作品発表の場としてInstagram (インスタグラム) を活用するフォトグラファーが増えています。そこで、インスタグラムをメインに活動している新進フォトグラファー5人にインタビュー。写真を始めたきっかけ、機材のハナシ、そして今後のビジョンなど、インスタグラムのプロフィール欄には収まり切らない写真に対するアツ~い想いを語っていただきました。第3回は、うちだなおこさんです。
いま注目したい! インスタグラムで活躍する新進フォトグラファーたち
- 第1回 : Shota @umestagram
- 第2回 : 堂園博之・堂園伸子 @beck_book
- 第3回 : うちだなおこ @chiaoking
- 第4回 : 啝 Wa @neji_maki_dori
- 第5回 : 築島好古 @tukky1104
うちだなおこ
東京在住。現在は忙しさから「あまりインプットができていない毎日ながら、そんな日々も自分を形成する大きな糧」と捉える。そのポジティブさがうちださんの写真の魅力の一つ。インスタグラムのフォロワー数は7.9万人 (2020年7月8日現在)。@chiaoking
「一児と一犬のママ」が見つけたひとコマが綴られる。身近な日常と旅、そして子どもとの時間。日々の生活がちょっと素敵に彩られる。
心に響いた風景をスクエアに切り取る
スウェーデンのストックホルムから近いユールゴールデン島と中世とファンタジーが味わえるゴットランド、港町のヨーテボリで撮影。友人のサマーハウスを訪ねた個人的な旅。撮影はハッセルブラッド。
フィルム写真ならではの温もりある表現に惹かれる
最初はスマホでランチなどの料理を撮り始め、それをインスタグラムにアップしていました。友人たちとの情報交換にフェイスブックを使っていたので、自然とインスタグラムを選びました。
見てくれた人からコメントが届き、そんなやり取りが楽しい一方で、カメラが捉える光との遊びに惹かれていきました。レンズによって違う描写ができて、それもたくさんの種類があると知ってますます引き込まれました。
もともとメカニックなことが好きなので、最初はカメラを手に取扱説明書をくまなく読んで知らない専門用語を調べていました。そうこうしているうちにオールドレンズの存在を知り、当時はそれを使うにはフィルムカメラしかなかったので、そちらにも手を伸ばしました。撮ってみたら、フィルム写真の温もりある表現にも心惹かれ、中判カメラのハッセルブラッド501CMや、35mm判はライカM5を選びました。
インスタグラムに載せていたのは、やはり日々のランチや可愛い小物、ペットの犬といった身近なものです。微妙な光の雰囲気にコメントをくれる方がいて、それでより光を意識するようになったのかもしれません。
フォロワー数など、始めたころは全く意識していませんでした。フィルムカメラで撮ったものをアップし始めると、アジア圏のユーザーがたくさんフォローしてくれるようになり、急激に伸びました。1万人を超えたあたりから、1日に数百人ずつ増えていった印象があります。
思いがけず、仕事の依頼が舞い込むようになる
ある日、設計事務所からホームページ用の写真を撮ってほしいという連絡が入りました。その後、飲料メーカーから商品の撮影を依頼されたり、フォトグラファーとしての仕事が入るようになりました。今は子育て中なので、自宅でできる仕事を主に手掛け、雑誌の連載やカメラ関係の新製品の紹介などをさせてもらっています。
インスタグラムが仕事のツールという側面も出てきて、一時はプレッシャーも生まれ、「好感度」を意識するようにもなりました。友人と「これを載せたらフォロワーが減るよね」とよく話していた記憶があります (笑)。笑いながらも真剣に向き合っていました。
大切にしているのは光。心地よい優しいイメージで描く
載せる写真はインスタグラムの3列写真のレイアウトを大事にしています。人物と自然、引きと寄り、色味を考え、好きなバランスで並べていきます。プライベートでの一番の被写体は娘ですね。日々の成長をカジュアルに残したい。その撮影が新鮮で、写真を始めたころの気持ちが味わえています。
私は韓国の作曲家イルマの『River flow in you』というピアノ曲が好きで、そんな心地よい優しいイメージの写真を撮りたいと思っています。被写体は自分が望む風景を探しますが、逆にそれしか撮れないのかもしれない。重要なのは光の存在で、自分の好きな光がわかれば、それが写真に投影されて納得のいく1枚が撮れるのかなと感じています。今後は自分の内面を投影できるスタイルにもしていきたい。日々、試行錯誤を繰り返しています。
人物写真も光と色彩にこだわる
柔らかい光と色味はフィルムカメラで培った感性が生きている。ちなみにフィルムの現像は東京・白金のエビスカメラを使う。ソニー α7Rにライカ ズミクロン 50mm F2を装着。
〈取材〉市井康延