春は花が咲き乱れる季節です。サクラ、ナノハナ、チューリップのほかにも、春を代表する花はたくさんあります。今回は、モモの撮影テクニックをご紹介します。モモの開花時期は、桜が咲く前の3月下旬から4月ごろです。桃の節句の3月3日は、旧暦ですと、ちょうど桃が咲き始める頃と重なります。
天候によって狙い方を変えよう。見晴らしのよい場所では風景的に狙うのもおすすめ
モモのピンク色はサクラよりも濃く、青空に映えるため、天気がよいと華やかな作品に仕上げられます。サクラはもちろん、ナノハナやタンポポなど、山里の花々も同時に咲くので春らしい華やかさを生かしやすい被写体です。曇天の日は高台から俯瞰気味に狙ったり、段々畑に連なるモモやスモモを切り取ったり、花のアップを狙ったりするなど、空を入れずに撮るとモモの色が引き立ちます。
甲府盆地や長野の丹霞郷はモモの生産地としてよく知られており、撮影スポットとして人気があります。これらは公園などとは違い、傾斜地の見晴らしのよい所に栽培されていることが多いため、切り取るだけでなく、背景の山並みを生かして風景的にも狙えます。
基本テクニック
広角レンズでモモの木の広がりを、望遠レンズでモモのボリュームを引き出す
果樹栽培を目的としたモモ畑では、障害物をクリアすることが大切だ。広角レンズで広がりを出しつつ、遠景の障害物を小さくして目立たなくしたり、望遠レンズの圧縮効果を生かしてモモや背景のボリュームを出しつつ、障害物をフレームアウトしたりするのが定石だ。どちらも枝ぶりを全て見せずに、画面外への花の広がりをイメージできるように切り取ると迫力が出る。
広角で見上げてモモの勢いを表現
斜めに伸びるモモの幹を前後に見せ、モモ畑の広がりとともに奥行きを引き出した。広角レンズでやや下から見上げるように撮ることで、青空の広がりも感じられる。この場所から望遠レンズで切り取ったら、遠景にあるパイプが目立ってしまっただろう。
21ミリ相当 絞り優先オート(F8 1/250秒) ISO200 WB:晴天 PLフィルター
モモと山を望遠で圧縮して捉える
遠景の妙高山の迫力を出すために望遠レンズでモモ畑を切り取った。枝ぶりがよく花つきのよいモモを選ぶだけでなく、背景に障害物がなく、すっきりと見せられるポイントを選ぶことが大切だ。背景の妙高山までシャープに見せるため、F11まで絞り込んでいる。
93ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/125秒) ISO200 WB:晴天 PLフィルター
応用テクニック①
木や障害物が多い果樹園では絞りを開けて背景を適度にぼかす
ポジションやアングルを調整しても障害物が写り込んでしまうときは、背景をぼかすことで目立たなくするのもよい方法だ。山を背景に入れて風景的に狙うときは絞り込むことが欠かせないが、モモの枝ぶりを切り取るような場面では、背景を適度にぼかすことでピンク色の花を背景から浮かび上がらせることができる。
F5.6 〇
F16 △
背景がぼけると花が画面上に浮かび上がる
下写真は青空の広がりを生かすため、F16まで絞ったので背景の支柱が目立ってしまった。まっすぐに伸びるモモらしい枝ぶりを切り取り、F5.6で撮影すると、背景をすっきりとぼかすことができた(上写真)。ピンクや黄色のボケが生きて、春らしい華やかな作品に仕上がった。
応用テクニック②
別の花の彩りを加えてカラフルなモモ写真に仕上げる
モモ畑の周囲にはナノハナやタンポポ、ヒメオドリコソウなど、カラフルな花が多く咲いている。一面のナノハナ畑ならパンフォーカスで花風景として狙えるし、タンポポやヒメオドリコソウなどの足元の花なら、前ボケとして生かすと華やかさや奥行きを引き出せる。春爛漫の華やかさを引き出せる脇役を積極的に活用しよう。
黄色は強いので画面いっぱいにモモを捉える
1本のモモの木を大きく見せつつ、一面のナノハナ畑の広がりを狙った。すっきりとした背景を選んでF11まで絞り込むことで、桃色と黄色の華やかな雰囲気を引き出せた。ナノハナの黄色は存在感が強いため、主役であるモモを画面いっぱいに捉えることが大切だ。
123ミリ相当 絞り優先オート(F11 1/80秒) −0.7補正 ISO200 WB:晴天 PLフィルター
タンポポの前ボケで彩りを添える
区画整理されたモモ畑は平面的で撮りづらく感じることがある。カメラを地面に置いてローアングルにし、絞りを開けて撮影することで、タンポポの前ボケを生かした。黄色の華やかさが加わり、前ボケにより遠近感も感じられるようになった。
110ミリ相当 絞り優先オート(F5.2 1/320秒) ISO200 WB:晴天 PLフィルター
写真・解説/深澤 武