ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鶴巻育子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
〈講評〉鶴巻育子
あそぼ? (4枚組)
岡﨑ひなた (和歌山県田辺市 / 和歌山県立神島高等学校3年 / 写真部)
海の近くに住んでいる子どもを撮影した組写真。さすがフォトコン入選の常連さん! まず、インパクトのある1枚目の写真で目を引きました。ほかの3枚も光の捉え方、アングル、被写体との距離感と絶妙なバランス。主役の女の子のアグレッシブな行動に対し、男の子たちのテンションの低さとの対比もしっかり狙っているところが抜け目ない。
気になったのは、ある日の夕方の数時間で撮影したと思われます。作品づくりは必ずしも時間をかければいいというわけではないのですが、短時間で撮影した写真の中で面白い写真を集めたんだなという印象を受けました。また、男の子が一人で縄跳びをしている3枚目の写真は、女の子が主役の中でちょっと浮いてしまいました。枚数がもっと多かったら、このシーンも生きてくるかもしれません。4枚に制限せずに、組写真に取り組んでみるとよいかもしれませんね。
午後のひととき
竹下友梨 (島根県大田市 / 17歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
白いシャツと赤い口紅が印象的で魅力的なポートレート。半逆光で顔に陰影がつき立体感も出ています。笑顔のポートレートもいいですが、その場合、表情や可愛さだけを見てしまいがちになります。この作品のように、デッドパン (無表情) で撮影すると、人物の内面が見えてきたり、かえって撮影者との関係性が想像できたり、また、見ている私たちと対峙しているような感覚になったりと、見る人によって捉え方が広がります。
この写真はスナップ的なポートレートですから、そこまで考えて撮影していないと思いますが、光をもっと読んだり、画角を微妙に変えたり、細かい部分に気を配ることで、よりイイ写真を撮ることができると感じました。
あれ、なにかな…?
中田大介 (愛知県小牧市 / 15歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
美人な猫です。凛々しい表情は、何を見ているのか気になります。いい光が当たり、黒と白の毛並みがキレイに出ていて、長いヒゲも目立ちます。
撮影場所が自宅と記載されていたので、飼い猫でしょう。自分の子どもやペットは、どんなときでもかわいく見えるものです。確かに、この猫ちゃんはとてもかわいい。しかし、かわいいだけの猫の写真では、他人が見たときにそれ以上の共感を得られません。例えば、見たこともないユニークな仕草をしている瞬間とか、もっと引いて家の中の様子を一緒に写して猫との暮らしの風景を見せるとか、写真の中にもう一つ要素を加えてみましょう。
ひと足おくれて
宮武侑加 (香川県坂出市 / 香川県立坂出商業高等学校2年 / 写真部)
バーベキューの食べ残しのお皿に留まる1匹のハエ。けして美しいとは言えない場面ですが、美の基準や興味は人それぞれ。面白い視点です。何かに反応した瞬間にカメラを向けるフットワークの良さは、写真を撮る者、特にスナップシューターにとっては必要な素質です。
フォトコンテストとなると、正直なところ、この写真で入選することはなかなか難しいかもしれません。でも、この先も、このまま自分だけが持つ視点や美的感覚で世の中を見て写真を撮り続ければ、面白いモノができそうな気がします。上手な写真を撮ろうと思わないでいいのです。自分の世界を写してほしいです。
何とな〜くですが、ヴォルフガング・ティルマンズの作品を思い出しました。
古き良き (3枚組)
三原由貴 (広島県庄原市 / 16歳 / 広島県立庄原格致高等学校 / 写真部)
商店街の古いお店や建物を撮影した組写真。古いものや懐かしいものを見ると、心が和みます。正面から平面的に捉え、画面いっぱいに建物を入れる、撮影するときにルールを作ったことで、統一感が生まれたのがよかった。
このように似た被写体を揃えた組作品の場合は、もう少し数が欲しいですね。これを機に、古い建物を撮りためてみてはいかがでしょう。それと、もう一つ気になったのが応募票のコメント。「古い」と一言だけでした。なぜ、この古い建物が気になって撮影したのか、その動機や撮影しているときの気持ちなどが書いてあると、作品の良さがより伝わります。