『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年1月号掲載の入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「かなしみ」
宮武侑加 (香川県坂出市 / 坂出商業高等学校2年 / ジャーナル研究部)
太腿に当たる一筋の光が生きています。色味や露出もぴったり。タイトルとコメントでさらにこの作品に興味が湧きました。「一人で“頭を冷やしながら”練習を見ていた」と書いてありました。果たして、実際彼は頭を冷やすためにベンチにいたのでしょうか。写真と言葉の関係の曖昧さが興味深い作品だと思いました。
2席「妹の憂鬱」
長谷川遥加 (愛知県小牧市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校)
どんだけ写真に写りたくないのか。嫌々写真に写る作者の妹。こんな表情をされても、妹を写真に収めようとする作者のしつこさと妹への愛が素晴らしいです。時間が経ってこの写真を見たとき、この時が懐かしく感じられるのが写真のマジックです。
3席「無言の食卓」
渡邊弘毅 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
料理をお皿に盛ることもなくお鍋のまま食卓に置いていたり、豪快な食卓です。その食卓を囲みひたすら食事をする家族が不気味です。雑然とした台所は生活感丸出しです。写真全体に「生」が埋め尽くされている力強い写真です。
入選「16歳の思い出」
瀧本乙華 (香川県坂出市 / 16歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / ジャーナル研究部)
芝居じみた匂いがしたのは、撮られ慣れていないからだそうですが、その違和感が10代の初々しさを感じる結果に。高いビルも入道雲も風になびくシャツも全て演出の一部のように見えてきて面白いです。
入選「愉快な父」
門田真亜子 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
日常なのに、非日常のように見える違和感が不思議。よく見るとメガホンとコーディネートしたようなサンダルも変です。ホースや屋根の色合いがアクセントとなった構図もよかった。
入選「全力」
大田 築 (新潟県長岡市 / 17歳 / 中越高等学校)
闘牛のシーンですが、肝心の牛が黒く潰れていてほとんどわからなく、そのぶん人のほうが目立ち、大人がただ騒いでいるだけのようにも見えます。説明的になっていないのがこの写真の魅力です。
入選「ちょこんとてんとうむし」
長谷川 楓 (愛知県岡崎市 / 光ヶ丘女子高等学校1年 / 写真部)
ファンタジーな色合いの背景と大きなボケによって、可愛らしい世界観を作り出しています。少し指先を広げるなどして手の表情が出ていたら、より物語性が生まれ背景がキレイに見えたでしょう。
入選「アラス」
中村真梧 (新潟県長岡市 / 17歳 / 中越高等学校)
この場所のインパクトに負けないカラスはさすがの存在感。カラスは撮られていることに気付いているようですが、縦位置の構図が緊張感を生み、作者とカラスの視線を強く感じられる効果が得られました。
入選「記憶」
上村凜桜 (香川県坂出市 / 15歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / ジャーナル研究部)
被写体の特徴あるフォルムがモノクロ表現によって際立っています。事件や面白い出来事を見つけようとせず、物語性を作らず、目の前に現れた光景をただ気持ちの赴くままに素直に捉えているのが清々しいです。
入選「海と遊ぶ」(4枚組)
渥美満優子 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校1年 / 写真部)
どの写真も生き生きしていてこちらも楽しくなります。水平が取れていなかったり、頭や身体が画面からはみ出していたりするのはダメな写真と言われがちですが、この場合はリアルさが出ていて効果的です。
入選「午後5時」(4枚組)
芝田茉尋 (和歌山県田辺市 / 和歌山県立神島高等学校3年 / 写真部)
顔馴染みなのでしょうが、都会ではこんな簡単に子どもを撮ることが難しい今、貴重な写真にも思えてきてしまいます。それにしても、なぜ子どもは訳もなく走るのでしょう。面白い生きものです。
入選「いつまでも。」
横矢結奏 (和歌山県田辺市 / 和歌山県立神島高等学校2年 / 写真部)
なんて素敵なご夫婦でしょう。愛が溢れています。羨ましいです。腰に回したおじいさんのぎこちない手が、かわいいですね。周囲の雰囲気を盛り込んだ画面構成と被写体との距離の取り方がうまい。