『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年3月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「羞恥」
道畑あおい (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
背中が丸見えなのも気にせず、何かに夢中になっています。人が必死な姿を側から見ると滑稽でなぜか面白い。動画と違って写真は時間の一部を切り取るので、余計に行動が謎に見える面白さがあります。対角線で2分割された画面の中央にカラフルなモチーフを配置して構図的にも魅力ある作品です。
2席「よう!」
湯川紗愛 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
上半身裸でも腕時計は欠かさないオッチャンの笑顔と弛んだお腹に釘づけです。路地裏の雰囲気を捉えることを忘れない構図も的確。特別な被写体と出会えることも才能ですが、それをモノにする撮影技術と美しく仕上げるプリント技術があってこそできた作品でしょう。
3席「盗み食い」
加藤安良波 (愛知県豊田市 / 16歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
家族で餅作りをしている最中、作者の兄だけがサボって餅を盗み食いしていたとのこと。サザエさん一家のストーリーみたいで何とも平和な光景です。肉眼の視野に近い標準レンズが、より日常感を演出してくれています。印画紙の粒子が心地良い印象を与えます。
入選「白球への想い」
村里友弥 (福岡県太宰府市 / 18歳 / 筑紫台高等学校)
顔が陰になっていることで、視線が首筋の汗に誘導される効果が。左手でぎゅっと握りしめたボールを見つめる球児。その後ろには仲間の姿が……。出来過ぎなくらい青春の香りがするのがいい。
入選「日光浴」
一宮穂香 (千葉県千葉市 / 16歳 / 幕張総合高等学校 / 写真部)
堂々と画面ど真ん中に鳥を配置していてストレートでダイナミックな一枚。鳥のユニークな仕草もポイントですし、強い光が印象的。ただ、せっかくの美しい白い羽が白トビしてしまったのは残念。
入選「一面に広がる落ち葉」
長谷川楓 (愛知県岡崎市 / 16歳 / 光ヶ丘女子高等学校 / 写真部)
三つ折りの靴下を履いた足元、落ち葉を拾う手が不安定なアングルで捉えられ、10代の清楚さと妖艶さの両方を感じる作品。足と樹木の縦のラインがリズム感を与え、赤と緑の色合いも目を引きます。
入選「私たちの秘密基地」
上村凜桜 (香川県坂出市 / 15歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / ジャーナル研究部)
最近子どもの写真がなかなか撮れない世の中で、ましてや木登りをする子どもの写真は貴重に感じます。画面下の後ろ姿の子どもの存在により構図に流れができ、怪しげな要素が加わったのもよかったです。
入選「しゃぼん玉とばそ」
島﨑蓮子 (神奈川県横浜市 / 16歳 / 神奈川県立瀬谷高等学校 / 写真部)
女子高生とシャボン玉は、学生の部の定番です。そのほとんどが演出されたものですが、この作品は仲の良さと心からリラックスした様子がわかる穏やかな雰囲気が素敵です。ねむいプリントもマッチしています。
入選「明暗」
村岡凌空 (神奈川県横浜市 / 16歳 / 神奈川県立川崎北高等学校 / 写真部)
イケメン石膏像に赤いマフラーを巻いてふざけた雰囲気ですが、ライティングを用いて立体感を作り、真剣に撮影しているから面白い。配色も強烈でインパクトある作品です。シリーズ化してみては?
入選「猫と母のポートレート」(2枚組)
古川詩野 (愛知県岡崎市 / 17歳 / 光ヶ丘女子高等学校 / 写真部)
両者共に品を感じるところが一緒です。なぜペットは飼い主に似るのでしょうか? お母さんが猫に似てきているのかもしれません。お母さんの写真、良い光が差し込み美しいです。
入選「春風」
京藤 和 (福井県越前町 / 18歳 / 福井県立丹生高等学校 / 写真部)
踊る女子高生。桜の枝ぶりとリンクしていて、何かに取り憑かれたかのように見えます。ローアングルで距離を取ったフレーミングがこの状況を冷めた目で見ているようで、彼女と撮り手との温度差が感じられて面白いです。