桜を撮影するとき、どのような背景にするかで、その明るさや色は大きく変化する。その際決め手となるのがそれぞれの背景に見合ったベストな桜色で、それをいかに引き出すかがポイントとなる。背景に応じたベストな桜色コントロール術をマスターして、傑作をモノにしよう。
プロの桜撮影術② サクラのピンク色が映える撮影テクニックを知っておこう! https://getnavi.jp/capa/special/291458/
背景の色の濃さ、明るさによってベストな桜色は変わってくる
桜の色を、メリハリをつけてくっきりと見せるか、しっとりとした落ち着いた色合いにするかは、背景ごとにうまく使い分けをしたい。青空や日陰を背景にするときは、花の明るさとのメリハリを生かして、はっきりとした色合いにしたい。そうすることで、桜らしい生命力や力強さ、春爛漫の爽やかさが表現できる。
一方、蒼白さが残る早朝の山肌や曇り空、霧がかった場所を背景にするときは、桜の優しい質感が生きる淡い色合いにしたい。桜と同系色の背景となるため、全体的に明るい色に包まれた軽やかな雰囲気や、強い光では表現しにくい淡い色みを引き出すことができるからだ。
背景に合った桜色とは?
ハッキリした色合いが似合う
暗い場所(黒)
青空など(濃い色)
背景の色が濃い場面では桜の色をくっきりと見せやすい。桜は白を基調とした淡いピンク色なので、濃い色を背景にするとその色が浮き立って見えるからだ。逆光でシルエットになった山や濃い緑色の森なら引き締まった色に、青空なら爽やかな色に仕上げよう。
淡い色合いが似合う
霧や朝もやなど(淡い色)
曇り空(白)
霧や曇り空など白や青白っぽいものを背景にすると、桜の淡い色合いが生きてくる。間接光による柔らかな光となるので、強い影が出ることも、白トビすることもない。その場の空気感に合った優しく落ち着いた色合いを目指して仕上げてみよう。
<曇り空・霧・早朝> 目で見た印象に近い淡い色合いを引き出そう
透き通るような淡い桜色はプラス補正で描く
曇天時は晴れの日に比べると桜色を出しづらい印象があるかもしれない。青空に輝く桜に見た目のインパクトではかなわないが、強い光のもとでは失われがちな淡い色合いにコントロールしやすいのが早朝、曇天や雨天時のメリットだ。特に曇り空や霧を背景とした場合、白を基調とした軽やかな色合いに仕上がる。背景が桜色と同系色となり、結果として優しい色合いが生きてくるのだ。
ただ背景が明るいため、桜自体が露出アンダーになりやすい。とりわけ桜に対して曇り空の露出は非常に明るく、補正なしでは桜が真っ黒になってしまう。目で見た印象はどんよりと暗い曇り空でも、桜との明暗差が露出に影響するため、思い切ったプラス補正が必要となる。このプラス補正が曇天時の桜色を引き出すカギだ。
朝もやを背景にするときは周囲の空気感が生きるタイミングを狙おう
日の出30分後
日の出直後
青みのある朝の雰囲気に染まる日の出直後に撮影
日の出前後の山並みが青く染まる時刻を選ぶことで、静けさに包まれた優しい桜色を捉えることができる。明るくなってから撮影したのでは白っぽい色になってしまい、朝らしい青みを帯びた雰囲気にはならない。現場の色温度を反映させるため、ホワイトバランスは晴天モードで撮影した。
桜の色がくすまないように、プラスの露出補正を
±0
+0.5補正
淡い桜色にして霧立つ春の軽やかな雰囲気に
霧を背景にして桜をフレーミングすると全体が白に近い明るい色となる。このため補正なしで撮影すると露出アンダーになって、桜がくすんだような濁った色になりがちだ。プラス補正すると淡い桜色が明るく仕上がり、霧に包まれた軽やかな雰囲気となる。昼間の強い光では出せない、桜の淡いピンク色をしっかりと描き出そう。
桜の代表とも言えるソメイヨシノは白色に近いため、夜明け前や日没後は淡く青みを帯びた色合いに仕上げたい。ホワイトバランスを太陽光(晴天・5200K)にするか、そこから色温度設定を若干下げると青みが出る。このとき、赤く染まった朝焼けを強調するために曇天モードで赤みを強くすると、青色に赤みが加わって濁りが出てしまう。全体が同系色なら問題ないが、色の対比を生かすときは安易なホワイトバランスの変更は避けるようにしたい。
青みのある桜色が、夜明け前の空気感を盛り立てる
夜明け前の光に包まれたソメイヨシノ。山並み付近の橙色と青みがかった桜の対比を生かすことで早暁の雰囲気を引き出した。橙色と桜色の明暗差が大きい場面ゆえ、階調補正機能を「より強め」にして撮影した。
ニコン D810 AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8G ED VR II 絞り優先オート F11 1/2秒 +0.7補正 ISO200 WB:5000K
曇り空が背景のときは大胆なプラス補正で色を出す
±0
+1補正
+2補正
思い切ったプラス補正が桜のピンク色を引き出すカギ
曇り空を背景にすると露出アンダーになりがちだ。空との明暗差がとても大きいため、桜の色を引き出すには大きなプラス補正が必要となる。このときは+2補正で花びらの白色とピンク色の花芯を忠実に再現し、爽やかな作品に仕上がった。ソメイヨシノのような白に近い桜色は、曇り空との相性が抜群だ。
淡い桜色を出すにはWBの設定も大切!
電球(3000K)
4000K
4800K
晴天(5200K)
4400K
色温度設定で青みをコントロール
ホワイトバランスの基本は5200Kの太陽光(晴天)。色温度設定を若干下げて青みを増したり、色温度設定を上げれば赤みを足すことができる。このケースでは4400Kで夜明けらしい青色となった。電球(3000K)モードで青くしたり、曇天(6000K)モードで赤くすることもできるが、極端な色になりやすいので注意しよう。
写真・解説/深澤武