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【工場の撮り方②】煙や水蒸気の動きを効果的に撮影するテクニック

ここ数年、撮影ツアーができるほど人気の工場写真ですが、その多くは夜に撮られたものです。夜の暗闇に光る明かりや煙突、タンクなど、工場を形成する様々な機械類を、フォトジェニックに撮影するためのテクニックの数々をご紹介いたします。

 

撮影:川北茂貴

 

工場夜景に最適な脇役の動きを生かして取り入れよう

工場夜景には、機械類から吐き出される煙や水蒸気が付きものです。これらを積極的に取り入れることで、静止した世界に動きが生まれ、より独自性を表現できます。煙や水蒸気はシャッター速度の選択でその描写が変わってきますので、自分のイメージに合うようにコントロールしましょう。

また工場は水場に面していることが多いので、光を反射する水面を狙えるほか、道路沿いでは車の光跡を入れて画面のアクセントにするのも効果的。これらは長く流し(ぶらし)て捉えるのがコツです。

 

 

基本テクニック

シャッター速度をコントロールして煙や水蒸気の描写を操る

煙は煙突から、水蒸気は冷却塔などの機器類から出ることが多い。これらは工場夜景の脇役として最適なので、積極的に取り入れたい。煙や水蒸気の描写は、長秒露光で流してもいいし、少し感度を上げて1秒以内のシャッター速度でモクモク感を出すのもいい。露光が長くなるほど煙は流れて写るので、流れを予測して構図を作ることも大切だ。

 

 

煙を流して描写するには低感度に設定する

撮影:川北茂貴

ISO400 F11 20秒

目で見ればモクモクと湧き上がる煙や水蒸気は、長秒露光で撮ると白い筋として描写される。動画や肉眼では見ることのできない、写真ならではの表現方法だ。 ISO100~400と低感度に設定して、10秒以上の長秒露光で撮ろう。

 

煙のモクモク感を狙うにはISO感度を上げる

撮影:川北茂貴

ISO6400 F5.6 1/3秒

夜景撮影としては速い1秒以内のシャッター速度で煙を捉えれば、肉眼と同様にモクモクとした感じに写る。1秒以内のシャッター速度を得るには、ISO感度を上げる必要があるが、上げすぎには注意しよう。

 

 

応用テクニック

車の光跡や水面反射など輝きを増幅させる副題を取り入れる

工場夜景はそれだけでも十分絵になるが、脇役を添えることで一層主役として強調できる。前述した煙や水蒸気もそんな脇役の一つだが、輝きを増幅させてよりきらびやかな写真にするには、光跡や水面反射などを取り入れることが有効。暗い画面のなかで工場とは違った輝きが加わると、印象的かつ独自性も出て一石二鳥だ。

 

撮影:川北茂貴

夜景撮影に欠かせない光跡は工場夜景にもマッチする

夜景に合う脇役の代表格が光跡だが、もちろん工場夜景にもマッチする。夜の工場地帯はトラックがよく通るので、長秒露光でライトを流して取り入れたい。ただ、左上の写真のようにかすかな光跡だとわかりづらいので、工場にかぶらない程度に大胆かつ豪快に光跡を描き出そう。

 

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撮影:川北茂貴

長く伸びた煙に注目して構図を決めたが、明かりが乏しくて少し寂しい。

 


撮影:川北茂貴

煙で動きを、水面反射で色味を加えてより印象的に仕上げる

工場の多くは海や川に面しているので、水面に反射した光と一緒に撮りやすい。海や川では常に波があるので、なかなかきれいな水鏡にはならないが、10秒以上の露光を行うと水面がフラットになってきれいな反射を捉えることが可能。また、画面に光による彩りを加えられる。

40ミリ相当 絞り優先オート (F11 30秒) ISO250 WB:白色蛍光灯

 

工場夜景は、工場そのものにも魅力があるのですが、脇役があってこその撮影です。煙や水蒸気、光などを効果的に取り入れて、撮影してみましょう。