一大決心をして購入したカメラやレンズなどの撮影機材が、「自分の撮影スタイルに合わない」「機能や性能が想像していたのと違った」という失敗談はよく聞く話。店頭でちょっと試しただけじゃわからない、買う前にじっくり試せたらいいのに、という思いを抱いている人は少なくないはずだ。そんなカメラユーザーの切実な思いに応えるサービス、新しいスタイルのカメラレンタルが登場してきている。今どきのカメラレンタル事情をレポートする。
定額制で借り放題の“カメラのサブスク”「GooPass」
カメラブ株式会社が展開するGooPass(グーパス) は、1000種類を超えるカメラ、レンズ、ドローンなどの撮影機材を月額定額 (サブスクリプション) で利用できる撮影機材のレンタルサービスだ。しかも機材の入れ替えもできるので、気に入った機材は長く借りて使い続けられるし、気に入らなければ別の機材に借り替えることができる。GooPass代表の高坂勲さんによると、GooPassの利用者はハイアマチュアから初心者までと幅広く、登録者数は3万人以上になるのだという。
これまでのレンタルサービスは、2泊3日や7泊8日といったように、「必要になったら必要な期間だけ借りる」というものが多かった。ところがGooPassの場合は月額定額制なので、一定の金額を毎月払い続ければ、気に入った機材をずっと手元に置いておくことができる。分割で購入するのと同じくらいの金額で借りて、新しい機種が出たら借り替えができるわけだから、考えようによっては、とってもお得なサービスと言える。
所有からの解放が体験価値を広げる
GooPassのシステムは、月額料金に応じた9段階のパスが設定されていて、パスに応じたレベルの機材を借りることができる。しかも、レベル内の機材であれば入れ替えは自由。月ごとにパスを変更したり停止することもできるなど、自由度は高い。「メーカーや販売店ではできないような組み合わせを提供できるのもGooPassならではです」と高坂さん。リクエストに応じて、オリジナルのセットを提供することもあるのだそうだ。
ユーザーのスタイルもさまざまだ。買うほどではないがちょっと試してみたい機材を借りる人や、買う前に借りて試したいという人は少なくない。年間で考えると、レンズを何本でも入れ替えられるわけだから、金額の決まっているパスを買う感覚で、カメラだけ買って交換レンズはGooPassで、という人もいるという。また、レビューのために最新機種を一定期間レンタルするユーチューバーもいるのだとか。
好きな機材を好きなタイミングで入れ替えられるGooPass。現在の取り扱い商品は、カメラやレンズが中心だが、三脚などのアクセサリーの扱いも始めた。今後は、カメラバッグなども取り扱っていきたいと言う。
所有することをやめるだけで、高くて手が出なかった機材、試したかった機材を気軽に利用できる自由を手に入れられる「カメラのサブスク」。利用次第で、新しいカメラライフが広がりそうだ。
サブスクの利用状況からユーザーのニーズを知る
GooPassが「サブスク」というかたちでサービスを展開することができるのは、GooPassがリース会社の運営を担っているから。GooPassが取り扱っている商品は、全てリース会社の所有するもの。リース会社としては借り手がいて商品が動いていることが必要だ。
GooPassは、ユーザーの利用状況などのデータを元に、商品ラインナップや組み合わせを考えて仕入れから運営までを担当している。
販売店と協業の新サービス「テイクアウトレンタル」
GooPassは、ビックカメラとの協業で、新品のカメラを買う前に持ち帰ってお試しができる「テイクアウトレンタル」の店舗実証実験を2020年12月4日に開始した。利用できるのは、ビックカメラ渋谷東口店本館2Fのカメラコーナーとビックカメラ池袋本店 (2021年2月1日時点)。
「テイクアウトレンタル」は、カメラ機材の購入をビックカメラの店頭で決めずに、新品在庫をお試しレンタル品として持ち帰って試すことができるという驚きの新サービスだ。レンタルが購入のキッカケになればということで、GooPassがビックカメラに提案した協業で、新しいショッピング体験を提案するアイデアが形になったもの。ユーザーにとっては、使い勝手をじっくり確かめた上で購入を検討できるわけだから、メリットは大きい。
持ち帰って試した結果、気に入った場合はそのまま購入できるし、購入に至らない場合でも一定期間使った後に返却可能な、カメラの新しい購入手段だ。ただし、具体的な商品ラインナップは変動するため、店頭で直接確認する必要がある。
高坂さんは、「少しでもカメラを手に入れるハードルが下がり、多くの方に撮影体験をお届けできることを期待しています」と「テイクアウトレンタル」への期待を語る。今後、対応する店舗が増え、対象機種が増えていけば、カメラの買い方は大きく変わっていくことになるのかもしれない。
ほかにもあるぞ! お得なレンタル・購入方法
■一定期間レンタルすればそのまま所有可能「Rentio」
カメラ・家電のレンタルサービスRentio (レンティオ) は、商品ごとに定められた支払い期間を終了すると、月額料金の決済が自動的に終了となるサービスを2020年11月25日に開始した。
商品ごとに定められた支払い終了期間を終えると、月額料金の支払いが自動的に終了。手元のレンタル商品をそのまま所有することができる。レンタルの途中でも「そのまま購入」することが可能で、レンタル期間中は、全国往復送料無料でいつでも返却することができる。対象商品は、2300種類を超える家電とカメラだ。
■買い替えに便利な購入方法はまだある! ソニーストア「残価設定クレジット」
ソニーストアでは、デジタル一眼カメラαシステムのデジタルスチルカメラ、レンズ、ハンディカムの一部モデルで選択できる「残価設定クレジット」を導入している。クルマやスマホでもおなじみの支払い方法だ。
残価額を差し引いた代金を24か月の分割で支払って、最終回の25か月目に商品を返却するか、残価額を支払って購入するかを選択することができるというもの。月々の支払いを安く抑えることができて、25か月目に新機種が出ていれば、買い替えることもできる。
〈文・写真〉柴田 誠