすい。晴天時はスポット的に当たる光を生かすなど、部分狙いで光の効果を生かすのがおすすめ。

 


晴天時、森の中に咲くユリは木々の木漏れ日により、光と影のメリハリが強く出る。肝心のユリが影になってしまうと、黒くつぶれ気味になってもったいない。

 

参考例 ○

曇天下は強い影ができないのでユリの色がきれいに出る

曇天の拡散光なら森の中に強い影が出ず、シラカバの森とユリを均一な明るさで捉えることができた。高原に咲くユリの優しい色合いや清楚な雰囲気がよく伝わってくる。曇り空は見せずに散漫になるのを防いだ。

45ミリ相当 絞り優先オート(F16 1/20秒) ISO200 WB:晴天 PLフィルター

 

 

6月に色鮮やかな花を咲かせてくれるユリの花。群生でも一輪でも撮影が可能です。花そのものの美しさはもちろん、背景にも気を配れば、より満足のいく一枚が撮れることでしょう!

 

 
写真・解説/深澤 武