2021年6月15日〜16日の2日間、パシフィコ横浜で開催された「PHOTONEXT (フォトネクスト) 2021」。2年ぶりのリアルイベントはどのようなものだったのか、振り返ってみよう。
来場者数・出展社数は半減したが想定の範囲内
東京で3度目の“緊急事態宣言”、神奈川県では“まん延防止等重点措置”が発出されている中で開催された「PHOTONEXT 2021」。受付には消毒液が置かれ、入場時に検温と手指の消毒が徹底されるなど、万全の感染症予防対策を講じたうえで運営された。
今回の来場者数は、2日間で5,557人 (1日目3,586人、2日目1,971人)。前回リアル開催だった2019年の2日間来場者数10,637人 (1日目6,381人、2日目4,292人) の半分程度に減少した。事務局では、これまでの傾向として東京と神奈川からの来場者が全体の約半数だったことや、会場の規模と出展社数が半減したことで、総来場者数は半数程度になると予想していたようだ。地方からの来場者が少ないということも含めて、予想の範囲内だったと分析している。印象としては、確かに地方からの来場者はほとんどいなかったようで、家族連れや学生の姿も少なかった。
ちなみに「PHOTONEXT 2021」の出展社数は66社 (日本フォトイメージング協会コーナー、主催者コーナーを含む)。前回のリアル開催だった2019年の121社から半減し、会場のスペースも半分となっている。
特に密になることが想定されたアウトレットコーナーは、入場制限を行って入場者数を制限するなどして、密にならないよう配慮されていた。
和装小物が数多く並ぶアウトレットコーナー
今回、会場に衣装レンタルの出展ブースが多かったこともあってか、アウトレットコーナーでも着物や和装小物が目立っていた。撮影機材やドレスよりも打掛の方が目立つなど、これまでとは少し違った印象を受けた。
コロナ禍で着物の撮影が増えている
「振袖レンタルビジネス」を展開しているやまとアニバーサリーの常田恵子マネージャーによると、成人式や卒業式が中止になったり、結婚式が延期されるなどの影響もあって、写真だけでも残したいという撮影の需要は、コロナ禍になって高まる傾向にあるのだそうだ。
写真だけということになると、買うよりも借りるという人が増える。特に和装では、着る頻度が少ないことや小物を揃える必要もあるので、借り手は多くなってくるようだ。そうした理由から、レンタルの需要も増えているという。お店としても、買い揃えて在庫を抱えるリスクを避けたいという思いもある。
以前は黒の着物に人気があったが、最近の流行色は赤。背の高い人が多くなったので、柄の大きいものも揃えているのだそうだ。
やまとアニバーサリーでは、母親から譲り受けた振袖に、今風の帯留めや半襟を組み合わせて撮影する「ママ振袖レンタルプラン」も展開し、利用者を増やしている。
アルバム製作が変化し始めている
アルバムの製作や写真販売にも変化が見られる。インターネットでの写真販売を手がける日本ジャンボーでは、顔認証AIを利用して子供の顔を検察できる機能を紹介していた。インターネットの活用が進み、画像をクラウドで管理したり、アルバムにAR (拡張現実) を取り入れたり、VR (仮想空間) で画像や動画を展示するといったサービスも出始めてきた。数年後には、アルバム製作の現場も大きく様変わりしそうだ。
出展製品にも変化が見られた
会場を見渡してみると、2019年とは違う点がいくつもある。まず、照明機材はLED化がかなり進んでいる。ストロボの展示はほとんど見られなくなった。扱いやすさだけでなく、動画需要が増えている影響も少なくなさそうだ。
プロ機材ドットコムでは、取扱製品を使ってブースからライブ配信をして、その現場を来場者に見せるといったことを会期中ずっと行っていた。実際に製品を使って見せながら配信も行うというのは、今後ますます増えそうだ。
一方、ブースのステージを使ったセミナーや実演などは、人を集めて密にならないようにという事情もあって、あまり積極的に行われてはいなかった。通路に人があふれるような状況は、今後のリアルイベントではマイナスイメージにもなりかねない。
それでも人気のあるステージイベントには、立ち見が出るほど人が集まることもあった。収容人数を減らしているのも一因だが、今後の課題となりそうだ。
PHOTONEXTのこれからは?
コロナ禍の中でリアル開催を決断した「PHOTONEXT 2021」。開催には賛否両論あったそうだが、リアルイベントでないとできないこと、伝えられないことが確かにある。だからこそのリアル開催に踏み切ったわけで、会場に足を運んで欲しいという想いから、今回はオンラインでの配信をあえて行わなかったのだという。
2019年に10周年を迎えた「PHOTONEXT」。次の10年に向けた第一歩となるはずの2020年は中止だった。しかし今年開催できたことで、アフターコロナのリアルイベントの課題を事務局は確認できたようだ。次回の開催日程はまだ決定していないということだが、次の時代への歩みは止めないでほしいと思う。