ここからは、惜しくも選外となった作品の中から、鶴巻育子先生が気になった作品をピックアップしてアドバイスします。
散りゆくもの
久保田 樹 (香川県坂出市 / 香川県立坂出商業高等学校2年 / 写真部)
お母さんに抱っこされて安心した表情の小さな子ども。お母さんも素敵な笑顔を見せています。
タイトルも意味深ですが、コメントにも「サクラが散っていくのを子どもが見つめ、親はその子どもを見つめている。春の終わりと夏の訪れを感じさせる写真です」と記載されていました。ただの記念写真ではなく、視線や時間の流れに着目していたとは。言葉が加わることで、写真の見え方が変わります。
プリントの色があまり良くないですね。せっかく良い写真を撮影しているのですから、美しいプリントを心がけましょう。きれいにプリントすると、びっくりするほど良い写真になります。
モウイヤダ
春木快斗 (福井県越前町 / 福井県立丹生高等学校3年 / 写真部)
うまい具合にバランスよく用紙が教室中を舞っています。机、窓、壁、黒板、そして舞い散っている用紙と、角ばったものばかりが教室内にあることがモノクロ表現だからこそ気づきました。窓からのサイド光で陰影がつき、不気味な印象に仕上がっています。
タイトルも含めてみると、学校生活か勉強かに不満が爆発した気持ちを表現しているのだと想像できました。コメントには「一年のときに先輩に協力していただいて、校内で撮影しました」と。撮影状況は、写真を見ればわかりますので、なぜ、このような写真表現をしたのかを書くと、一層この作品への思いが他者に伝わるでしょう。
「いってらっしゃい。」
渋谷優来 (島根県大田市 / 16歳 / 島根県立大田高等学校 / 写真部)
夜が明けて漁に出る父親を見送る娘さんでしょうか。控えめに手を振る仕草に日常感が出ていて、かえってドラマチックに感じました。空の表情のディテール、地面や堤防などの暗い部分も潰れずに出ていて、マット紙できれいにプリントされています。
マット紙を選んだのに理由があるかわかりませんが、ストレートな写真ですので、状況がより鮮明に見えるように光沢か半光沢紙でプリントするほうが、より伝わる写真になると思います。