新型コロナウイルスの影響で撮影に出かけられなくて……とお嘆きの方も多いと思うが、そんなときこそ気をつけないといけないのがカメラのコンディション。最近では電子機器的おもむきが強いが、カメラは複雑なメカでできた機器であり、精密な光学製品でもあるので、ちょっとしたことで調子が悪くなったりもする。
そこで今回は、カメラやレンズと長く付き合っていくのに欠かせない注意点をいくつか紹介していこう。キャリアの長いカメラファンには耳タコな情報かもしれないが、大事な機材の体調管理は持ち主の責任。基本をおろそかにせずにしっかりチェックしておきたい。
使わずに放置すると……
カメラやレンズにまつわるトラブルで厄介なのはカビの発生だ。カビは一度生えると増える一方。しかも、カビが生える=カビが生えやすい環境なわけなので、ほかのカメラやレンズも被害を受ける可能性があるから怖い。
ひどくなるとレンズのコーティングをだめにすることもあるし、カビ取りは分解清掃となるので修理代も高くなりがち。見つけたら早急に修理に出すのがおすすめだ。これからの時期は気温も湿度も上がってくるから特に注意したい。
また、マニュアルフォーカス時代のいわゆるオールドカメラやオールドレンズの場合は、使わずにいるとグリスが硬くなったり、逆に油がまわらずに動きが悪くなることがある。昔の機械はほどよく使ってあげる前提で設計されているので、放っておくと調子が悪くなったりもする。
オーバーホールすれば直るとはいえ、面倒を見てくれるところを見つけるのも徐々に難しくなりつつあるし、それなりにお金もかかる。なるべくなら自分でどうにかできる範囲ですませたいところだ。
最近のデジタルカメラなら平気かというと、決してそんなことはない。ちょっとした油断で起きるのがバッテリー切れによる設定の消失だ。装填しているバッテリーと、カメラ内のバックアップ用バッテリーの両方が切れてしまうと、機種にもよるが、メニューの設定内容がリセットされてしまうことがある。
もちろん、設定をやりなおせばいいだけなので、物質的・金銭的な問題はないが、撮ろうと思ったタイミングで発覚することになるので精神的なダメージのほうが大きい。中級以上の一眼レフやミラーレスカメラだとメニューの項目数が多いので、再設定には手間も時間もかかる。甘く見ると痛い目にあいかねないのだ。
機材をトラブルから守る方法
普通のユーザーにできることはそう多くない。が、ほんの少し手をかけるだけでトラブルを回避できることも少なくない。ようは日ごろのチェックが重要なのだ。
① カビ予防には湿気対策が効果的
カビの予防は湿気への対策がいちばんだ。手っ取り早く、かつ安上がりなのが密閉できる容器に乾燥剤といっしょに入れること。密閉可能な容器と食品用の乾燥剤はホームセンターなどで手に入るし、価格もそう高くない。
ただし、乾きすぎもよくない。オールドカメラやオールドレンズは乾燥させすぎると貼り革が割れるなどのトラブルが起きることがあるので、心配な人はほどよい湿度に保ってくれる防湿庫をおすすめする。
それなりにお金はかかることになるが、レンズ3、4本分のカビ取り費用と比べれば安上がりなくらいなので、室内の湿気が気になるなら買ったほうが安心だ。機材をホコリから守ってくれて、見映えもいい。
② 長期間使わないときはクリーニングを念入りに
使ったあとの汚れにも注意したい。皮脂や汗はカビやサビの原因になるし、時間が経つほど落としにくくなる。
使用後はなるべく早くクリーニングするのが鉄則で、普段はクリーニングクロスなどで乾拭きするだけで十分だが、長期間使わないのがわかっているときは念入りにきれいにしておきたい。
しつこい汚れはカメラやレンズ専用のクリーナー液を使用する。アルコールなどの溶剤は腐食や変色などを引き起こすことがあるので注意してほしい。
上級者向けではあるが、水拭きするのも手だ。クリーニングクロスなどに水を含ませて拭き(固く絞ること)、さらに乾いた布で水気を拭き取ったら乾くまで放置する。ただし、カメラやレンズの内部に水気が入るといけないので、不慣れな人は避けたほうがいいだろう。
③ オールドカメラは定期的に空シャッターを切る
オールドカメラでトラブルが起きやすいのがフィルムの給送系とシャッターまわりのメカ。動かさずに長期間放置すると潤滑油が切れた状態になる。メカの動作を滑らかにするための潤滑油がなくなれば動きがギクシャクしてしまうし、部品の傷みも早くなる。
こうした油切れを防ぐには月に数回でもいいので空シャッターを切るのが効果的。巻き上げてシャッターを切る動作を何度か繰り返して行うことで、潤滑油がメカ全体にまわればOKだ。もし、シャッター音や操作時の感触に違和感がある場合はオーバーホールを検討すること。また、フィルムが入ったままにしておくのもよくないので、1か月以上経っているなら現像に出すなりあきらめて捨てるなりする。
レンズはフォーカス系のメカや絞りまわりが要注意ポイント。内部のヘリコイドやズームカムのグリスが硬くなると貼り付いたように動きが悪くなる。絞りはメカ駆動のものはバネを使っているので、長期間の放置は考えものだ。こちらもカメラ同様にちょくちょく動かしてやることでコンディションを保てる。
電子化以降のAF一眼レフでも、ときどきは動かしてあげたほうがいいので放置しないように。
④ ときどきバッテリー残量を確認
デジタル一眼レフやミラーレスカメラもメカの動きはときどきチェックしたい。そのついでにバッテリーの残量も確認して、残り少ないようなら充電しておくとバッテリー切れを防げる。
今のカメラはバッテリーさえ入れ替えれば普通に動いてくれるが、前述のとおり、メニューの設定が消えてしまうと辛気くさいことになるので用心に越したことはない。
最近はカメラの設定内容をメモリーカードに書き出したりPCなどに保存できるものも登場しており、いざというときにはバックアップから復元も可能。だが、日付や時刻がリセットされるだけでも面倒くさいと感じるなら、バッテリー切れにならないよう気をつけたい。
【まとめ】カメラやレンズのコンディションを保つのはユーザーの仕事
繰り返しになるが、カメラやレンズのコンディションを保つのはユーザーの仕事。大事にしたいなら保管の方法についても検討すべきだと思う。
ついでながら、カメラバッグや三脚なども使いっぱなしにしていることが多いだろうから、機会をみてきれいにしておくといい。
バッグの内部は案外にゴミやホコリがたまっているものだし、たまに行方不明だったレンズキャップや端子カバーが発掘されたりもするからぜひお試しいただきたい。