ここ数日“インスタ映え”とばかりに、SNSで可憐な姿を見せてくれているヒガンバナ。ヒガンバナの開花時期は秋の彼岸、9月中旬から下旬。球根生で群生し、日本では田んぼの畔に植えられた姿が見られます。独特の形状を活かしたヒガンバナの美しい撮影テクニックやコツをご紹介いたします。
ヒガンバナ写真でよくある失敗×
密度感が弱いうえ、赤い色が冴えない
せっかく群生の様子を捉えているのに、緑の部分が多くて少しスカスカ感がある。また、右上にある幹がとても中途半端なうえ、特徴的な赤い色も冴えなくて残念だ。
ここが残念×
①緑の隙間によってスカスカ感が否めない→解決法①
②ヒガンバナの色が冴えない→解決法②
③画面のポイントであるはずの木の入り方が中途半端→解決法③
ピントはシベではなく、手前の花弁に合わせる。光のある中でマイナス補正すると赤い色が出る
ヒガンバナは独特で、細くカールした花弁の間から、シベが四方に突出しています。花のピント合わせは基本的にシベですが、ヒガンバナに限ってはシベではなく手前の花弁に合わせてください。赤い色を出すには光のある中で、少しマイナス側に補正をするといいでしょう。群生では花の密集感を引き出すように、望遠レンズを使ったり、水平寄りのポジションで撮影したりするのが◎。また一輪に迫ったり、シベをクローズアップしたりするなど、部分を切り取るのも面白い花です。
残念ポイント①緑の隙間によってスカスカ感が否めない
【解決法①】密集感が出るように、望遠レンズを使ったり、カメラポジションを低くしたりする
ヒガンバナは株ごとに群生していて、花も大きく広がっているので密集度は高めだ。しかし、広角や標準系のレンズで花を見下ろすアングルで撮ると、手前側に隙間ができて、花のない部分が目立ってしまう。群生の密集感を高めるため、望遠の圧縮効果を利用し、ポジションを花の高さ近くまで下げよう。
望遠レンズの圧縮効果を生かす
手前にも花はあったが、レンズ特有の圧縮効果を生かすために、望遠レンズで遠くの花を狙った。焦点距離が長くなるほど、また遠くの花を写すほど、圧縮効果は強まって密集感が出る。画面をほぼ赤い色で埋められた。
カメラポジションを低くすると花の隙間が目立たなくなる
上から見たら花と花との隙間が見えたが、ポジションを低くすると、手前の花の上に後ろの花が乗ったようになり、花と花とが重なって隙間が埋められた。これは目で見ても同じなのでわかりやすい。
残念ポイント②ヒガンバナの色が冴えない
【解決法②】ヒガンバナは光が当たると色が映えて鮮やかに写る
ヒガンバナは光がないとくすんでしまう。日照の有無で印象が大きく変わるので、なるべく天気のいい日に出掛けたい。光があると鮮やかな赤色を得られる。また、光が当たっていても順光と逆光では見え方が違う。どちらも赤色はよく映えるが、雰囲気は変わるので、光の方向を変えて両方撮っておくといいだろう。
順光
逆光
より色鮮やかに写る順光、艶のある輝きを狙える逆光
やはり光があると花の色がきれいに出る。順光は色鮮やかだが、密集度が高いと重なり合った花の色がつながってしまいやすいので注意しよう。一方、逆光は輝きが感じられる。花弁の面積が狭いので、大きく透けたようには見えないが、艶があるので輝きを感じる。
残念ポイント③画面のポイントであるはずの木の入り方が中途半端
【解決法③】幹を画面のポイントにフレーミングする
ヒガンバナの群生は、赤一色で大きさや形の差もあまりないので、群生の中にポイントを見つけにくい。林の中に群生している場所では木の幹をポイントにできるので、根元を少し入れてみよう。赤い画面に黒い幹が入ると、画面が引き締まるという効果もある。また画面のポイントを作るなら、背の高い一輪を狙ったり、スポット的に光が当たっている所を狙うのもよい。
幹の周囲をヒガンバナの赤で埋める
赤一色の群生の中、黒い幹はポイントになる。この幹を大胆に捉え、斜めの構図に当てはめて、周囲をヒガンバナの赤で埋めた。ちょうど幹の手前に二輪の花が寄り添っていて、黒と赤の色の差によってこれらが際立った。
180ミリ相当絞り優先オート(F5.61/200秒)-0.7補正ISO640WB:晴天
画面のポイント作り:群れから飛び出た一輪をクローズアップ
群生を水平から見ると、少し丈の高い花が飛び出しているのがわかる。丈の高さは目を引くポイントなので、それを主役に、手前の花をぼかして狙う。主役と前ボケに光が当たり、背景は暗いので一輪だけが目立った。
画面のポイント作り:スポット的に光が当たる部分を狙う
林の中にある群生では、木漏れ日が部分的に差し込んで、一部だけを明るく照らすことがある。この際、最も明るい部分が適正になるように露出を合わせると、周囲が暗く落ちるので明るい部分だけが目立つ。
細くカールした花弁が独特なヒガンバナ。群生で撮影するのもよし、一輪で撮影するのもよし、大変写真映えする繊細かつ可憐な被写体。真っ赤な色を一面に見せてくれる姿は圧巻です。
写真・解説/吉住志穂