星空のきれいな景色(星景)を見ると撮影したくなるもの。カメラが好きな人にとって、一度は挑戦してみたい!被写体です。星や月、惑星など撮りたい気持ちはあるのだけれど、「難しい!」「真っ暗!」「星が映らない!」など撮影方法の悩みは尽きません。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。カメラを通してきれいに撮る方法やテクニックをご紹介いたしましょう。
星景写真なら広い画角を持った広角レンズ、月の風景(月景)なら遠くの小さな被写体を引き寄せられる望遠レンズが使いやすい。目安としては、16~35ミリや14~24ミリの広角ズームで星景を、300ミリ以上の望遠レンズで月の風景(月景)を狙えます。これはフルサイズ一眼での焦点距離なので、APS-Cサイズ機なら約1.5倍(キヤノンは1.6倍)、マイクロフォーサーズでは2倍した数値がフルサイズ相当の焦点距離になります。
星景はISO感度を上げて、露光時間を短めにすることで星を点像に捉えられます。開放F値が明るい大口径レンズ(F1.8やF2.8など)のほうが低感度で撮影できるので、ノイズが少なく画質面で有利です。月景の場合は絞り込んでパンフォーカスにしたいので、必ずしも大口径レンズである必要はありません。ただし、明るいレンズはファインダーも明るく見やすいので、構図を決めやすいというメリットがあります。
広角レンズ:星景を撮るときに使用、14~35ミリが使いやすい
地上の風景と星空を一緒に撮影して星景写真として仕上げるなら、広角~超広角レンズが必要。星のある風景は思いのほか広く、星景写真の標準レンズは20ミリといってもよいだろう。明るさやレンズ性能では単焦点レンズが有利だが、星専門に撮影するのでなければ1本で何役にも活躍してくれるF2.8クラスの大口径ズームレンズが便利だ。非球面レンズを使った高級レンズは画面周辺まで均一な像を結び、周辺光量落ちが少ないという星景撮影に向いた特性を持っている。
ニコンAF-Sニッコール24~70ミリF2.8E ED VR
星の軌跡と1本桜を同一画面に収める
広角24ミリレンズで北天の星空と茶畑に咲く桜を撮影。地上の風景だけでなく、夜空を広々と捉えるには、広い画角を持ったレンズが欠かせない。LEDライトでわずかに桜を照らし、長時間露光で星の軌跡を捉えた。
24ミリ相当 マニュアル露出(F8 12分) ISO800 WB:オート
望遠レンズ:望遠+テレコン使用がおすすめ
月は思いのほか小さくしか写らず、月の存在感を出すには望遠レンズが欠かせない。しかし200ミリではもの足りず、200ミリ+テレコン、または300ミリレンズが欲しい。それでも画面内でワンポイントとなるくらいの大きさなので、月を脇役とした夜の風景として見せるのがよいだろう。月を画面いっぱいに捉えるには1500ミリ以上が必要であり、600ミリ以上の超望遠レンズにテレコン、または天体望遠鏡が必要になる。どちらも低照度での望遠撮影になるので、ブレ対策に頑丈な三脚が欠かせない。
ニコンAF-Sニッコール70~200ミリF2.8E FL ED VR
ニコンAF-SテレコンバーターTC-14E Ⅲ
200ミリレンズに1.4倍テレコンを付けて撮影
夜明けの桜並木を前景にして、沈みゆく満月を捉えた。望遠200ミリレンズに1.4倍のテレコンを付け、280ミリ相当で撮影している。月と桜の明るさがそろう時間帯を選んで露出の過不足をなくし、月の模様を写し出した。
280ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/4秒) -1補正 ISO200 WB:晴天
魚眼レンズ:写りが異なる全周魚眼と対角線魚眼
フィッシュアイレンズとも呼ばれる魚眼レンズには、画角の異なる2種類のレンズがある。360度の画角を持つ全周魚眼レンズ、そして対角線で180度の画角を持つ対角線魚眼レンズである。全周魚眼レンズを真上に向けて撮影すれば、全天の星空を捉えることができる。一方で対角線魚眼レンズは、画面周辺部の直線が曲線に写るという特徴がある。この特性を生かして山並みなどとともに星空を写すと、地球的な広がりが感じられる作品に仕上げられる。
シグマ8ミリF3.5 EX DG サーキュラー フィッシュアイ
360度の画角を持つ全周魚眼レンズを使用
レンズを真上に向け、赤道儀による自動追尾で12分露光した。全周魚眼レンズは周囲のあらゆるものを写し込むため、人工物の少ない場所選びが大切である。さらに、天の川が天頂部に来るタイミングを選んで撮影している。
8ミリ相当 マニュアル露出(F4 12分) ISO800 WB:オート
広角レンズ、望遠レンズ、魚眼レンズ、星景撮影には広角レンズ、月景撮影には望遠レンズ、空の広がりを感じさせる魚眼レンズ。被写体に合わせて、レンズを選び撮影しましょう。
写真・解説/深澤武