2018年平成最後の冬、風景としての雪、スナップとしての雪、「雪」でも様々な撮影描写ができます。今回は、被写体としての「雪」を撮るテクニックの数々をご紹介いたします。
雪景色撮影は、当たり前ですが画面の中に雪の白が多いということに注意が必要になります。ホワイトバランス、露出、構図、光という項目ごとに、白い被写体を印象深く表現するための基本テクニックはもちろんのこと、寒さ対策、スノーレジャー、寒冷地での撮影機材のトラブル対策など、冬の撮影で必要な知識を盛りだくさんにご紹介していきます。
機材の防寒Q&A
氷点下の寒さの中で、カメラやレンズをどう扱えばいいのか、心配になる人も多いと思います。寒冷地での撮影で起こりやすいトラブルの解決策をご紹介します。
Q1 寒い所ではすぐにバッテリーがなくなってしまいます……。
A. コートの内ポケットに入れて体温で温めておきましょう。
バッテリーの消耗を防ぐには温めるしかありません。上着の外側のポケットではなく体に近い内ポケット、もしくはシャツのポケットで保管しましょう。体に近いこれらのポケットなら使い捨てカイロも有効なので、併用すると身体とバッテリー両方を温められます。また、バッテリーは古くなると使用時間が短くなるので撮影前に買い足すことを検討してみてください。
バッテリーは予備を用意するのはもちろん、寒さで消耗しないように保管場所に注意しよう。
寒冷地撮影のトラブルは吐く息がいちばんの原因
低温時の機材トラブルは主にバッテリー消耗、液晶モニターの不具合、AF動作の不具合などがあります。バッテリーは複数用意して暖かい場所に保管し、消耗したら交換するようにしましょう。常温に比べたら低温時の使用時間は短くなりますが、最近はバッテリー性能がよくなっているのでさほど心配ありません。液晶モニターも昔は写らなくなった経験がありましたが、オーロラ撮影でマイナス20℃の中、5時間野外で撮影しても問題ありませんでした。
ただしカメラの反応が鈍くなったり、AFは機能しなくなるといった障害はありました。とはいえ、動物などの動く被写体を撮る場合は別にして、風景撮影では大げさな防寒対策は必要ないと考えています。
そう話すとカメラが凍ったという声が上がることがあります。長時間露光や吹雪いているときはともかく、原因の多くは自分自身が吐く息です。カメラにカバーをして息が掛からないようにするのが最大の対策。おしゃべりを止め自分の口にマスクをして撮影に集中するだけで効果があります。
Q2 氷点下何度くらいまでカメラは動きますか?
A. 経験上、マイナス20℃くらいなら撮影できるようです。
カメラの機種にもよりますが、基本的に氷点下の撮影は推奨されていません。カメラが動けばラッキー程度に考えて撮影に挑む気持ちが必要です。とはいえ、経験上マイナス20℃くらいなら撮影できます。ただしAFは動かなくなりますから、MF撮影の練習が必要となります。カメラが寒さに耐えられなくなるよりも、息による凍結でボタンが動かなくなるケ ースのほうが多いと思います。
ボディがプラスチック製のエントリー機のほうが実は寒さに強い。サブ機として持っていこう。
AF機能は寒さに弱く、動かなくなることが多い。当てにしないでMFで撮影するようにしよう。
冬は乾燥しているイメージが強いが、日本の冬は湿度がある。気温の低さよりも湿気による霜や操作部の凍結に注意が必要だ。
Q3 レンズに付着した雪をどうしたらいいですか?
A. セーム皮で拭きましょう。撥水性の保護フィルターも便利。
まずはレンズに合った専用のフードを利用して雪が付着するのを防ぎましょう。それでもレンズに雪が付いてしまったらブロアーで吹き飛ばし、解けてしまって取れない水分は吸水性の高いセーム皮で拭き取りましょう。撥水性の保護フィルターを使用しておくと拭き取るのが楽になります。
鹿革をやわらかくなめしたセーム皮は昔ながらの素材だが吸水性が高く、雪の撮影で重宝する。
マルミの保護フィルター「EXUS」は撥水コーティングを採用。水滴が付いてもすぐ拭き取れる。
Q4 三脚を使用する際の注意点を教えてください。
A. 撮影後には伸ばしたまま乾燥させてください。
寒冷地での機材トラブルとして、結露や水の浸入にによって内部が凍って三脚が収縮できなくなることがあります。帰宅または宿に泊まるときには伸ばしたままで室内に持ち込んで乾燥させてください。また、たとえ三脚を使用しなかった場合でも夜の間に車の中に放置したままだと凍ってしまい、いざ必要になったときに伸ばせなくなることがあるので注意しましょう。
凍ってしまって収縮できなくなった三脚は室内で乾燥させるとよい。
Q5 暖かい場所に入るとレンズが結露してしまうのですが……。
A. ポーチなどに入れて急激に温度が変わらないようにしましょう。
カメラやレンズは冷えた状態から急激に温かくなると結露します。対策としては急激に暖めないことに限ります。カメラバッグにしまい常温になるまでカメラを出さない、暖房器具の近くに置かないといった配慮が必要です。カードを抜いたり、バッテリ ーを充電したりする場合は、屋内に入る前にそれらをカメラから抜き取っておけば、室内でカメラを出さないで済みます。
湿気と急激な温度変化が結露の原因。撮影後は乾燥剤を入れた防水カメラバッグなどにカメラを入れておき、室内では取り出さないようにすれば結露を防ぐことができる。
写真・解説/秦達夫