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【夏山の花の撮り方②】山岳風景と花畑を一緒に撮りたい時の広角レンズの使い方

猛暑が続く今年の夏ですが、もうそろそろ夏休みですね。登山シーズンを迎え、山の花と背景の壮大な山々との撮影で登山者を楽しませてくれます。夏山の花々は、どのタイミングでどのように撮影すれば臨場感あふれる雄大な写真が撮れるのでしょうか。テクニックやちょっとしたコツと合わせてご紹介します。

 

 

かっこいい山々と一緒に夏山の花を狙おう。小さい花なら広角接写的な狙い方が向く

夏山に咲く花畑はスケール感があって魅力的な被写体です。広角から標準レンズを使えばかっこいい山々と一緒に高山植物を広々と見せられます。チングルマやコマクサなどの小さな花なら、50cm以内に近づいて花を大きく見せ、背景に山を広々と写し込む広角接写的な狙い方が向いています。一方、クルマユリやニッコウキスゲの群生は、絞り込んでパンフォーカスにすると華やかな夏らしい花風景になります。群生なら花の密度が大切ですし、花に近づいて撮影するなら形や色などが美しい花を選ぶようにしましょう。

山では撮影場所が登山道に限られるため、登山道の近くに咲き、背景がきれいな撮りやすい花を選ぶことも重要です。

 

基本テクニック

広角・標準レンズは花の群生(花畑)と山岳風景を絡めて撮るのに最適

広角・標準レンズで花に近づいて撮ると、背景に山並みを広く写し込め、臨場感を出しやすい。コマクサやチングルマのような小さな花でも大きく見せられるため、花の存在感も生かせる。一方、引き気味のポジションから花畑を狙うなら、F8~16程度に絞り込んでパンフォーカスに仕上げるのがコツだ。

 

標準レンズで5cmほどのチングルマに迫って撮影

まとまって咲くチングルマに標準レンズで近づき、背景には黒部五郎岳の岩峰を見せることで、高山に咲く花の雰囲気を引き出した。花に近づくことで背丈が5cmほどのチングルマを大きく見せることを心掛けている。

47ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/30秒) +0.3補正 ISO100 WB:晴天 PLフィルター

 

空を入れすぎると散漫になるので、花畑と山を画面いっぱいにフレーミングした

北岳に広がるシナノキンバイの群生。左写真は花が小さく、青空が広すぎて花畑の印象が弱い。花に近づき、標準域にズームアップすると花畑の面積が広くなり、シナノキンバイの黄色が引き立った。花までの距離が近いためF22まで絞り込み、パンフォーカスにしている。

40ミリ相当 絞り優先オート(F22 1/10秒 )  +0.3補正 ISO200 WB: 晴天 PLフィルター

 

 

応用テクニック①

光が乏しい曇天時は、画面奥に霧を入れて奥行きや夏山らしさを出す

曇天時は青空がなく、広がりを出すことが難しい。曇り空が目立つと写真が弱くなるので花畑の部分を切り取ることが多いからだ。このため平面的な写真になりやすいが、霧が出てきたらチャンス到来である。背景に霧を見せると遠近感が出て、高山に咲く花畑の広がりを生かしやすい。

 

花畑だけだと単調だが、霧を入れると遠近感が出た

クルマユリやハクサンフウロが咲く草原の花畑。花々を大きく見せるのがセオリーだが、花畑だけだと単調である(左写真)。背景に広がる霧をフレーミングすると、緑と白の色の変化がつき、遠近感が出て花畑の広さも生きてくる。

53ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/20秒) ISO200 WB: 晴天 PLフィルター

 

応用テクニック②

高さのある花の特徴を生かしてローアングルで狙って青空と絡める

夏の高原にはニッコウキスゲやシシウドのような背の高い花も見られる。特にニッコウキスゲは高原を黄色く染める人気のある花だ。遊歩道から漫然とレンズを向けるのではなく、花の色や形を生かせるように近づいて撮影したい。ローアングルから夏空や夏雲を背景に撮ると季節感が出て、夏山に咲く花らしさを生かせる。

 

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遊歩道を歩いていて目に留まったニッコウキスゲと夏雲の風景。感動に任せてシャッターを切っても花が小さいと目立たない。

 

20ミリの超広角レンズで青空を大きくフレーミング

ニッコウキスゲを引き立たせるため、遊歩道のすぐ脇に咲く形のよい花を探した。ローアングルから超広角レンズで花に近づき、青空を大きくフレーミングすると夏の高原らしい広がりが出る。形のよい夏雲が現れたタイミングでシャッターを切った。

20ミリ相当  絞り優先オート(F11 1/125秒 )  + 0.3補正  ISO200 WB:晴天 PLフィルター

 

山岳風景を入れた花畑を撮る時は、広角レンズや標準レンズが最適です。広角レンズを使用し、広大な風景や、青い空などを構図に含めて、季節感のある夏らしい撮影を試みましょう。

 

写真・解説/深澤 武