作品発表の場としてInstagram (インスタグラム) を活用するフォトグラファーが増えています。そこで、インスタグラムをメインに活動している新進フォトグラファー5人にインタビュー。写真を始めたきっかけ、機材のハナシ、そして今後のビジョンなど、インスタグラムのプロフィール欄には収まり切らない写真に対するアツ~い想いを語っていただきました。第4回は、啝 Waさんです。
いま注目したい! インスタグラムで活躍する新進フォトグラファーたち
- 第1回 : Shota @umestagram
- 第2回 : 堂園博之・堂園伸子 @beck_book
- 第3回 : うちだなおこ @chiaoking
- 第4回 : 啝 Wa @neji_maki_dori
- 第5回 : 築島好古 @tukky1104
啝 Wa
2006年より廃墟の撮影を始め、2012年ごろから星景と組み合わせた「廃墟星景写真」を撮影。2015年の個展「廃墟星景写真展 失われた場所プラニスフィア」を皮切りに、作品展示を続ける。2019年に「ねじまき鳥ドローン部」を立ち上げ、全国の廃墟をドローンで撮影中。@neji_maki_dori
国内の廃墟を中心に作品を投稿。星景と絡めたりドローンで空撮したりするなど絵作りにこだわっている。
森の廃レールを幻想的に表現
岡山県のとある森の中に残るサイクルコースターのレールの跡。覆い茂った植物と錆とのコントラストが美しく、朝靄の中で幻想的な写真となった。近年、太陽光発電設備の敷設に伴い、このレールは撤去されてしまった。
イメージを膨らませ同じ場所に何度も通う
2006年より、いわゆる廃墟の写真を撮影しています。使われなくなった建物や産業遺産、戦跡など、撮影地は国内が中心です。気になった場所をウェブサイトやSNSで調べて被写体を選定し、事前にかなり細かく計画を練ってから撮影に臨みます。特に星景と絡めるときは、月齢や天気、時間が重要になってくるので、撮影計画は欠かせません。
具体的には、まず月齢を調べて撮影候補日を決めます。月の光が強すぎると星が写らず、逆に弱すぎると地上の被写体の露出が厳しくなるので、ほどほどの月齢が好みです。さらに日没の時間や月の位置などが確認できるソフト (Sun Surveyorなど) で撮影時間を検討します。現場では天候に左右されるので、直前まで気象状況を注視し、撮影に向かうかどうかを判断しなければなりません。
今回紹介している星景の写真 (星と雪に包まれた長野の廃鉱山) は、夜も含めて何度も通っているお気に入りの場所で、あえて雪景色にこだわって撮影したものです。実はそれまでに何度か計画を立てたものの、月齢と天候の条件が揃わずに断念しているんです。冬季は車道が閉鎖されてしまうことがあり、アクセスは徒歩になる。片道7時間ほどかかるので、日が暮れる時間に合わせて現場に到着できるように出発しなければなりません。なかなか決心がつかなかった部分もあります。でも、2017年にやっと良いタイミングを見つけて撮影することができました。
星と雪に包まれた長野の廃鉱山
この鉄塔群はかつての鉱山と麓の村を結んでいた索道の跡である。冬季は豪雪によりここに到る道が封鎖されており、外界から途絶されたエリアとなっている。スノーシューを履き、往復15時間をかけて撮影に向かった。
許可が取れずに撮影を諦めることも
どちらかというと、廃墟の中を探索していくというより、外から眺めるほうが好きですね。星景の写真やドローンによる写真を撮り始めたことで、その傾向がさらに強くなりました。表現としてこだわっているのは、これは皆同じかと思いますが、やはりどこかで見たような写真ではなく、オリジナリティー。季節を変えたり時間を変えたりして同じ場所に何度も通っているのもそのためです。
撮影で最も苦労している点は、場所にもよりますが、やはりアクセスの難しさです。またそれ以前に、立ち入り禁止で撮影許可が取れずに諦めざるを得ないことも。夜間の撮影時は、天気が良さそうであれば基本的に車中泊ですが、近隣の方々に迷惑をかけたり不安を感じさせたりすることがないように行動には気をつけています。
無人島に残る施設跡をドローン撮影
この廃墟の正体は、長崎県の島にある排気竪坑施設。地下に広がる海底炭鉱の換気を行なっていたという。朝焼けの中、ドローンにより撮影。
“バズる”ことなど気にしない
インスタグラムは2012年から始めました。当初は正方形のフォーマットのみに対応したものでしたので、新鮮に感じたのを覚えています。現在は縦位置・横位置写真も投稿できますが、スマホでの閲覧が基本となるためか、縦位置のほうが反響が大きいですね。
ツイッターと比べるとリツイートに相当する機能がなく、そこまで拡散力がないところがインスタグラムの魅力でしょうか。「いいね!」の数や“バズる”といったことを気にせず、好きな写真を好きなように投稿していく使い方が自分に合っています。2016年に導入されたストーリーズ機能も気軽に日常の写真を投稿できて楽しいです。