作品発表の場としてInstagram (インスタグラム) を活用するフォトグラファーが増えています。そこで、インスタグラムをメインに活動している新進フォトグラファー5人にインタビュー。写真を始めたきっかけ、機材のハナシ、そして今後のビジョンなど、インスタグラムのプロフィール欄には収まり切らない写真に対するアツ~い想いを語っていただきました。第2回は堂園博之さん・堂園伸子さんです。写真集にもなった可愛い白文鳥BECKの撮影秘話を大公開!
いま注目したい! インスタグラムで活躍する新進フォトグラファーたち
- 第1回 : Shota @umestagram
- 第2回 : 堂園博之・堂園伸子 @beck_book
- 第3回 : うちだなおこ @chiaoking
- 第4回 : 啝 Wa @neji_maki_dori
- 第5回 : 築島好古 @tukky1104
堂園博之・堂園伸子
堂園博之さんは1981年生まれ。奥様でイラストレーターの伸子さんとともに「BECK」を制作。東京・杉並区に、愛犬と遊びながら撮影できる、犬専門フォトスタジオ「わんわん ありがとうの日」を構えている。@beck_book
白文鳥のBECKをモチーフに写真、グラフィック、イラストによる3つのシリーズを展開。アーティスティックな表現で、白文鳥の世界がより身近に感じられる。
色づかいにこだわって繊細なニュアンスを表現
撮影はBECKが馴染んだ止まり木の上で行なう。背景色はPhotoshop上で作成。撮影やデザインの仕事を始めて色の知識の必要性を感じ、ICD認定・PANTONE色彩学を学んだ。自分の感覚が理論的に実証されたことで、より自由に配色が選べるようになった。
一緒に暮らす白文鳥の「BECK」。ミニマリズムの世界観を創り上げた
インスタグラムで発信することで、ニッチな世界で共通の「○○好き」を共感できる人とつながることができ、僕の世界が変わりました。インスタは作品の世界観をわかりやすく伝えられる便利なツールでもあります。
以前から、装飾を剥いでシンプルに写すミニマリズムの概念を写真で表現したいと考えていて、ポートレートや広告の仕事をする中で、人物を引きで撮ろうとすると、かなり大きなスタジオやロケーションでないと撮れないという制限がありました。そんなとき、白文鳥「BECK」と暮らし始めて、小さな小鳥となら思っていたミニマリズムの世界観が、小さなセットで表現できると閃きました。
初めは背景や小物も実際のセットを用いていたが…
最初は背景の色紙を画材店で選び、木のボタンや木製のアルファベットなどの小物を買って撮っていましたが、紙の色にも制限があり微妙なトーンまでは再現できず、小物にもコストがかかりすぎる問題がありました。そんなとき、背景の色はパソコンで作ればいいし、妻がイラストが上手だったので小物は描いてもらえばいいと気づきました。そのときから、白文鳥の写真+イラストという作風が生まれ、表現できる世界観が一気に拡がりました。
撮影は、自作したBECK愛用の止まり木に乗ってもらいます。彼も安心するので、しばらくは止まり木の上にいてくれますが、長くて10秒ほど。カメラのほうに飛んできては、また戻ってもらうを繰り返します。小鳥なので行動も素早く活発です。長く一緒に暮らしているからこそ彼の行動が想像できることもあり、連写で撮るのではなく、可愛い仕草や正面を向いた瞬間を狙ってシャッターを切ります。1回の撮影で、インスタグラムへ投稿する半年分ほどの400枚ぐらい撮りためます。
白壁を背景に斜光を生かし立体感を出す
撮影場所は寝室の白壁の前。左側に窓があり、そこから差し込む自然光で撮影する。斜光を使うことで被写体に立体感が生まれる。白い背景に白い鳥を印象的に浮かび上がらせるポイントでもある。また同じ光を使うことで、写真に統一感が出せるのも理由の一つ。
視覚の効果を生かし3シリーズを展開する
インスタグラムは3列なので、BECKだけの写真と、イラストとBECK、グラフィックアートの3シリーズを、配色を考えながら縦にキレイに並ぶように投稿しています。新しく1枚入れると、シリーズがざっと右に一列ズレる。それが僕にはとても気持ちいい。
以前、丸い止まり木にBECKが止まっている「いろとりどり」というシリーズを作りました。公募のNEW JAPAN PHOTOで入選し「世界に紹介したい日本の写真家」として、世界8か国で展示をしていただきました。でも、インスタグラムでこのシリーズは、あまり「いいね」が伸びず、また逆にアートの世界では、BECKとイラストのシリーズは評価されませんでした。この経験から「いいね」数と、作品の評価はイコールではないことに気づき、今はBECK作品に好感を持っていただける方とのコミュニケーションツールとしてアカウントを稼働しています。
最近、真っ白なビションフリーゼという犬種の「モルバン」と暮らし始めました。これからインスタグラムで作品を投稿していきます。白くて丸いフォルムなので、いろいろなイメージが拡がりそうで楽しみです。もちろん、BECKも続けます!
イラストを付けた作品やグラフィックアートも制作
BECKの3シリーズ。撮影したBECKの仕草からイラストで描くモチーフを発想していく。「ランドセルを背負わせたらカワイイとか、パッと見て浮かぶイメージを大切にしています」。イラストを付けるようになってBECKの仕草の面白さに気づき、微妙な表情の違いを撮るようになった。
〈取材〉市井康延