星空と同様に、月のある景色(月景)もフォトジェニックです。カメラが好きな人にとって、こちらも挑戦してみたい!被写体です。月も星の撮影と同じく、撮影方法の悩みは尽きません。ですが、やはり満月や三日月だと絵になりますしカメラを向けたくなります。これから流星群や皆既月食、火星の接近など、天体撮影では、イベントも盛りだくさん。月と地上風景を絡めた月景写真の撮り方やテクニックをご紹介いたしましょう。
3分割構図や黄金比にならって月を配置しよう。目立つ地表物の対角に置くのも◎
ほかの天体に比べて圧倒的に大きく見える月は、とにかく目立ちます。目立つが故に、配置に思案する必要があります。基本は3分割構図や黄金比にならって、ポジションを決めるとバランスよく決まるでしょう。さらに、ポイントとなる地表物の対角に月を配置すると、写真に安定感が生まれます。よくない構図は、特に広角レンズを使ったときに四隅に配置することです。レンズ収差の関係で月がゆがんで写ってしまいます。
そして、地上の風景が左右対称となるようなときは、画面上部の真ん中に月を置いてもバランスよく収まります。月や地表物は動かせないので、撮影者が動いてポジションを決めることも大切です。地表物が主役なら、その周りを1周してみましょう。
基本テクニック
月は画面上の左右に置くのがベター
本文でも触れているが、月景写真における月の基本ポジションの目安は、3分割構図や黄金比における上部交点の近似値と考えよう。正確な位置決めは必要なく、大体このくらいが3分の1かな、といった感じでよい。またよっぽどの意図がない限り、画面上部に置くこと。画面中部だと中途半端な構図に見えてしまうこともある。
×
フレーム端に月がある。撮影時に月のことを意識していなかったことがバレバレなフレーミングだ。 これでは月景写真として失敗だ。
広角で空を広く取り入れつつ、3分割構図を参考に月を配置
3分割構図の近似値に月を配置して撮影。これ以上、上や左に寄せてしまうと、月の形がゆがんでしまう恐れがある。明け方の空のグラデーションを生かし、広角レンズで空を広くフレーミングして、雄大な月景写真に仕上げた。
23ミリ相当 絞り優先オート(F8 1.3秒) -0.7補正 ISO200 WB:太陽光
応用テクニック①
地上と空の基本配分は「1:9」か「2:8」
展望台などで前景がない場所からの撮影は、地表と空の割合を1:9、もしくは2:8にするとよい。その際に気をつけたいのは、水平を傾けないこと。ファインダーやライブビュー画面では暗くてわかりにくいので、水準器を使うことをおすすめする。月景写真も風景写真であることには変わりないので、安定感を引き出すことはとても重要だ。
×
肉眼では森の表情を確認できる月明かりだった。そこで、木々の様子を生かそうと大きめに森を入れたが、空との露出差によって真っ暗に。空とのバランスも悪く、何が主役なのかわからない。
○
空のグラデーションを見せるためセオリーどおり「2:8」でまとめる
夜明け前の湖畔で撮影。東の空が明るくなり始めたころの時間帯だ。湖面もきれいだったが、ここは地表を2割程度に収め、空のグラデーションを印象づけるようにした。そこにワンポイントとして月を配置している。
18ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 6秒) -1補正 ISO250 WB:太陽光
応用テクニック②
月とライトアップをフレーミングするときの注意点
地表物を主役にして、月をアクセントとして沿えるのもおすすめだ。その際、地表物はライトアップの有無に大別される。ライトアップがないときは空に露出を合わせ、地表物をシルエットで表現すればよいが、ライトアップ時は月と露出差があって難しい。空のトーンが残っている薄暮のタイミングで撮ると、この露出差を埋められて◎。
桜の樹形によって空いた空間に月を配置する
日が暮れて夕焼けの赤みがなくなり、月の輝きが増す時間帯。ライトアップされた桜の周りを移動し、桜の樹形によってできた空の空間に月を入れ込んで撮影した。
42ミリ相当 絞り優先オート(F8 4秒) -0.3補正 ISO200 WB:太陽光
月の配置は、空ばかりでも、地上ばかりでも、バランスをとることができません。ですので、3分割構図や黄金比などの基本にならって配置するのがベストでしょう。また月との対角に目立つ地表物を配置するのも、有効なテクニックになります。
写真・解説/秦 達夫