プロの写真家はRAW現像で仕上げることを前提に撮影することも多い。しかし、その工程は意外にも簡潔だったりする。風景写真家の深澤さんが行なっているRAW現像を3ステップで紹介する。
深澤 武 × Capture NX-D × 落葉
水面のテカリをPLや露出で抑えつつ現像時にも部分調整
滝つぼに落ち葉が集まり、ゆっくりと渦を巻いていた。スローシャッターにすることで渦の円弧を表現できるが、数秒程度のシャッター速度では落ち葉がぶれただけの写真になってしまう。落ち葉が流れるイメージに仕上げるには少なくとも10秒以上、30秒や1分といった露光時間が必要になる。
ただ日中だとISO100でF16まで絞り込んでも数分の1秒から数秒程度にしかならないので、NDフィルターが欠かせない。円弧狙いで撮影に行くときは、ND16やND200といった濃度が高めのフィルターを用意して行こう。このときはND200を使い、1分露光で撮影した。
晴天だと光が当たっている所と木々で陰になった所の明暗差が大きく、特に直射光によるテカリが強く出やすい。NDフィルターでスローシャッターにしても、柔らかな流れと強い光が不協和音を放ってしまう。曇天の日にPLフィルターを使ってテカリを抑え、さらにRAW現像で目立たなくしたい。
滝や渓谷の撮影では、水流などのハイライトの階調をしっかり残せる露出を心掛けている。撮影時は暗めに撮って水流の階調を残し、現像で明るくしたほうが、初めから明るく撮るよりも水流の階調を残しやすい。今回はテカリが強く出すぎないように、やや暗めの露出にした。また紅葉の色よりも目立つ明部を画面に入れないようにしている。木々がまばらで光が強い所、水面のテカリが強い所など白い部分があると紅葉の色が負けてしまう。
露出補正とトーンカーブで落葉を、テカリはコントロールポイントで調整
使用ソフト : ニコン Capture NX-D (Ver.1.6.3)
ステップ① 露出補正で明るくして、紅葉の優しい色を引き出す
水面のテカリが白トビしないよう暗めに撮影したので、露出補正 (+2/3EV) で明るめに調整した。細かい調整をした後に再び露出を変更することもあるので、とりあえず全体の明るさを自分のイメージに近づけるようにする。ここでは黒の締まりが残るくらいをイメージして、明るさを整えている。
ステップ② ややネムイ感じなので、中間調からハイライトを明るくしてメリハリを出す
黒の締まりを維持したまま、紅葉を明るくしてメリハリを出したい。トーンカーブのハイライト側を上に持ち上げて明るくし、シャドー部は黒の締まりが維持されるようにやや下に下げる。少しコントラストを付けることで紅葉にメリハリが出た。現場の雰囲気を大事にするため、彩度や色相はあまりいじらず、コントラスト調整程度に留めることが多い。
トーンカーブを使うメリット
明るさは露出補正機能、コントラストはコントラスト機能でも調整できる。トーンカーブは、シャドーはやや暗め、中間調やハイライトはしっかり明るくなど、それぞれの明るさに応じてメリハリをつけて調整できるのがメリットだ。なんとなく調整するのではなく、シャドーの締まりをしっかり出す、紅葉は優しい色が生きるような明るさなど、明確な目標を持って調整するとスムーズに行なえる。
ステップ③ カラーコントロールポイントを使って、テカリを部分的に暗くして目立たなくする
中間調からハイライトを明るくしたので、テカリが目立ってしまった。カラーコントロールポイントを2か所配置し、明るさ (B)を「-38」にしてテカリを目立たなくする。コントロールポイントの範囲を大きくすれば効果のかかる部分を広げることもできるが、複数個のポイントを置くことで、ほかの場所への影響を最小限に部分的な調整を行なえる。これで完成。