ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鶴巻育子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
どんっ!
生越若葉 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
ジャンプした写真作品と言えば、フィリップ・ハルスマンさんの「JUMP BOOK」、林ナツミさんの「本日の浮遊」、青山裕企さんの「ソラリーマン」などが思い浮かびます。ジャンプする人物の写真は軽快さがあり、普段とは違う子どものような無邪気な一面が見えたり、見ていると楽しい気分になります。
この作品も、手足の微妙な動きと口を開けた顔に特徴がありユニークですが、背景の山や地面との重なりに気を使ったアングルで捉えたら、よりわかりやすい表現になったでしょう。
俺の靴は
坪井柊一 (愛知県豊山町 / 16歳 / 小牧南高等学校)
散乱した靴の数々。家族が住む玄関のよくある風景です。女性の靴だけ揃えられています。作者のお母さんのものでしょうか。玄関は、脱いだ靴にそれぞれの年代や性格が表れていて、その家の家族構成も想像できるのが楽しい。ストロボを焚いて生々しさが出ているのもインパクトがありますし、黒い靴の中に真っ白なスニーカーの存在感が際立っています。
作者は自分の足を入れて、俺の靴はどれかというストーリーを写真に作っています。タイトルから想像できるので、画面に足が写っていなくてもよかった。白いスニーカーがさらに存在感を増したかも。
両親
成瀬綾香 (愛知県豊田市 / 17歳 / 愛知県立猿投農林高等学校 / 写真部)
「青空の下でお父さんがおいしそうにビールを飲んだ瞬間をねらって撮影しました。あまりにもおいしそうに飲むので私も早く大人になりたいと思いました」と素直でかわいらしい作者のコメント。
自宅の屋上で家族でバーベキューでしょうか。コロナで自由の利かない世の中になっていますが、家族とこんなひとときが過ごせるのは幸せですね。確かにビールを飲んだお父さんは至福のひとときといった感じ。家族の前だから見える気取らない表情と態度がステキです。
バーベキューする二人を大きく撮りたい気持ちはわかりますが、写真が窮屈です。もっと引いてフレーミングすれば、青空の下のバーベキューの雰囲気や二人の仕草がより伝わったと思います。