『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年2月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「ライン」(3枚組)
早坂健斗 (宮城県仙台市 / 16歳 / 仙台市立仙台工業高等学校)
抽象的なイメージの写真が並ぶ作品。スケール感や奥行きが曖昧で、カラーかモノクロかも一瞬ではわからない。そして、写真であるのかさえも疑ってしまう不思議な作品です。作者の早坂さんは、こんな風に世界が見えるのかと羨ましく思いました。深く考えた組写真ではないかもしれませんが、なぜこのような写真を撮影し組んだのか、自身で振り返ってみて、ぜひさらにこの作品を掘り下げてみてほしいです。
2席「スノーマジック」
髙橋優真 (宮城県富谷市 / 18歳 / 仙台市立仙台工業高等学校)
手前はUFOでも降りてきたかのような強い光に覆われ恐怖さえ感じますが、道の消失点には色とりどりの光が輝き、この先に美しい世界が開けるような予感もします。ファンタジーな世界にも、不安を煽るようにも捉えられる不思議な風景です。
3席「タイムトラベル」
鈴木玖偲 (北海道東川町 / 17歳 / 北海道旭川工業高等学校 / 写真部)
廃車のボンネットに立つ女子高生。ただそれだけですが、「セーラー服と機関銃」のように、清純なイメージを持つセーラー服に物騒なアイテムや状況が組み合わさると、ドラマが生まれます。奇しくも抜群にマッチした空の表情がそれを引き立てています。
入選「棒倒し」
米 優花 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
手前の砂浜から背後の空まで異なった質感の層が見えて、モノクロならではの魅力を感じる写真です。棒倒しをする女子学生が、一見何をしているかわからないこともあって魅力が深まっています。
入選「半径教科書」
大澤えりさ (東京都杉並区 / 16歳 / 杉並学院高等学校)
顔が教科書で隠れていますが、マスク着用なだけに目で会話をしていると思うと尚更ドキドキします。いい光が当たり、ガラス越しの景色もキラキラしていて、場面が盛り上がります。青春を感じるタイトルが生きています。
入選「My Life」
桑原浩彰 (香川県坂出市 / 香川県立坂出商業高等学校1年 / ジャーナル研究部)
激しくジャンプする女の子が赤や黄色に染まった写真。何だかわからなくても、人を引き付けるインパクトがあるというだけで写真として十分な魅力があるということですね。
入選「ご時世」
中村真梧 (新潟県長岡市 / 17歳 / 中越高等学校)
マスク着用が当たり前、距離を取った机の配置、会話も少ない。くらーい教室。現在の学校の様子が表れていますが、演出が入っているのか、それともリアルなのか、どちらとも判断つかない。それが不気味です。
入選「けんかをうっても…」
伊藤優太 (埼玉県北本市 / 17歳 / 埼玉栄高等学校)
ニワトリにメンチを切る少年。身のこなしがヤンキーばりですが、全く怖さを感じません。ニワトリの態度もそのように見えます。表情と色味の対比が生きている面白い作品です。
入選「何者」
奥野玲音 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
顔を出さないことで不気味さを出したとのことですが、私には全く不気味さが感じられず、手の表情や佇まいから彼女が何者であるか想像できました。作者の意図と違って見えてしまうのも写真の面白いところ。
入選「羅針盤」
湯川紗愛 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
派手なパンツと日に焼けた足だけが目に飛び込んでくるインパクト。瞬間的にユニークなフォルムに着目した視点がお見事です。さらに、予想できないタイトルも面白い。
入選「あの日ここで」
岡村友梨 (神奈川県川崎市 / 16歳 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)
花を手に持たせたベタな演出写真ですが素直にかわいいと思えてしまうのは、写っている彼女の魅力でしょうか。ガードレールなどの直線で複雑な背景の中に、ふんわりした彼女の存在が際立ちます。
入選「幻想童話」(3枚組)
岡﨑ひなた (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
歪んだ唇から飛び出す水泡が薄気味悪く、岡﨑さんの今回の作品も相当なインパクトです。ただ撮影方法のみ記載されたコメントが残念でした。コメントも作品の一部と考えてみましょう。