『CAPA』本誌連動企画として毎月公開している、月例フォトコンテスト「学生の部」ピックアップ作品レビュー。今回は『CAPA』2021年5月号より、誌面に掲載された入賞作品に加え、全応募作品の中から審査員の鶴巻育子先生が目を留めた“気になる作品”をピックアップしてアドバイスします。さらなるレベルアップのためのヒントが満載です!
〈講評〉鶴巻育子
1席「盆の日」
中村 蒼 (三重県志摩市 / 18歳 / 皇學館高等学校 / 写真部)
人が集まることで発せられるパワー。家族の繋がり。先祖への感謝。伝統や習慣の大切さ。そして、記録、思い出として残す写真の役割。フィルム、モノクロ写真独特の魅力。この作品にはさまざまな価値が含まれていて貴重な一枚です。ため息が出るほど、いい写真だな〜と心から感じました。
2席「それぞれの時間」
奥野玲音 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
木の横に立っている女性が奇妙な印象を受けるのは、動画と違ってこの前後の行動がわからないのと、作者がこの方向から捉えて意図的に怪しさを演出しているから。一瞬を切り取る写真ならではの面白さが出ている作品です。
3席「奇奇怪怪」(3枚組)
藤本愛永 (香川県坂出市 / 香川県立坂出商業高等学校2年 / ジャーナル研究部)
原形をとどめない顔が意味することは? この作品をどう読み取ればいいのか、それを考えるのがとても楽しかった。通常なら指摘される画質の悪さが、妙にこの作品にはマッチしています。これからもオリジナリティある作品をつくり続けてほしいです。
入選「僕の休日」(4枚組)
森本羽音 (和歌山県田辺市 / 16歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
朝からエネルギー全開の少年。一緒に暮らす家族が何気なく写り込んでいて、素直に伸び伸びと育つ様子が美しく描かれています。ネガっぽい優しい色味のプリントも好印象です。
入選「ガキンチョ」(4枚組)
道畑あおい (和歌山県田辺市 / 17歳 / 和歌山県立神島高等学校 / 写真部)
寄りの写真は荒木経惟さんの「さっちん」を彷彿とさせますね。少年たちとの距離の近さは初めて出会ったとは思えないです。俯瞰の写真は他と違ったテイストですが、詩的なイメージで素敵です。
入選「鏡の中に」
中山和奏 (愛知県岡崎市 / 16歳 / 光ヶ丘女子高等学校 / 写真部)
表や図面、文章が記された四角い形が並ぶパターン化された中に、一枚だけ異質な四角が混ざっている違和感が面白いです。半逆光のいい光、無表情でインパクトのある素敵なポートレートです。
入選「Primitive Earth」
今藤真莉奈 (神奈川県横浜市 / 18歳 / 神奈川県立瀬谷高等学校 / 写真部)
神秘的で美しい。宇宙から見た青い地球のようだと思っていたら、タイトルを読んで納得。現実を、自分がイメージする世界に変換し表現できるのも写真の面白さです。
入選「パパラッチ」
松下日向子 (岐阜県関市 / 16歳 / 関市立関商工高等学校 / 写真部)
全く異なった妖しげな二つのイメージが重なり、不気味でコミカルな作品です。水槽の屈折を利用してビビッドな色が加わりアクセントをつけたのも成功しています。
入選「愛をくれる人」
山地里奈 (香川県坂出市 / 17歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / ジャーナル研究部)
豹柄の服がお似合いの美しい女性は作者の祖母。優しい眼差しから二人の関係性が伝わります。学校帰りに寄っていろいろな話をし、いつも勇気付けられるとのこと。タイトルも素敵。生活感ある背景もいい!
入選「トラウマ」
八木梨菜 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校1年 / 写真部)
「小さな頃の悪夢のはじまりはいつもこれでした」と、作者のコメントです。このコメントを読んでさらに惹かれました。写真は言葉が加わることで、見え方が変わったり印象が強くなる効果があります。