2018年平成最後の冬、風景としての雪、スナップとしての雪、「雪」でも様々な撮影描写ができます。今回は、被写体としての「雪」を撮るテクニックの数々をご紹介いたします。
雪景色撮影は、当たり前ですが画面の中に雪の白が多いということに注意が必要になります。ホワイトバランス、露出、構図、光という項目ごとに、白い被写体を印象深く表現するための基本テクニックはもちろんのこと、寒さ対策、スノーレジャー、寒冷地での撮影機材のトラブル対策など、冬の撮影で必要な知識を盛りだくさんにご紹介していきます。
どんなに寒くても撮影に集中したい!究極の防寒対策を求めて
寒い屋外で撮影するには、それなりの対策が必要です。なによりも撮影者が凍えていてはいい写真は撮れません。ですので、今回はどんな寒さにも対応できる防寒着(インナー・アウター・小物)の選び方を紹介します。
INNER(インナー)
インナーウェアを選ぶなら汗が乾きやすい製品がおすすめ
中に着るインナーウェアの素材は、肌触り重視の綿よりも、ぬれたときでも保温力が下がらないウールがおすすめ。ウールは、メンテナンスがやや面倒だが、発汗による水分を吸い取って外に逃がす能力に優れている。
Tシャツ
アンダーウェアには、速乾性に優れた化学繊維にウールを加えたTシャツを使用。汗を外に逃がし、乾いた状態に保つことで体温の低下を防ぐことができる。半袖と長袖は、気温や状況に応じて使い分けている。
ベースシャツ
ベースシャツには、保温性に優れたウール素材のシャツを使用。一般的なウールは洗濯機では洗えないが、メーカーによっては家庭用の洗濯機で洗える製品もあるので、そうしたものを選ぶと使い勝手がよい。
インナーパンツ
中に履くインナーパンツには、身体を包み込んで筋肉をサポ ートする製品を使用する。腰や膝の関節を安定させることで体軸のブレを抑え、筋肉疲労を軽減できる。また血行を促進する効果もある。
ソックス
厚手のソックスを1枚履くのが基本となる。かつて流行ったことがあるソックスの2枚履きは、締め付けが強くて血行が低下するため、あまりおすすめできない。同じ理由で、 5本指のソックスもNGだ。
最大の敵は自分の汗!湿気を逃がす素材を選ぼう
寒さには種類があるのをご存じですか?それが防寒対策のカギになります。1番目は「気温」。単純に気温が下がれば寒く感じます。2番目は「風」。風によって体感温度が変わります。個人差はありますが、およそ風速1mで1℃下がるというのが目安です。3番目「湿気」。ぬれると体温は奪われます。夏でも低体温症で死亡事故が起こりますが、雨や汗で体温が奪われた結果なのです。
気温に対してはとにかくたくさん着ればいいですし、風は風を通さない素材であれば何でもOK。やっかいなのは湿気です。雨や雪にはぬれないように注意できますが、どうしようもないのが自分の汗。いくら寒くても厚着で歩けば必ず汗をかきます。そこで、素早く素肌から汗を取り除き衣類の外へ排出する素材が重要です。
一方で、その場にとどまって撮影チャンスを待つ場合もあります。たくさん歩くか、じっくり待つかがわかっていれば、それに合わせて服装を選べます。また、たくさん歩いた後に待つような場合は、すぐに脱いだり着たりできてコンパクトに収納できるダウンジャケットが便利。ここでは、実際に愛用している防寒着を紹介しているので、参考にしてみてください。
OUTER(アウター)
1か所で待つことが多いならできるだけ着込む方がいい
徒歩での移動が少なく、同じ場所で待って撮る場合には、できるだけ着込んで温かさを確保しよう。ゴアテックス素材のアウターやダウンジャケットに加え、フードやファー、マフラー、手袋などの選択も重要だ。
アウター
極寒地用のアウターには、ゴアテックスと極厚ダウンを組み合わせたジャケットを愛用。指先を温かく保てるハンドウォーマーや、氷点下でも凍りつかない天然ファーの採用など、細部にも工夫が盛り込まれたジャケットだ。
パンツ
