ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鶴巻育子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
ラクガキ帳の飛行船
脇元彩羽 (福岡県糸島市 / 17歳 / 博多青松高等学校 / 写真部)
夕暮れの空にユニークな形をした雲が浮かんでいます。そこに一機の飛行機が横切り、そのシルエットがいいアクセントとなっています。縦位置の構図と画面内に樹木のシルエットを配置したことで、高く広がる空がより強調され、青空から夕焼けに変わるグラデーションの美しさが際立ちました。
画面下の電柱が中途半端でした。少しだけアングルを下げ、電線と電柱のシルエットをもっと入れても良かったでしょう。それによって、単なる空の写真から、人気が感じられ、1日の終わりを感じられる風景に変化します。
門出
山地里奈 (香川県坂出市 / 17歳 / 香川県立坂出商業高等学校 / 写真部)
作者のいとこの結婚式の一コマ。花嫁から両親へ花束が送られる感動的なシーンです。私は長い間ウエディングの撮影の仕事をしていましたので、このシーンを撮影する時の難しさと緊張がよーくわかります。特にこのようなスポットライトの場合は苦労します。
花嫁と母親は少しだけ顔が写り、父親は後ろ姿しか写っていませんが、それがかえって想像をかき立てます。花嫁の髪飾り、花束、お母さんの唇、お酒が入って赤くなってるお父さんの皮膚と、暗闇の中に赤い色が浮かび上がりました。いろいろな赤に、いろいろな思いが詰まっているように感じました。いい瞬間をアップで捉えるのも良いですが、あえて少し引き暗い空間を作る構成もありだと思います。
祈り (4枚組)
箭野日向 (愛知県豊川市 / 豊川高等学校3年 / 写真部)
ミサの様子を撮影し組写真にしています。通常はなかなか撮影の許可も取れないこともありそうですが、司祭の方が作者のお祖父さんとのこと。特権ですね。説教を行なっている姿や、賛美歌を歌っている風景、聖書が置いてある机など、さまざまな場面を観察し写しとめています。1枚目の写真は、空間の作り方の工夫があり目に留まるいい写真です。ほかの写真は説明的になっているのが気になりました。
作者にとってこの教会は憩いの場だとコメントにありました。小さな頃から慣れ親しんだ場所なのでしょう。その想いを写真の中に投影させられたら素敵です。撮り続けてほしいですね。お祖父さまも喜ぶでしょう。