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【ウメの撮り方③】“背景”こそが写真を決める!だから背景を決めてから主役を探そう!

花が少ない冬の時期に、小さな花を咲かせるウメ。開花期は地域によって大きく異なり、温かな沿岸部では1月下旬から、平地では本格的な春を前にした2月中旬から3月に開花します。紅やピンク、白などが主流で、公園や梅園など多くの場所で見ることができます。被写体としてもかわいらしくて最適です。

 

 

写したい花を先に見つけるのではなく背景を決めてから主役のウメを探す

ウメが咲く時期は、周辺の木々はまだ花も葉もなく殺風景なので、背景として考えられるものは限られてきます。背後にあるウメの花はもちろん、梅園なら周囲の様子を入れたり、青空を生かしたりすることが考えられます。背景は主役の花の舞台であり、写真のイメージを左右する大きな要素です。なので、写したい花を先に見つけるのではなく、背景を決めてから主役のウメを探すという手順をとるといいでしょう。そうすると、おのずとフレーミングや露出も決まってきて、イメージどおりに撮れます。

 

基本テクニック

写真の雰囲気は背景に左右される、といっても過言ではない

ウメは小さな花なので、背景の面積が広くなりやすい。ウメの背景選びはとても重要ということだ。どんな背景を選ぶかによって写真のイメージが決まるので、背景選びには悩まされるが、色が乏しい季節なのでだいたい決まってくる。同じような写真にならないためにも、青空、夕空、日陰など背景で差をつけよう。

 

爽やか写真は青空バックに限る、順光の空が狙い目
爽やかな早春の空を感じる青空バック。快晴時に順光を選び、見上げるアングルで高い位置の空と重ねると、青空の濃度を濃く写せる。青一色だと平面的になるので、背景に花のボケを少し入れて変化をつけた。

 

 

赤いウメを背景にすると春らしい雰囲気に仕上がる
ウメの撮り方①で述べたとおり、白いウメに紅いウメの背景は鉄板だ。紅いウメはぼかすとピンクに写ってかわいい。ここではホワイトバランスを「曇天」モードにしたので、画面がややオレンジがかり、温かみのある色合いになった。

 

 

夕空バックでは露出を背景に合わせて、ウメをシルエットに
夕暮れ時ならオレンジ色の夕焼け空を背景にすることもできる。このとき花に露出を合わせると空の色が薄くなるので、露出は空に合わせた。明暗差があるとウメはシルエットになるので、ウメの形がわかりやすいアングルで狙おう。

 

 

日陰の背景を選ぶと黒バックになる
ウメには光が当たり、背景が日陰のシーン。明暗差によって背景は黒く落ちるので、背景に枝があってもわからない。主役は白いウメだが黒の面積が多いので、ここではマイナス1.7の露出補正を行って適正となった。

 

応用テクニック①

ウメは小さいので、ぼけると丸い玉ボケになる

ウメはひとつひとつが小さいので、大きくぼかすと丸い玉ボケになることがある。光が当たっていれば輝きを感じるきれいなボケになるが、すべてが玉ボケになるわけではない。光が少ないと玉ボケは出ないし、ぼかしすぎると丸くならない。光の強さとボケ量が丸い玉ボケを作り出すポイントとなる。

 

背景にも光が当たっていることで、きれいな玉ボケになる
ピントが合った花を見ると、逆光で光を透かして輝いている。花びらの先端は明るく、白く見える。ここでは背景にあるウメにも同じように光が当たっていて、明るい点光源のようになっている。これを大きくぼかすと丸い玉ボケとなり、背景がキラキラと輝いた。玉ボケが入ると爽やかさがアップする。

60ミリ相当 絞り優先オート(F4 1/125秒) +1.7補正 ISO200 WB:晴天

 

 

応用テクニック②

離れた位置から望遠レンズでウメの一部を狙い、空間に梅園の様子を取り入れる

背景の様子を見せるには、広角レンズを使って接写するといいが、広角ではあまり背景がぼけず、またウメは小さいので背景に埋もれてしまう。そこで、望遠レンズで引いて写してみよう。ウメとの距離が離れるぶん、ボケ量は減って背景の様子が見えてくるが、望遠なのでそこそこ背景はぼけて主役を目立たせることができる。

 

下の写真と同じ花を狙い、レンズの焦点距離も同じだが、存在感のある太い幹が背景のためウメは目立たない。

ウメと黒い幹が重ならないように構図を決める
背景を広めに写したいので引いた位置から、190ミリ相当の望遠域で枝垂れたウメを撮影した。枝先の花にピントを合わせ、背景にあるウメの木を大きくぼかしたが、ウメの木が並んでいる様子から梅園の雰囲気が伝わる。大きくぼけていても黒い幹や枝は目立つので、主役のウメに重ならないよう、ウメを左に、幹を右に配置した。

190ミリ相当 絞り優先オート(F2.8 1/200秒) +1補正 ISO250 WB:オート

 

 
写真・解説/吉住志穂