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【夏山の花の撮り方③】望遠・マクロレンズを使って、花の繊細さや可憐さを撮影しよう!

猛暑が続く今年の夏ですが、もうそろそろ夏休みですね。登山シーズンを迎え、山の花と背景の壮大な山々との撮影で登山者を楽しませてくれます。夏山の花々は、どのタイミングでどのように撮影すれば臨場感あふれる雄大な写真が撮れるのでしょうか。テクニックやちょっとしたコツと合わせてご紹介します。

 

 

距離があることも多いため望遠レンズが使いやすい。画角が狭いながらも夏山らしい背景を選ぼう

アップで山に咲く花の魅力を抽出するなら望遠レンズやマクロレンズの出番です。登山道のすぐ脇に花があればマクロレンズを使えますが、距離があることも多いため、望遠レンズを使ったほうがたくさんの高山植物を撮影できます。あこがれの名峰、ごつごつとした岩稜、青空や白い雲など、画角が狭いながらも夏山らしい背景を選んで撮影しましょう。小さな花をクローズアップする際は手持ちで安易に撮影せず、正確なピント合わせのためにも三脚を使用するのがベターです。高山では風が強いときが多く、高速シャッターで花を写し止められても、ピント合わせは困難です。無理をせず岩陰に咲く背の低い花を狙ったり、スローシャッターで動感を生かしたり、柔軟な対応を心掛けることが大切です。

 

基本テクニック

望遠・マクロレンズは花のクローズアップを撮るのに最適

高山植物は周囲の景観を取り入れて撮影することで、厳しい環境に生きる姿を生かせるが、アップの場合は説明的になりがちだ。アップ狙いでも画面にリズム感や前ボケなどを取り入れて花の魅力を引き出したい。撮影ポジションが限定される高山でクローズアップ撮影をするなら、望遠ズームのテレ側を活用するとよいだろう。

 

全体を撮ると説明的になるときは狙いを絞る

チシマギキョウは密になって咲いているため、ついつい全体を撮りたくなってしまう。厳しい環境は伝わってくるが説明的である(左写真)。そこで、450ミリ相当の望遠レンズで互い違いに咲く花をアップにして形のよさを生かして撮影。花の質感や繊細な色合いを伝えることができた。

450ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/200秒) -0.7補正 ISO200 WB:晴天

 

横から狙って前ボケを生かして可憐さを引き出す

細長い白い花びらが特徴なイワツメクサ。名前のとおり岩場でよく見られ、形がきれいなので上から全体を撮りたくなってしまう。まずは生育環境が伝わる写真を撮影し、次は斜めから狙うことで前ボケを生かし、イワツメクサの可憐なイメージを引き出した。

300ミリ相当 絞り優先オート(F6.3 1/320秒) +1補正 ISO200 WB:晴天

 

 

応用テクニック

背景選びで夏山らしさを表現する

背の低い高山植物は普通に撮ると砂礫や土が背景となって雑然としてしまう。花だけでなく、背景にも気を配って被写体を探したい。雪渓や岩稜など夏山らしい背景を生かしたり、低いポジションから青空や白い雲を背景にしたりすると、夏山らしさを出せる。画角の狭い望遠撮影では、10cm程度のポジションの違いで作品の雰囲気が大きく変わる。

 

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上から目線のハイアングルで撮ったので、背景の砂礫が目立ってしまった。生育環境は伝わってくるが、コマクサの魅力は半減してしまう。

 

同じコマクサでも背景によってイメージは大きく異なる

緑を背景にしたものは爽やかであり、山に咲く雰囲気がよく出ている。青空を背景にすると夏らしい光の強さが感じられ、コマクサが力強く見える。残雪模様を生かすと、夏でもたくさん残雪がある北アルプスらしさが感じられ、涼風が吹き抜ける爽快感が伝わってくる。

 

縦構図で爽やかな青空を生かす

青空の下で咲くハクサンイチゲの白色が際立っていた。横位置だと青空をわずかしか見せられないが、縦位置にすることで青空を広々と見せられた。形のよい岩がアクセントになり、白い雲も生きて爽快感が伝わってくる。

108ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/60秒) -0.3補正 ISO200 WB:晴天 PLフィルター

 

低い花の場合は、上から撮ると、砂礫や土が映り雑然としがちなので、花と同じ目線で、カメラを構えることをおすすめします。また、背景の色によっても花の印象が変わるので、撮影イメージに合わせて背景を選び、ローアングルで撮影しましょう!

 

くれぐれも撮影する時は、登山道から外れないように注意してくださいね!

 

写真・解説/深澤 武