2018年平成最後の冬、風景としての雪、スナップとしての雪、「雪」でも様々な撮影描写ができます。今回は、被写体としての「雪」を撮るテクニックの数々をご紹介いたします。
雪景色撮影は、当たり前ですが画面の中に雪の白が多いということに注意が必要になります。ホワイトバランス、露出、構図、光という項目ごとに、白い被写体を印象深く表現するための基本テクニックはもちろんのこと、寒さ対策、スノーレジャー、寒冷地での撮影機材のトラブル対策など、冬の撮影で必要な知識を盛りだくさんにご紹介していきます。
雪以外の要素を使って変化を付けることで実際に見るよりも印象深い雪景色に仕上げる
一面に降り積もった雪景色。その広大さに目を奪われてただカメラを向けただけでは、白一色の単調な写真になってしまいます。冬ならではの風景を印象深い作品に仕上げるために、工夫すべき一歩進んだポイントをご紹介します。
①きれいなピンク色に染まる瞬間を捉える
6:14am
朝焼けに染まる白馬三山。雪に覆われた冬山はほかの季節には見られない澄んだピンク色に染まる。きれいなピンクは5分もすると茶色く濁ってくるのでシャッターチャンスが重要だ。
44ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/4秒) -0.3補正 ISO100 WB:晴天
7:17am
日の出から1時間が過ぎると赤みはなくなり、普通の雪景色になる。純白の雪景色ではあるが朝夕の光によるダイナミックさは感じられない。
美しい雪景色が撮れるタイミングは多くない
雪は風に吹かれたり、日に照らされたりするとすぐに溶けてしまう。雪をまとった樹木を美しく撮るには、降雪中や降雪直後のタイミングを捉えよう。ほかにも朝夕の光や、強風で巻き上げられる雪煙など、その瞬間にしか撮れない風景は多い。粘り強く、最高の瞬間を待って撮影しよう。
②降雪直後の雪をまとった樹木を狙う
十和田湖を背景に、雪をまとった木々が美しい。降雪中では遠景がかすんでしまうし、雪がやんで風に吹かれるとすぐに雪は落ちてしまう。降雪直後のタイミングを捉えることが欠かせない。
66ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/200秒) +0.3補正 ISO200 WB:晴天
③差し込む逆光線で雪煙を引き立たせる
強い風によって巻き上げられた雪煙が、冬の戦場ヶ原の厳しさを感じさせてくれる。光がないと写真にしたときに雪煙が目立たないため、逆光線が差し込む瞬間に撮影した。
375ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/50秒) +0.7補正 ISO100 WB:晴天
天候が回復した直後が雪景色の撮影チャンス
雪撮影は天気次第なので、タイミングを合わせることが重要。降雪が激しいとかすんだような雪景色にしかならないため、天候が回復するタイミングを狙いましょう。
降雪が弱くなれば樹木をアップにして雪をまとった枝ぶりを美しく捉えられます。風や日差しで雪が落ちるまでがシャッターチャンス。また天気が回復して晴天が広がると、白銀の山々がダイナミックな姿を見せてくれます。ただし日中は空気がかすむので、山々が斜光線で立体的に見える午前中に撮影するのがおすすめです。さらに雪山がピンク色に染まる早朝の風景もぜひ狙ってみましょう。
④月を入れることで雪原のスケール感が生きる
白銀の山々を大雪原を前景にして21ミリ広角レンズで撮影。前景を広々と見せ、背景に山並みを見せることでスケール感を狙った。これはこれでいいが、もっと広さを伝えたい。
↓
雪山や大雪原の広さを直接的に伝えるために、上空に浮かぶ月をワンポイントにフレーミングした。小さな月が入ることで大きさが比較され、スケール感がはっきりと伝わるようになった。
18ミリ相当 マニュアル露出(F8 1秒) ISO200 WB:晴天
ワンポイントを生かしてスケール感のある風景にしよう
画面いっぱいに山並みなどを捉えても、山の大きさやスケール感は出しづらい。写真で高さや広がりを感じさせるには、太陽や月、樹木、人物など、大きさの比較となるものを入れよう。それらを主役とすることも(樹木など)、脇役として小さく見せることも(太陽、人物など)可能だ。
⑤小さな太陽を見せることで流氷のスケール感を出す
海を埋め尽くすような流氷原。画面いっぱいに流氷をフレーミングして流氷原のスケール感を引き出した。さらに小さな太陽を背景に入れ、夕暮れの雰囲気とともに海の大きさを表現した。
14ミリ相当 絞り優先オート(F16 1/40秒) -1補正 ISO100 WB:晴天
山並みは目で見ると雄大ですが、全部を見せようと広く撮りすぎると散漫になりやすいのが難点。遠景の山並みを生かすには、前景をしっかりと見せることが重要です。雪に覆われた棚田、風によって刻まれた風紋、雪に覆われた川などがよいモチーフになってくれます。
さらに太陽や月、人物などを比較対象として、大きさを感じさせるアクセントにすることで、直感的にスケール感を感じられるようになります。雪山といっても展望台やロープウエーなどを利用すれば冬山登山なしでも撮影できるので、ぜひ挑戦してみましょう。
⑥樹木を見せることで雲海のスケールを生かす
山並みの彼方に大雲海が広がるシチュエーション。雲海だけを捉えても奥行きや大きさが伝わりづらいため、雪原に立つ樹木をワンポイントにした。樹木に対する雲海の大きさが実感できる。
175ミリ相当 絞り優先オート(F16 1/160秒) -1.3補正 ISO100 WB:晴天
⑦登山者を入れることで氷瀑の高さや広がりを出す
10mを超える氷瀑も写真だとスケール感は伝わりづらい。画面いっぱいに見せてもその大きさはわからないからだ。比較となる登山者を入れることで、氷瀑の高さや広がりを引き出した。
18ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/640秒) 補正なし ISO200 WB:晴天
写真・解説/深澤武