秋から冬、翌年の春にかけて、シベリアなど緯度の高い地域から越冬のために渡ってくるカモの仲間。この時期、国内の池や沼、湖、河川は色とりどりの水鳥で賑わう。水辺のカモは森に棲む野鳥に比べて見つけやすく、撮りやすい被写体なので、ぜひ撮影に挑戦してほしい。
カモの種類は多く、国内で見られるものだけで20種以上、大型の水鳥であるマガンやヒシクイの仲間、ハクチョウの仲間を含めると30種以上が日本へ渡ってきて越冬する。ただし、カルガモやオシドリ、コブハクチョウなどもカモの仲間だが、一年中見られる留鳥だ。
水鳥は池や川の岸で休んでいることも多いが、そのまま撮ると背景に生い茂る草やコンクリート護岸が入り画面がうるさくなる。美しい水鳥の写真を撮りたければ、水面に浮かんでいる姿がよい。このとき、水面の映り込みが水鳥撮影のキモ。順光から斜光までの光線状態で撮れる位置を選び、背景の木々や空の映り込みが美しいポジションを見つけることが重要だ。
また、野鳥の色鮮やかな羽根は構造色(光の反射によって得られる色)によるものなので、太陽の光が当たっているときがいちばん美しい。撮影は晴れた日を選び、日陰を避けて撮ることが望ましい。
池の畔に座り、低いポジションからキンクロハジロを撮影。鳥が右から左へと移動しているので、C-AF(コンティニュアスAF)を使い、フォーカスエリアを左側の鳥の顔に合わせた。光線状態は順光で、青空が水面に映り、美しい絵になった。
オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO シャッター優先オート 1/2000秒 F8 −0.3補正 ISO1250 WB:オート M.ZUIKO DIGITAL 2× Teleconverter MC-20使用
【ポイント①】低いカメラポジションで生き生きとした表情を写す
池や湖に奥行きがあるとき、川幅の広い河川で撮るときは、低いカメラポジションで撮影すると水鳥の姿を背景から浮かび上がらせることができ、印象的な写真となる。また、人間を相手の目線の高さで撮ると自然な表情が得られるが、これは野鳥も同じ。特に動きのあるシーンでは、水面に近い低い位置から撮ると、水鳥の生き生きとした姿を捉えることができる。
小さなせせらぎにカルガモの姿を見つけた。あまり警戒心を持たない個体のようなので、思い切って水面スレスレまでカメラポジションを下げて撮影。背景の映り込みに余計なものが入らないように留意してフレーミングした。
オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO シャッター優先オート 1/1250秒 F4 −0.3補正 ISO250 WB:オート
水面に近い低いポジションで撮る際は、カメラを地面に置き、腹ばいになってファインダーを覗くか、液晶モニターを上方へ向けて画面を確認する。このときビーンズバッグや使い古したクッション入りのレンズポーチ(写真)などを下に敷くとカメラが安定し、機材を傷つけずに済む。
ため池で2羽の仲むつまじいコブハクチョウを発見。水面近くまでカメラポジションを下げ、レンズを向けると、こちらに向かってきた。2羽がバランスよく画面に収まるよう留意して撮影した。
オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO シャッター優先オート 1/1600秒 F8 −0.3補正 ISO640 WB:オート M.ZUIKO DIGITAL 2× Teleconverter MC-20使用
【ポイント②】高いポジションから撮るときは水面の映り込みを活かす
人間のアイレベルから水面を見下ろすように撮ると、水面に対岸の風景が写り込み、それが写真のイメージを大きく左右する。水鳥の姿を見つけたら、写り込む背景がどのようなものになるか、確認しながら撮影位置を選びたい。冬の時期、緑の葉をつける木は少ないが、常緑樹や松などがある場所であれば緑色の映り込みが、晩秋であれば赤や黄色の映り込みが期待できる。また、人工的な建物であっても、レンガ造りのような落ち着いた色調の建物であれば、キレイな映り込みが期待できる。
水面の模様は風の有無や水鳥の動きによっても波立ったり、波紋が生じたり、変化する。風のない穏やかな日は水鏡のように滑らかな情景になるし、水鳥が羽ばたくと、同心円状の波紋が広がり、美しい模様を生じさせる。いずれの場合も順光のときの映り込みが美しい。
夕方、羽づくろいを始めたマガモの群れの中の一羽に狙いを定め、その動きを追いながら撮影。曇りがちであったが、サッと日が差した瞬間、水面に対岸の松の葉が美しく映り、マガモの頭の深い緑色の羽根も美しく輝いた。
オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO シャッター優先オート 1/3200秒 F5.6 −0.3補正 ISO4000 WB:オート M.ZUIKO DIGITAL 2× Teleconverter MC-14使用
アイレベル以上の高いカメラポジションから池や湖、河川で水鳥を撮るときは、対岸の木々や建物の映り込みに留意して撮影する位置を選ぶ。
池や川の対岸に紅葉した木がある位置でカモが来るのを待っていると、マガモが画面に入ってきた。水鳥の動きを予測して、水面の映り込みが美しい場所に来るのを待って撮るのも1つの方法。
オリンパス OM-D E-M1X M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO シャッター優先オート 1/800秒 F8 −0.3補正 ISO1600 WB:オート M.ZUIKO DIGITAL 2× Teleconverter MC-20使用
【ポイント③】AF設定はコンティニュアスAFで顔を狙う
初心者は水面に浮かぶ水鳥をS-AF(シングルAF)で撮りがちだが、浮かんでいるだけでも水の揺らぎにより、前後左右と常に動いているのでC-AF(コンティニュアスAF)で撮影する。このときAFエリア(フォーカスエリア)の設定も重要で、あまり広い範囲をカバーする設定では、ピントを合わせたい顔(目に合わせるのがベスト)ではなく、ハッキリとした模様があり、測距しやすい胴体にAFが合ってしまうことが多い。メーカー、機種によってフォーカスエリアの広さや呼称が異なるが、複数の測距点を組み合わせたAFエリア方式を選び、そのAFエリアを水鳥の顔の部分に移動させて撮影を行うとよい。
オリンパスであれば「グループ9点」、キヤノンであれば「領域拡大AF」や「ゾーンAF」、ソニーであれば「拡張フレキシブルスポット」、ニコンであれば「ダイナミックAFモード」や「ワイドエリアAF」、パナソニックであれば「カスタムマルチ」や「ゾーン」、富士フイルムであれば「ゾーン」を選択する。
AFエリア(フォーカスエリア)は複数の測距点で構成される「ゾーンAF」や「ワイドエリアAF」などを使い、そのAFエリアを水鳥の顔の位置に来るように設定する。写真はオリンパス OM-D E-M1Xに搭載された「グループ9点」のAFエリアのイメージ。