ズボンは起毛が入ったものや、ダウン素材のものがいい。また、特に雪が多い厳冬期の場合は、胸の高さまで覆うことができるチェストハイタイプのビブを使用することで、雪の浸入を防ぎつつ、保温性を確保している。
ダウンパンツ
さらに寒い場合は、フランス、ピレネ ー山脈産のグレーグースダウンを使用した「ヴァランドレ」の最高級ダウンパンツをインナーパンツとして着用。寒冷地に行けば行くほど膨らんで、天然の温度調節が可能になる。約6万円と高価だが、信頼性は抜群。
ゲーター
足元にはゲーター(パイネのゴアライトスパッツ/4800円)を装着して、ブーツとズボンの隙間から浸入する雪や水、冷風をシャットアウト。これがあるとないとでは、身体に感じる寒さが全く異なる。
徒歩での移動が多いならインナーウェアで調整する
アウターには防水性に優れたゴアテックス素材のジャケットを、インナーには保温性の高いダウンジャケットを着用。移動によ って汗をかきそうな場合は、適宜インナーウェアを脱いで体温を調節していこう。
ダウンジャケット
空気の層によって保温力を高めるダウンジャケットは、最近の防寒着の定番だ。中でもフィルパワー(膨張率)が高いダウンは、特に保温性能に優れている。移動中は小さくたたんでザックにしまっておき、撮影地に到着後着用するといった服装の調整にも便利。それでも寒いときは、ダウンの下にウールのセ ーターを着用する場合もある。
アウター
フォックスファイヤー「フォトレックジャケットMIII」を愛用。フ ァインダーをのぞく際、フードに溜まった水滴がカメラの上に落ちないようにレインガーター(雨どい)を装備するなどカメラマン向けの細かい設計が魅力だ。北国の街中などを歩きながら撮影する程度なら、撥水性に優れた羽毛を使用した同社の「アクアガードダウンフーディー」など、軽快に動けるダウンジャケットをアウターとして使用してもいい。
パンツ
上半身と同じく重ね着が基本であり、吸汗速乾性と保温性に優れたタイツを履いた上で、防風性と防寒性のあるパンツを着用しよう。ゴアテックスを使用したフォックスファイヤー「ガレナパンツ」を愛用しているが、それほどハードな場所でないなら、裏面が起毛加工された「サーモテックトレックパンツ」もおすすめ。
Accessory(小物)
CAP & MUFFLER
帽子とマフラーで熱が逃げやすい顔をガード
体から逃げる熱は、頭から逃げていきやすいので帽子と首回りのガードは欠かせない。特にしもやけになりやすい耳をしっかりと覆うことが大切。最近は、帽子とマフラーの働きを兼ねた筒状のスヌ ードも活用している。寒冷地では、頭から顔までをすっぽりと覆うバラクラバ(目出し帽)を使用することもある。これほど大げさにしたくない場合は、タートルネックのセーターなども有効だ。
GLOVE
撮影しやすい手袋とミトングローブの2枚重ね
グローブは、ぬれたら交換できるように必ず2組を用意。さまざまなタイプのものを用途に応じて使い分けている。また、うっかり紛失してしまうこともあるので、その意味でも複数持っていくようにしよう。
カメラの操作を行うには指先がないタイプや必要に応じて指先を露出できるグローブが便利。ただし、冷気が入ってくるので、操作しないときはミトンタイプを重ねて着用するようにしよう。
グローブも重ね着をすることで保温性をアップできる。外側に着けるオーバーグローブは、ミトンタイプを愛用している。外気が当たる面積が少ない分、温かさを保てるのだ。
BOOTS
保温性が高いスノーブーツで快適に移動できる
普通の長靴と違い、中綿があり保温力が高いアウトドア用のブーツを選ぼう。親切なお店だと使用可能温度域を提示してあり、保温能力の指標とすることができる。購入時には必ず厚手の靴下を履いて試着すること。ウインターブーツのスタンダード、ソレルの「カリブー」(参考価格/1万9950円)を愛用している。吸湿性が高く快適に使用できるのが魅力。インナーを取り外して交換することもできる。
※本記事は『デジキャパ!』2014年1月号をもとに制作しております。記事内で紹介している製品は当時のものです。
写真・解説/秦達夫