ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鶴巻育子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
キヅイテ
矢野美咲 (香川県坂出市 / 香川県立坂出商業高等学校2年 / ジャーナル研究部)
光と影をうまく読み、高コントラストで、教室の風景が印象的に描かれた目を引く作品です。中央でうずくまる少年と両端に写る手元など、被写体の配置やアングルもなかなか良いです。
「いじめを受けている少年が助けてほしいけど言えずに塞ぎ込んでいるのをイメージした」とのことですが、そのような問題を考えて題材にすることから一歩進んで、どこかに救いやメッセージ性が欲しいと思いました。
バカンス
渥美満優子 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校1年 / 写真部)
腕を上げている裸の男性とパラソルの下でくつろぐ女性とのサイズ感や状況の違いの対比が際立つ大胆な構図で、違和感を覚えるのが面白く作用しています。真っ青な海に、小麦色の男性の肌、パラソルや椅子と、夏らしいカラフルな色彩も目を引きます。お互い顔が見えなく、謎めいた雰囲気が出ています。
砂浜が白飛びしてしまい、プリントで見るとあまり美しく感じなかったのが残念でした。日差しの強い夏は、露出を決めるのが難しいですが、白飛びしてしまうと画像処理でも救うことができませんので、撮影時に露出は慎重に決めましょう。
色褪せた記憶
岸 彩奈 (愛知県小牧市 / 16歳 / 愛知県立小牧南高等学校
宙に浮いたブランコは、透明人間が遊んでいるような想像ができたりと、怪しげでワクワクします。電線や樹木がちらっと写る背景に温度を感じストーリー性を感じさせ、空間も生きる効果が出ています。
上の鉄棒は画面内から外すと、鎖の形状が際立ったり、より不思議でユニークな作品になったかもしれません。時には思い切ったフレーミングをしてみるといいでしょう。また、画面右に見える葉っぱが無いほうがスッキリしました。ファインダーは隅々まで見ることが大事です。
mouth kitchen (4枚組)
伏見凜音 (和歌山県田辺市 / 18歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
コメントには「口で料理が出来上がっていくワクワク感を表現しました」と。自由過ぎるアイデアに参りました。あまり美しいとは言えませんが、最後まで頭の中から離れませんでした。
この組写真のポイントの一つは、白米だと思います。白米のディテールがわかるように、ライティングを意識ししっかりと露出を計算することが必要です。独特なアイデアです。一度で終わらせずに、内容と技術をブラッシュアップしてみては?